【昆布巻き】を食べよう!郷土料理としての歴史や栄養、作り方とコツについて

郷土料理
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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身欠きニシンや鮭を昆布で巻いて甘辛く炊いた「昆布巻き(こぶまき)」。縁起物として正月のおせち料理やハレの日に食べる料理のイメージがありますが、昆布の全国生産量9割以上を占める北海道では身近な郷土料理として知られています。今回は昆布巻きの作り方のほか、具材選びのポイントや栄養、歴史や由来についても詳しく紹介します。

定番の「昆布巻き」を作ってみよう!〜身欠きニシン〜

ニシンの昆布巻き,北海道の郷土料理

昆布巻きの中で最もポピュラーなのが、「ニシンの昆布巻き」です。メインの材料は干物に加工されて保存がきく“身欠きニシン”。米のとぎ汁を使って戻すことで、ニシンの脂が酸化した時の臭みやえぐみを取り除くことができます。ここからは誰でも簡単にできる昆布巻きの作り方をご紹介します!

《材料(4人前)》

  • 早煮昆布(幅5㎝長さ20㎝) 6 枚程度 
  • 身欠きニシン 4本
  • 番茶 大さじ1(緑茶やほうじ茶でも)
  • かんぴょう  20 g 
  • (●)砂糖  大さじ5 
  • (●)酒  100 ml 
  • (●)酢 大さじ1
  • みりん 大さじ 2 
  • しょうゆ  大さじ3 
  • 米のとぎ汁 600mlほど
  • 昆布の戻し水 300mlほど

《作り方》

  1. 身欠きニシンが入る大きさの保存容器に米のとぎ汁と身欠きニシンを入れ、24時間~3日置きニシンを戻す。(ニシンを半分に折ってから戻しても良い)
  2. ニシンの戻し汁は捨て、ニシンとお茶パックに入れた番茶、ニシンがひたひたになる程度の水を入れて強火で沸騰させる。沸騰したら弱火にして2~3分程煮てザルにとる。
  3. 昆布も保存容器や大き目のバットに入れ、水に20分ほど漬けて戻す。戻し汁は捨てずにとっておく。
  4. かんぴょうを一度水で濡らし、塩小さじ1/2をまぶしてしんなりするまで揉み、また水で洗い流す。水がきれいになったらかんぴょうを漬け、10分程戻し、20㎝程の長さに切りそろえる。
  5. ニシンはエラの部分を切り落とし、戻した昆布の幅に合わせて切る。
  6. 昆布の端にニシンを乗せる。ニシンの大きさを見ながら2~3切れ乗せ、端からキツく巻いていく。
  7. 昆布が巻き終わったらつまようじを貫通させて止め、かんぴょうで結ぶ。かんぴょうで2か所結ぶと出来上がりがきれい。煮込むと昆布が膨らむため、少し緩めでも良いが結び終わりはしっかりくくることが重要。
  8. 鍋に昆布で巻いたニシン、(●)の調味料、昆布の戻し汁を昆布巻きがひたひたになる程度入れ、蓋をして中火にかける。(圧力鍋の場合、加圧1分で火を止める)
  9. 沸騰したらアクをとり、弱火で20分~30分煮込んで昆布が軟らかくなったらみりん、醤油を加えて煮汁が半分になるまで中火で煮詰める。(圧力鍋の場合、蓋を取って中火で煮詰める)
  10. 冷めたら一口大に切り、完成。

「鮭の昆布巻き」を作ってみよう!

鮭の昆布巻き、北海道の郷土料理

ニシン以外に昆布巻きでよく使われるのは鮭です。ニシンの場合だと、スーパーで買うには少し高くて買いにくい…という方も多いのではないでしょうか。ニシンは最近まで幻の魚と呼ばれるほど漁獲量が減少していた魚でした。その影響もあり、比較的日本のどこでも手に入りやすく漁獲量も多い鮭を調理に使う家庭も増えたようです。次は、鮭を使った昆布巻きの作り方をご紹介します!

《材料(4人前)》

  • 早煮昆布(幅5㎝長さ20㎝) 6 枚程度 
  • 塩鮭 3枚
  • かんぴょう  20 g 
  • (●)砂糖  大さじ5 
  • (●)酒  100 ml 
  • (●)酢 大さじ1
  • みりん 大さじ 2 
  • しょうゆ  大さじ3 
  • 昆布の戻し水 300mlほど

《作り方》

  1. 昆布を保存容器や大き目のバットに入れ、水に20分ほど漬けて戻す。戻し汁は捨てずにとっておく。
  2. かんぴょうを一度水で濡らし、塩小さじ1/2をまぶしてしんなりするまで揉み、また水で洗い流す。水がきれいになったらかんぴょうを漬け、10分程戻し、20㎝程の長さに切りそろえる。
  3. 塩鮭を200㏄の水に小さじ1/2の塩を入れた塩水に20分間漬ける。水気を拭いて皮や骨をとり、昆布の幅よりやや長めの2cm角の棒状に切る。
  4. 昆布の端に鮭を乗せる。端からキツく巻いていく。
  5. 昆布が巻き終わったらつまようじを貫通させて止め、かんぴょうで結ぶ。かんぴょうで2か所結ぶと出来上がりがきれい。煮込むと昆布が膨らむため、少し緩めでも良いが結び終わりはしっかりくくることが重要。
  6. 鍋に昆布で巻いた鮭、(●)の調味料、昆布の戻し汁を昆布巻きがひたひたになる程度入れ、蓋をして中火にかける。(圧力鍋の場合、加圧1分で火を止める)
  7. 沸騰したらアクをとり、弱火で20分~30分煮込んで昆布が軟らかくなったらみりん、醤油を加えて煮汁が半分になるまで中火で煮詰める。(圧力鍋の場合、蓋を取って中火で煮詰める)
  8. 冷めたら一口大に切り、完成。

これを知っておけば「昆布巻き」は簡単で美味しく

お節の中でも玄人向けの料理に思える昆布巻き。お節料理は一通り作るけれど、かまぼこと昆布巻きだけは市販品を買う、という人もいるのではないでしょうか。

それもそのはず、上記のレシピに書いたように手順が多くて時間がかかることは間違いありません。しかし、もう少し深く昆布巻きを作るポイントを知ると、より身近で手軽な料理に感じるかと思います。

昆布の選び方と種類の違い

早煮昆布

昆布巻き用の昆布は、出汁用の昆布ではなく、肉厚で軟らかく煮上がりの早い昆布を使うことをお勧めします!目で見るだけではどの昆布が煮あがりが早いかわからないですよね。そんな時には「早煮昆布」とパッケージに書かれている昆布を選びましょう。棹前(さおまえ)昆布ともいわれ、6月ごろに収穫される若い昆布を差します。出汁を取る用の昆布と比べると薄いため、早く軟らかく煮ることができます。

昆布を柔らかくするコツ

酢をスプーンに注ぐ

昆布をやわらか~く仕上げるには「酢」が登場! 醤油などの調味料を加えるまえに、じっくり煮てやわらかくします。「酢を加えて煮るなんて酸っぱくなりそう…」という心配はご無用。酢は煮詰めるにつれて酸味が飛び、うまみだけが残ります。まろやかな米酢を使うのがおすすめです。

色々な具材でアレンジ

たらこの昆布巻き

ニシンや鮭で作る昆布巻きのほか、北海道にはたらこシシャモタラで作る昆布巻きも存在します。やはりニシンや鮭がメジャーですが、他の素材で作った昆布巻きも絶品ですよ。
魚卵好きは是非、たらこにチャレンジしてみて下さい。ご飯がモリモリ進む味です!

④圧力鍋を使うと時短に

レシピの手順にも記載しましたが、圧力鍋を使うと煮込み時間を格段に短縮することができます。加圧後は1分で火を止め、自然に冷めるのを待つだけである程度昆布は柔らかくなります。その後は煮詰めるだけですよ。

昆布巻き」のカロリーや栄養について

●「ニシンの昆布巻き」は1人前あたり(上記レシピの1/4量)204.5kca、塩分は2.2g。
●「鮭の昆布巻き」は1人前あたり(上記レシピの1/4量)223.8kca、塩分は2.3g。
→お節料理で一口食べる程度なら、この栄養価の1/3~1/2となります。

昆布巻きは昆布に含まれるヨウ素や食物繊維魚に含まれるビタミン類を多く含みます。食べ過ぎは塩分過多につながりますが、適度な量であれば健康的ですよ。

改めて北海道の郷土料理「昆布巻き」とは

鰊の昆布巻き,北海道名物グルメ

北海道の「昆布巻き」はニシンや鮭などの具材を昆布で巻いて、煮たものです。具材は魚のみならず、野菜や肉など地域や嗜好によって異なります。昆布のみをかんぴょうで巻いたものも昆布巻きに含まれています。比較的保存のきく料理(冷蔵7日ほど)であるため、年末に準備して「おせち」に使われることが多いです。

料理としての歴史や発祥 

「昆布」は797年(延歴16年)の書物で記述があるほど歴史のある食べ物で、鎌倉時代には昆布の乾燥方法が確立し、交易品として全国に出回っていたそうです。その後江戸時代に昆布漁が盛んになり、日本海の関西航路を行き来する「北前船」での交易が行われたことから輸送量が増えました。同時期に漁獲量の多いニシンや鮭を合わせた「昆布巻き」が生まれ、北海道の郷土料理となりました。

正月やおせち料理で食べられる理由

おせち料理の昆布巻き

正月料理で欠かせない昆布巻きにはどのような意味があるのでしょうか。まず昆布は「よろこぶ」との語呂合わせで昔から縁起物として用いられており、「養老昆布(よろこぶ)」とも書かれることからお祝いの意味や不老長寿の願いが込められています。「子生(こぶ)」という当て字もあり、子孫繁栄の意味もあります。さらに末広がりの昆布の形から「広布(ひろめ)」と記されていたこともあり、「喜びを広める」ものとしても大事にされてきました。

ニシンは昔、米が取れなかった松前藩において年貢として認められていたことから、“魚に非ず、海の米なり”→「鯡」と書かれるようになりました。また、語呂合わせで「二親(にしん)」(※両親の意味)とも書かれ、命をつないでくれる親のように大切な存在であったこと、卵(数の子)の粒の多さから子宝成就や子孫繁栄の意味も込められています。加えて、ニシンは栄養を蓄えた産卵時期の冬~春が旬であるため春を告げる魚とも言われており、新年を迎えるのにピッタリな魚です。

「昆布巻き」は、縁起の良い昆布とニシン等を巻で“結”んだ食べ物で、両親の末永い健康・子宝に恵まれ子孫が続いていくように願いが込められた深い意味が背景にあるのです。

北海道だけじゃない。各地の昆布巻きの特徴

北海道の郷土料理として紹介してきましたが、実は北海道だけでなく各地にご当地昆布巻きがあるんです!地域ごとの特徴をまとめてみました。

  • 宮城県:秋刀魚の昆布巻き
  • 福井県:ニシンの昆布巻き(北前船で北海道から昆布や加工した身欠きニシンが運ばれ、貴重な食糧として重宝された)
  • 石川県:のどぐろの昆布巻き
  • 静岡県:鮪の昆布巻き
  • 滋賀県:鮎の昆布巻き(琵琶湖で獲れる)・鮒の昆布巻き
  • 富山県:昆布巻きかまぼこ(昆布を渦巻き状に巻いたかまぼこがあり、地元のスーパーでもよく売られている)
  • 鹿児島県:鯖の昆布巻き

どれも地域ごとの特産品を使っていて大変興味深いですね!ぜひ読者の皆様の出身地や居住地ではどんな昆布巻きがあるのか調べてみてください。

まとめ

昆布巻きは縁起物というだけでなく栄養もたっぷり、工夫次第で様々なアレンジができるということがわかりましたね。お正月だけではなく、今回のレシピを参考に普段の食事でも作ってみてはいかがでしょうか。

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