【牡蠣】を食べよう!栄養満点の海のミルク。栄養成分とその効能、おすすめの食べ方を紹介

牡蠣
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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滋養強壮の食材であり栄養豊富な牡蠣(カキ)は「海のミルク」と呼ばれ、生のままでも加熱しても美味しい食材。そんな牡蠣に含まれる亜鉛・タウリン・グリコーゲンといった栄養素とその働きはもちろん、栄養を逃さない調理のコツ、生食用と加熱用の違いなどについて、管理栄養士の筆者が詳しく解説。北海道のおすすめ牡蠣や美味しい食べ方も紹介します。

牡蠣とは

牡蠣の殻をはずす,殻付きの生牡蠣

牡蠣は一般的に卵形で、大型のものは細長い形をしています。ナガガキやエゾガキと呼ばれる北方系のものは、大型で白色、殻の膨らみが少ないです。南方系のものは小型で黒っぽく、膨らみが大きくなります。 牡蠣の生産の殆どは養殖によるもの。後述する「旬」は、一般的に冬と夏の2つの時期がありますが、北海道の主要産地である厚岸町は例外です。厚岸町は低い海水温の関係で1年中美味しく食べることができます。

海のミルクと呼ばれる理由

よく牡蠣は「海のミルク」と呼ばれていますが、それには理由があります。真牡蠣は殻は茶色がかった色ですが、身の色は牛乳のような乳白色です。そして準完全栄養食と言われる牛乳のように様々な栄養素をバランスよく含んでいます。実際に牡蠣と牛乳を比較してみても、タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素の値(PFCバランス)が比較的近い値であったり、ビタミンやミネラルも両者ともに豊富だったりと共通点が多く、海のミルクと呼ばれるのも納得ですね。

ちなみに夏が旬の岩牡蠣も、濃厚な味わいや栄養価が高く身が乳白色であることから「海のチーズ」の別名があります。

真牡蠣と岩牡蠣の違い

日本で生産されているのは主に真牡蠣と岩牡蠣です。それぞれの特徴、旬、産地について比較していきましょう。

それぞれの特徴

真牡蠣は小型サイズで、クリーミーで濃厚な味わいが特徴です。生産のほとんどは養殖によるもので、1〜3年かけて出荷されます。

岩牡蠣は真牡蠣と比べ大きな殻と厚いプリプリの身が特徴です。天然と養殖がありますが、真牡蠣よりも流通量が少ないです。

真牡蠣の旬は9月から4月の期間です。真牡蠣は一度に一気に産卵するため、産卵前の栄養たっぷりの冬の真牡蠣が特に美味しいと言われています。

岩牡蠣の旬は6月から9月の夏の時期です。岩牡蠣は数ヶ月にわたって時間をかけて産卵するため、海水温が高い夏でも収穫でき、味がしっかりとしています。

産地

主な産地は北海道、秋田県、宮城県、三重県、島根県、広島県などです。
北海道の主な産地は厚岸町、湧別町、釧路町、知床町などで盛んです。

北海道産カキ

栄養豊富な牡蠣。その成分と効能を知ろう

殻付きの生牡蠣

牡蠣(養殖/生)は100gあたり70kcal、タンパク質6.9g、脂質2.2g、炭水化物は4.9g、食物繊維は0gです。亜鉛14.5mg、鉄分2.1mg、ビタミンB12を23.1μgなど、牡蠣はさまざまな栄養素を含む魚介類です。特に多く含まれている栄養素をご紹介します。

①タウリン

牡蠣に含まれる栄養素の中でも、特に注目したいのがタウリン。栄養ドリンクの主成分としてもよく見かけますよね。タウリンはタンパク質が分解される過程でできるアミノ酸に似た物質で、体内では肝臓や筋肉、脳、心臓などに高濃度で含まれています。母乳の中にも多く含まれ、乳児の発達に重要な栄養の一つです。

タウリンは高血圧を改善し、動脈硬化、心不全、心臓病などの予防に有効的です。また、血中コレステロールや中性脂肪を減らし、肝機能を高める働きもあります。

②グリコーゲン

牡蠣には多糖類であるグリコーゲンが多く含まれています。グリコーゲンは肝臓や骨格筋などにエネルギー源として貯蔵され、運動を行う際のエネルギー源や空腹時の血糖維持に利用されます。牡蠣のグリコーゲンの含有量は季節によって異なり、9月から翌年4月まではグリコーゲンが豊富で食味が良いです。反対に5〜8月までは中毒を起こしやすい時期にあたるため、注意が必要です。

③ビタミンB12

ビタミンB群を多く含む牡蠣。中でもビタミンB12が豊富で、100gあたりにビタミンB12を23.1μg含みます。ビタミンB12は赤血球を合成するのに必要な栄養素です。不足すると貧血や不眠や肩こり、腰痛などを伴う神経障害になりやすくなります。

④亜鉛

亜鉛には新陳代謝を活発にし新しい細胞を作り出したり、エネルギーを作り出したり、髪や肌を綺麗に保つためにも欠かせない栄養素です。さらに、舌の表面の味蕾にある細胞を作る 働きもあり、不足すると味覚異常、食欲不振などの原因になります。

⑤鉄

牡蠣100g中には2.1mg。鉄は赤血球を作るのに必要なミネラルです。不足すると貧血を起こして、めまいや立ちくらみなど疲れやすくなります。 鉄には2種類あり、赤身の肉、貝類、小魚などに多く含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品や乳製品、卵に多く含まれる「非ヘム鉄」に分けられます。その違いは吸収力で、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べ吸収力が約5倍も高いのが特徴です。牡蠣には鉄はもちろん、亜鉛、銅など普段の食生活で不足しがちなミネラル分が豊富なことも特徴です。ミネラル不足の方にはうってつけの食材といえますね。

⑥銅

は鉄が赤血球を作るためのサポートの役割をしています。銅は微量ミネラルのため普段の食生活で不足することはなく、食べ物で沢山摂取してもそのまま排泄されるため過剰症の心配もありません。ただし不足すると貧血やめまいを起こしやすくなるため、女性や貧血気味の人はとくに気にかけてみてくださいね。

生食用と加熱用の違い。栄養素の違いはある?

牡蠣には生食用加熱用があります。生食用は、食品衛生法の規定に基づき、様々な規格基準に適合したものだけが「生食用牡蠣」として市場に流通し、それ以外は「加熱用牡蠣」として流通します。このように加熱用は、生食することを想定した処理をしていないため、新鮮なものでも生食せず、十分に加熱して食べるようにしましょう。

加熱すると気になるのが栄養素。牡蠣に限らず食品は加熱すると損なわれる栄養素は少なからずあります。牡蠣の場合、含まれているビタミンB群やタウリンは水溶性のため、茹でたり煮る調理法では栄養素が流れ出てしまいます。効率よく摂取したいのであれば生食やフライがおすすめです。加熱して食べたい場合は、雑炊や鍋物などにすると、出汁に溶けた栄養素まで摂れますよ。

食べ過ぎ注意?適切な量は1日何個まで?

栄養素が豊富に含まれている牡蠣ですが、食べ過ぎは亜鉛やプリン体の過剰摂取に繋がったり、食中毒のリスクを引き起こす恐れがあります。 亜鉛の耐用上限量は1日40〜50mg、プリン体の推奨摂取量は400mg以下です。牡蠣1粒(20g)あたりに含まれる亜鉛の量は約2.8mg、プリン体の量は約37mgであることから、換算すると1日約10個が目安となります。牡蠣に限らず、極端な食べ過ぎは健康を損なう可能性があります。また、プリン体含有量が多いため、痛風の方は摂取量に注意しましょう。

牡蠣の栄養に+α

牡蠣は鉄や亜鉛を含む食品なため、ビタミンCを多く含む柑橘類などの食品との相性が良いです。一緒に摂取することで、鉄や亜鉛の吸収率をアップさせましょう。 また、牡蠣はビタミンB1も含むため、アリシンが豊富なにんにくやネギなどと一緒に摂取するとビタミンB1の吸収をサポートします。居酒屋でよく出てくるアヒージョやガーリックバター炒めは、美味しくて理にかなったメニューと言えます。

みんな大好きカキフライ。気になるカロリーは?

カキフライ定食

カキフライソース付き1個あたりのカロリーは約53kcal。生牡蠣1個あたりは約12kcalであるためおよそ5倍のカロリーに。ダイエット中でカロリーが気になる場合は、ソースを控えてレモン汁や醤油、ポン酢などに置き変える、衣をつけて揚げずにオーブンで焼く、食べる量に気をつけるなど工夫すると良いでしょう。

牡蠣にあたる理由

牡蠣にあたる原因は主にノロウイルス、腸炎ビブリオ、貝毒、アレルギーなどです。このなかでも圧倒的に多いのがノロウイルスによるもの。生または加熱が不十分なものを食べたり、ノロウイルスが付着した調理器具や調理台、食材を十分に処理、消毒しないと当たる可能性が十分あるので注意しましょう。

加熱の際は牡蠣の中心温度が85〜90℃で1分半以上確実に加熱していただきましょう。

北海道の牡蠣を食べよう!

北海道厚岸産の生牡蠣

北海道の三大牡蠣名産地は厚岸町、サロマ湖、知内町。中でも厚岸町は日本で唯一牡蠣が年中水揚げされる場所として有名です。

厚岸から出荷される牡蠣には純厚岸産の「カキえもん」、三陸生まれ厚岸育ちの「マルえもん」、三陸で生まれ育ち最後に厚岸で仕上がる「ナガえもん」、新ブランド純厚岸産の「弁天かき」があります。 身がふっくらとし、さらに濃厚な甘味と旨味が凝縮された厚岸の牡蠣、ぜひ一度食べてみてはいかがでしょうか?想像を超えるぷりっぷり食感で美味しいですよ。

栄養満点の牡蠣レシピ

牡蠣に含まれる栄養価は素晴らしいことが分かりましたね!食中毒に注意は必要ですが、しっかり加熱できれば心配ありません。ここでは牡蠣を美味しく安全に食べるレシピを紹介します。

◆てんぷら粉使用で簡単カキフライ

難しいイメージがあるカキフライですが、てんぷら粉を使えば卵や小麦粉を付ける手間が省けて失敗も少なく、簡単に作ることができますよ。サクサクの衣の中のふんわりジューシーな牡蠣をお楽しみください!小さな牡蠣であれば2~3個をまとめて一つのカキフライにするとボリュームが出ます。(1人前:262kcal、塩分1.0g/ソース無し)

《材料(2人分)》

  • 牡蠣 10個
  • てんぷら粉 大さじ4(約60g)
  • 水 てんぷら粉指定の分量
  • パン粉 1カップ(約40g)
  • 揚げ油 適量

《作り方》

  1. 剥き牡蠣をさっと洗い、ざるにあけておく。
  2. てんぷら粉を水で溶き、パン粉をまんべんなくつけてバットに置く。すべての牡蠣にパン粉を付ける。
  3. 180度に加熱した油の中に2を入れて揚げる。
  4. こんがり揚げ色が付いたら取り出し、完成。お好みでソースを付けて召し上がれ!

◆牡蠣の甘酢餡オムレツ

濃厚な牡蠣と卵の相性はぴったり!オムレツは誰でも簡単にできるため手軽な牡蠣料理として試してみてください。片栗粉をまぶして牡蠣を焼いてからオムレツにすることで焼き縮みを防げます。(1人前:417kcal、塩分2.4g)

《材料(2人分)》

  • 牡蠣 10個
  • 卵 3個
  • 長ネギ 1/2本
  • 片栗粉 大さじ2
  • ごま油 大さじ2
  • (●)ケチャップ、醤油、酢 各大さじ1
  • (●)砂糖 小さじ1
  • (●)水 50ml
  • (●)片栗粉 小さじ1

《作り方》

  1. 牡蠣を洗ってザルに取り、水気をとってから片栗粉をまぶす。ごま油を敷いたフライパンを中火で熱し両面こんがり焼く。
  2. (●)の材料を耐熱皿に入れてよく混ぜ、ラップ無しで電子レンジ500Wで1分半加熱。しっかり混ぜてから30秒ずつ加熱しとろみが付いたら止める。
  3. 牡蠣に焼き色が付いたら小口切りにしたネギを入れてさっと炒め、溶き卵を入れて両面焼く。
  4. 皿に出し、2をかけて完成。

まとめ

牡蠣の産地や含まれる栄養素とその働き、調理のコツ、簡単レシピをお伝えしました。栄養も旨味もたっぷりで魅力的な牡蠣。食べ過ぎや食中毒に気をつけながら、美味しく楽しみましょう。

北海道寿都産の寿牡蠣

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