【ハスカップ】を食べよう!栄養&効能ガイド。北海道特産フルーツの食べ方や旬の時期、冷凍がおすすめの理由などを詳しく紹介

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Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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北海道ならではのフルーツとして初夏に旬を迎える「ハスカップ」。独自の甘酸っぱい味と香りを持ち、お菓子やジャム、清涼飲料などの加工品に用いられています。ポリフェノールやアントシアニンを含み、近年は機能性食品とても注目が高まりました。今回は管理栄養士の筆者がハスカップの栄養素と効能について詳しく解説。旬の時期や食べ方、保存方法などについても紹介します。

【ハスカップ】について詳しく知ろう

北海道の民家の庭に稀に育っているハスカップの木。実は「すごく美味しい!」というわけでもないのですが、北国でも育つ貴重な実の成る木であることからハスカップを植えている家庭も少なくありません。まずは北海道にゆかりのあるハスカップについて、生態や産地、品種などについてお伝えします。

【ハスカップ】とは?

ハスカップの実

「ハスカップ」はスイカズラ科の植物で、その和名は「クロミノウグイスカグラ」です。実際には近縁の「ケヨノミ」なども含めてハスカップと呼ばれており、北海道の勇払原野に多く自生していました。その類縁種は海外ではユーラシア大陸北部や北アメリカ、国内では北海道や本州中部以北に自生しています。古くからアイヌ民族は野生の果実を採集・利用しており、ハスカップという呼び名は、アイヌ語の「ハシカップ」(枝の上にたくさん実の成る木)に由来しています。北海道開拓後も塩漬けや焼酎などの保存食として利用されてきましたが、戦後、菓子類にも利用されるようになり原料への需要が高まりました。その頃になると土地開発により自生地が狭められ、果実の入手が困難なこともあり、1970年代になってから千歳市・苫小牧市・美唄市で栽培が始められました。栽培当初はハスカップに品種はありませんでしたが、結実性を高める改良が行われるなど、生食でも食べやすい品種が育成されています。

【ハスカップ】はどんな味がする?

ハスカップヨーグルト

ハスカップの果実は爽やかな酸味に加えて独特な風味(苦味)があります。自生しているものは酸味が強く、中には苦い果実をつけるものもあり、生食には向いていません。果肉も果汁も濃い赤紫色をしており、ヨーグルトやケーキに加えるとその美しい見た目を楽しむことができます。最近では酸味の少ない「ゆうしげ」など生食可能な品種もありますが、菓子類のほか、ジャム・フルーツソース・シロップ・果実酒などに加工されて利用されることが多いです。

産地と旬の時期(出回り時期)

初夏を象徴する北海道特産のフルーツである「ハスカップ」。国内では北海道以外の栽培はほとんどなく、5月下旬から開花し、6月下旬には結実した果実が青紫色になり熟していきます。生の果実が出回る期間はごくわずかで、6月下旬から7月下旬です。この頃がハスカップのといえますが、冷凍加工されたものは一年を通して流通しています。北海道内の主な産地は厚真町、美唄市、千歳市です。

あまり知られていない【ハスカップ】の品種

ハスカップはさくらんぼの「佐藤錦」や「紅秀峰」といった具合に品種名で呼ばれることが少なく、販売の際も区別されることが少ないため、その品種についてはあまり知られていません。代表的な品種には個性がありますので、その名を少しでも知っているとハスカップ通と言われるかも!?

《ゆうふつ》

収穫時期は6月下旬〜7月上旬。甘味はほどほどで酸味がやや少なく、果実が柔らかい品種。北海道立中央農業試験場が育成した小粒の品種で、1992年に品種登録。アントシアニン含量が多い。

《あつまみらい》

収穫時期は7月中旬。果実の重さが2gほどになる大粒な品種で果皮は濃青色になる。果汁糖度が高く、果汁酸度が低いため味がよい。果実が若干硬めのため輸送に適した品種。

《ゆうしげ》

7月中旬に収穫期を迎える。果実は1.9g前後になる、ある程度硬さがある大粒の品種。甘みを感じやすく酸味が少なく美味しい。

不老長寿の果実、貧血によく効く?

ハスカップはアイヌ民族に「不老長寿の果実」として愛用されてきた果実です。その果実にはミネラル、ビタミン類、有機酸、食物繊維、ポリフェノール類を豊富に含んでおり、これらの成分が組み合わさることで他の果実と比べても健康に良いとされています。ポリフェノール類は特筆すべき成分で、ブルーベリーよりも多く含まれており、その主要成分であるアントシアニンは抗酸化作用が強いとされるシアニジンという抗酸化物質で構成されています。
古くから「不老長寿の実」とか「貧血によく効く」といわれてきましたが、このことが科学的にも明らかになってきました。

【ハスカップ】の栄養成分とその効能について

ハスカップ

ハスカップは100gあたり53kcal、タンパク質0.7g、脂質0.6g、炭水化物を12.8g、食物繊維を2.1g含みます。炭水化物(糖分)が比較的高く、100g中にカルシウムを38mg、鉄を0.6mgとミネラルも含みます。ビタミンCは100g中に44mgとやや多く含む果物です。特有の酸味はクエン酸などの有機酸によるもので、クエン酸には疲労回復の速度を早める働きがあります。
ここからはハスカップに含まれる栄養素とその働きを詳しく紹介します。

◆ビタミンE

ハスカップ100g中に1.4mgのビタミンEを含みます。ビタミンEは脂溶性ビタミンで、強い抗酸化作用を持つビタミンです。体の内外の細胞が老化することを防ぎ、アンチエイジングや生活習慣予防に役立つ栄養素です。

◆アントシアニン

ハスカップの濃い青紫色は、ブルーベリーと同様に色素成分のアントシアニンによるものです。ポリフェノールの一種であるアントシアニンは強い抗酸化作用を持つ成分で、眼精疲労や視力維持、生活習慣の予防やアンチエイジングにも役立ちます。ハスカップが含むアントシアニンは100gあたり220mgほどで、これはブルーベリーよりも多い数値です。
また、アントシアニンにも種類があり、ハスカップのアントシアニンは「シアニジン」といいます。このシアニジン、アントシアニンの中でも抗酸化作用が強く、ビタミンE以上の働きを持つと言われています。

◆食物繊維

先述したように、ハスカップは100g中に食物繊維を2.1g含みます。その中でも水溶性の食物繊維が0.6g、不溶性の食物繊維が1.5gという割合で含まれており、ハスカップを食べることで水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維を両方摂取することができます。 水溶性食物繊維は糖質の吸収を緩やかにすることで血糖値の急上昇を抑えてくれる働きや、発酵に関わり腸内環境を整える働きを持ちます。不溶性食物繊維は胃や腸で水分を含んで膨らみ、便の量を増やして腸を刺激し、便秘を解消する働きを持ちます。

【ハスカップ】は生果実でなくても大丈夫。“冷凍”がおすすめ!

北海道産の冷凍ハスカップ

ハスカップは旬が短く、限られた収穫時期しか生で食べられません。また果皮も果肉も大変柔らかいため、なかなか流通しない果物です。そのため、入手困難な生果実より、いつでも手に入る冷凍品を食べることをお勧めします。 以下に、冷凍ハスカップのメリットを紹介します。

1年間冷凍しても「ビタミンC」など栄養素の含量は変わらない

ハスカップに含まれているビタミンCは冷凍しても含有量がほぼ変わらないことが研究報告されています(北海道立食品加工研究センター:1998年調べ)。アントシアニンや食物繊維などそのほかの栄養素も変化しないため、安心して冷凍ストックすることができますよ。

冷凍すると手軽に美味しく食べられる

冷凍したハスカップの食べ方としては、解凍せずに凍ったままヨーグルトにトッピングしたり、スムージー、シェイク、ジャムも作ることができますよ。ジャムに加工する際はハスカップだけだと酸味が強く感じる場合もあるため、イチゴやブルーベリーなど他のベリー類と合わせてミックスベリージャムを作るのもおすすめです。

ブルーベリーやプルーンとの違い

ブルーベリーとプルーン

ハスカップは小さいプルーンにも見えますし、ブルーベリーとも色も大きさも似ています。プルーンには大きな種が入っているのに対し、ハスカップはブルーベリーと同様に小さな食べられる程度の大きさの種しか入っていません。また、ブルーベリーは王冠がついているような独特の形をしていますよね。 北海道を中心に自生していたハスカップに対し、ブルーベリーやプルーンは外国から輸入された果物である点も違いますね。

【ハスカップ】の美味しい食べ方

ここからは、管理栄養士で庭にハスカップを植えている農家でもある筆者がハスカップの美味しい食べ方をお伝えします。

①生でそのまま

ハスカップは生のまま、冷凍のままパクッと食べることができる果物です。一番手軽で素材の味を楽しむことができる食べ方ですね。ただし、ハスカップは個体差が大きく独特の苦味のような風味を持つハスカップもあります。生のまま食べづらい場合はジャムに加工すると良いでしょう。

②料理系のおすすめ

ハスカップは適量の塩をまぶして1日ほど冷蔵庫で寝かすことで梅干しのように食べられます。「ハスカップの塩漬け」と言い、冷蔵保存である程度の期間保管可能です。食べ方はご飯の上に乗せてもよし、おにぎりの具にしてもよし、ちらし寿司やサラダのトッピングに使っても色合いが綺麗で美味しいですよ。実を潰してオリーブオイルと酢などを加えてドレッシングとして使うこともできます。

③デザート系のおすすめ

ハスカップはデザートにも使えます。ジャムやコンポートなど砂糖で味を整えてからデザートにすることがおすすめです。ブルーベリージャムの代わりにカップケーキやチーズケーキ、パンやデニッシュにも合いますよ。

収穫時期に出会ったら。【ハスカップ】の選び方のコツ

ハスカップの収穫

ハスカップを選ぶコツとしては、生の場合は皮の色がすっかり濃い青紫色に変わり、花粉のような白い粉(ブルーム)がびっしりつているものが完熟です。
また、腐敗したりつぶれたりしていないもの、蟻などの虫がついていないものを選ぶようにしましょう。 摘み取り体験をするのであれば、ハスカップは木によって味が全く違うということを覚えておきましょう。何本かの木のハスカップを摘んで1粒味見してみて、一番好みの木のハスカップを収穫すると良いです。味見してもいいかどうかは主催者に確認してみてくださいね。

【ハスカップ】の保存のコツ

北海道産の冷凍ハスカップ

ハスカップの保存方法をお伝えします。生のままたくさん食べられるような味ではないため、我が家では少量生で食べたらすぐに冷凍保存やジャムに加工することが多いです。

①冷蔵

ハスカップの生の果実は冷蔵庫で1週間程度保存できます。水で洗うと鮮度が落ちやすいため、洗わずに冷蔵庫に入れることがポイントです。また、皮が柔らかいため自重で潰れないようになるべく重ならないようにしましょう。

②冷凍

ハスカップを洗い、実の表面についているゴミやヘタを取り除きます。ヘタは細くて短いのですが、意外に強くくっついています。ヘタを取る作業が少し手間ですが、冷凍のまま食べられるようにするためには根気強く綺麗に取るようにしましょう。 水分をキッチンペーパーなどで拭き取り、フリーザーバックになるべく重なり合わないように入れます。平に慣らして冷凍します。

北海道の有名なハスカップ菓子

ここまでで、ハスカップの生態や栄養価、美味しい食べ方などをご紹介しました。北海道では地に根ざした伝統の果物であるため、さまざまな企業がハスカップの商品化を行なっています。お土産にもおすすめな北海道の有名ハスカップ菓子を紹介しますね。

三星(みつぼし)の『よいとまけ』

北海道苫小牧市の三星のよいとまけ

ハスカップが「健康に良いスーパーフード」と言われ、注目され始めたのは比較的最近のことです。それよりもずっと昔の1950年代から「日本一食べづらいお菓子」として作られてきたのが北海道の苫小牧市に本社がある株式会社三星の『よいとまけ』です。

甘いカステラのようなスポンジのロールケーキにハスカップジャムが巻き込んであり、表面全体にもそのジャムがたっぷり塗られているハスカップづくしのお菓子です。甘味と酸味のバランスが良くてクセになる味。コーヒーや牛乳がぴったりですよ!三星さんでは『よいとまけ』の他にもラングドシャやジャムなどさまざまなハスカップ商品を製造しています。

もりもとの『ハスカップジュエリー』

もりもとのハスカップジュエリー

北海道の菓子メーカーとして全国的に有名な「もりもと」。ハスカップが旬の時期には生のハスカップを使用したケーキも登場します。

昭和53年に誕生したという「ハスカップジュエリー」はハスカップジャムを薄焼きクッキーとバタークリームでサンドし、チョコレートでコーティングしたゴージャスなお菓子です。 筆者が大好きな「雪鶴」というバタークリームをサンドしたブッセにもハスカップ味があります。表面がサクッ、中がふんわりとしたブッセ生地でハスカップをふんだんに練り込んだバタークリームをサンドしたお菓子です。ブッセのやさしい甘さとハスカップの酸味がたまらない一品です。

その他のお菓子やドリンク

ハスカップグミ

この他にもハスカップを使用したジャムやアイス、ゼリー、グミもさまざまな会社から製造・販売されていますよ。ハスカップ商品はお土産屋さんで探すと見つけやすいかもしれません。ドリンクの原料としても使われており、コカコーラが製造販売している「いろはす」のハスカップ味や、ハスカップのワイン、果汁を濃縮させたドリンクなどもあります。こちらも北海道物産展や、アンテナショップ、北海道のお土産屋さんで探すことができますよ。

ハスカップの日

7月7日は「ハスカップの日」!北海道でもまだあまり知られてはいませんが、ハスカップの魅力を伝えて知名度を高めることを目的に、令和3(2021)年4月30日に7月7日は「ハスカップの日」として登録されました(一般社団法人日本記念日協会)。

7月7日がハスカップの日になった理由としては、ハスカップの旬の時期であることと、その花言葉が「愛の契り」であることから、七夕の織姫と彦星を連想してもらえること理由です。なんだかロマンティックなストーリーですね!

まとめ

ほぼ北海道でしか栽培されていないハスカップの魅力や栄養素とその効能、美味しい食べ方などを紹介しました。生産量が少なく流通しづらいため生で食べたことがある人は少ないかもしれませんが、冷凍品や加工品は気軽に手にすることができます。甘くて酸っぱい北海道の初夏の果実「ハスカップ」。健康にも嬉しい働きを持つ栄養素も多く含んでいるため、ぜひさまざまな商品をお試しいただきたいです。

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