北海道留萌地方発祥の郷土料理「ニシン漬け」。ニシン漁が盛んであった日本海側で生まれた厳しい冬を乗り切るための保存食であり、現在でも定番の漬物として道産子に親しまれています。そんな伝統的な漬物の簡単な作り方はもちろん、体に嬉しい発酵食品としての栄養面にも注目。ニシン漬けの魅力を管理栄養士の筆者が詳しく解説します♪
目次
北海道の郷土料理「ニシン漬け」とは
「鰊漬け(にしんづけ)」はかつて鰊漁が盛んだった北海道ならではの郷土料理です。発祥地は道北エリアの日本海側にある留萌(るもい)地方といわれています。厳しい寒さの冬を乗り越えるために、食糧を貯蔵する必要があったことが誕生のきっかけ。食材を長期保存する方法の一つ「漬物」として、冬の前にニシンを干物に加工した“身欠きニシン”と“野菜”を漬け込み、今日まで食べられる家庭料理になりました。昭和に入ってからニシンの漁獲量は急激に減少したものの、伝統的な漬物としてスーパーや専門店、ECサイトでも手に入るようになりました。酸味が効いたニシンの旨さを感じられる料理なので、お酒はもちろんご飯と一緒に食べてもいいでしょう。
冷蔵庫で簡単にできる「ニシン漬け」〜ご飯のおかず、お酒のお供に〜
筆者の母や祖母は毎年ニシン漬けを作っています。漬物と聞くと、大きな樽に大量に仕込んで食べるイメージがあるかもしれませんが、ジップロックを使えば手軽に少量から作ることができますよ。
キャベツは葉の柔らかな春キャベツより、冬に出回る肉厚でギッシリ詰まったものがおすすめ。我が家のレシピは塩分はやや控えめ!作ってから3~4日目から食べられるレシピです。母から教わったレシピを紹介しますね。
《材料》
- キャベツ 1玉(約1㎏)
- ダイコン 1本(約1.5kg)
- ニンジン 2本
- 身欠きニシン 5本
- 昆布 5㎝角
- 生姜 200g
- 生麹 500g
- 塩 キャベツの重さの3%
- 南蛮 2本(タネをとって輪切り)
《作り方》
- 身欠きニシンの下ごしらえをする。しっかり浸る量の米のとぎ汁の中に身欠きにしんと昆布を入れ、半日置く。ぬるま湯でニシンを洗ってからうろこを包丁の背でとり、腹骨をそぐ。
- 野菜は好きな大きさに切る。キャベツは一口サイズのざく切り、大根は小さめの乱切り、にんじんとショウガは千切りがおすすめ。
- ニシンは1㎝のぶつ切りか、そぎ切りにする。
- 材料を全部混ぜて漬ける。15度前後で1日置き、水が出たら軽く混ぜて空気を抜いて冷蔵庫か10度以下の場所で保存する。1週間後くらいが食べごろ。
ニシン漬けを作るコツ・お役立ち情報
常温で保存するのは野菜の乳酸菌を働かせるためです。程よい酸味が出てさっぱりするので、モリモリとニシン漬けを食べることができますよ。ただ、ニシン漬けは長く置くと酸っぱくなりすぎます。酸っぱいニシン漬けが苦手な方は、お茶の葉を入れる不織布の袋に卵の殻を洗って乾かしたものを入れることで酸味が出るのを防ぐことができます。
食べごろは人それぞれの好みもありますが、麹がトロっと溶けてきた頃が最高!漬けてから1週間~2週間が目安です。
筆者の家ではニシンの他にも鮭の切り身(一度冷凍してから利用する)で作り、「鮭の切り漬け」として食べることもあります。
北海道と保存食。ニシン漬けは冷凍もOK。
北海道では冬の期間、ほとんど野菜を作ることができません。今ではハウス栽培や地熱利用をすることで野菜の栽培も行われていますが、昔は秋の終わりに収穫した野菜を様々な方法で保存しながら長い冬を乗り越えてきたのです。ニシン漬けは食材が不足する季節でも、野菜と魚を保存しながら食べるという栄養的に理に適う保存食です。
氷点下を下回る日が続くと保存食も凍ってしまいますが、ニシン漬けは凍った後にも解凍しても食べることができます。食べ切れない場合は数百グラム単位で保存袋に分けてから冷凍し、食べる2日前に冷蔵庫に移して解凍してから食べましょう。
発酵食品としての魅力
ニシン漬けは発酵食品です。野菜が持つ乳酸菌の力で魚の腐敗を防ぎながら、麹がもつ酵素の力でどんどん旨味を増していきます。発酵食品を日ごろから摂取することで、腸内環境が整い免疫力が高まります。このことから、ニシン漬けは北海道の厳しい冬を乗り越えるための健康の源と言っても過言ではない漬物です。
ニシン漬けの栄養とカロリーについて
ニシン漬けは100gあたり262kcal、塩分は2.2gです。ニシンは脂肪が多いため漬物にしては高カロリーです。ただ、ニシンの脂肪にはDHAやEPAという身体によい働きをもたらす脂肪酸が多く含まれていますよ。
野菜と魚を一緒に食べることができるので、主菜と副菜を兼ねている漬物とも言えます。ニシン漬けが好きな人は「ニシン漬けとご飯があればそれで夕食は済む」という人も。北海道民の中でも好き嫌いが分かれる漬物ではありますが、ハマるとなかなか抜け出せない中毒性がある漬物です。
まとめ
北海道の郷土料理「ニシン漬け」について紹介しました。作るために必要な材料はシンプルで、漬けてから数日待てば完成する料理です。ニシン漬けを食べて発酵パワーで病気に負けない健康な体を作っていきましょう!ぜひ記事のレシピを参考にしてみてくださいね!