【長芋】を食べよう!優れた栄養価とその効能、ネバネバの秘密やおすすめの食べ方を紹介。

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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栄養価が高くヘルシーな長芋は毎日摂り入れたい野菜の一つ。「滋養強壮に効く」ともいわれるネバネバ野菜について、ムチンや食物繊維、ジアスターゼといった栄養素やその効能を管理栄養士の筆者が詳しく解説。山芋や自然薯との違い、保存のコツ、納豆やオクラなどと合わせて栄養価の高いメニューに変身させるためのポイントも紹介します。

【長芋】はどんな野菜?

北海道産の長いも2本

長芋の紀元は東アジアと言われています。中国では薬用として栽培されていた歴史があり、今でも漢方薬として用いられています。

縄文時代の後期には日本で栽培されていたといわれ、長芋の生産量の都道府県別シェア率で1位は北海道です(2019年)。日本で生産される約50%の長芋は北海道産、続いて約40%が青森県産です。青森県は2010年前後までは全国一の生産量を誇っていましたが、高齢化による長芋生産者減少と北海道の新品種の収量増大により二位になってしまいました。

北海道の中で栽培が盛んなエリアは十勝管内(帯広市、幕別町、芽室町、音更町、士幌町など)で、そこで栽培される長芋には「十勝川西長いも」というブランド名が付いています。「十勝川西長いも」は世界的にも品質が高いとの評価を得ており、輸出されて高級野菜として消費されています。

十勝管内以外では、石狩市や鵡川町、夕張市などでも栽培が行われています。

長芋ができるまで

長芋の畑

長芋は収穫まで丸1年かかる野菜です。

北海道では雪が解けた4月に畑を1mの深さまでしっかりと掘り起こし、種を植える準備に入ります。5月に一つ一つの種を植え付けた後はポールを立て、夏に長いものツルが伸び伸びと成長できるように準備をします。
8月になると畑には長芋のグリーンカーテンが出来上がります。

長いもの収穫

秋になると畑のポールを取り除き、長芋のツルが枯れあがった頃の11月上旬から「秋掘り収穫」が開始されます。収穫はダイナミックかつ繊細!重機で畑に約1mの溝を掘り、溝の両脇から長芋を手作業で発掘する作業です。折れると商品価値がガクッと下がるため、折れないように慎重に手で長芋を掘ります。

雪が降るころには収穫をやめ、年が明けて雪が解けてきた頃に行われるのが「春掘り収穫」。秋堀りからその間は雪の下で長芋を貯蔵しておきます。 秋掘り収穫の長芋は皮が薄く味もさっぱりしていて水分が多いのが特徴ですが、春掘りは適度に水分が抜けて甘みが凝縮され、粘り気も強いのが特徴です。

長芋の栄養価と栄養素の紹介

カットした長芋

長芋の栄養価は100gあたり65kcal、タンパク質2.2g、脂質0.3g、炭水化物13.9g、食物繊維は1.0gです。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、12.9gです。

このほかにも長芋に含まれる栄養素は多くあり、それぞれの様々な働きを詳しくお伝えします。

①ネバネバ成分

長芋の粘液成分は「マンナン」という水溶性食物繊維とタンパク質の混合物です。マンナンは海藻やコンニャクイモにも多く含まれています。水溶性食物繊維の一種であるため、体内の不要なカスを吸着させて体外に排出することを助けたり、血糖値の急上昇を防ぎます。 長芋やオクラのネバネバ成分を「ムチン」と呼ぶということがありましたが、ムチンは動物粘液のことを差すため、植物のネバネバは当てはまりません。

②食物繊維とレジスタントスターチ

長芋100g中に「食物繊維」は1.0g。上記のマンナンのように水溶性の食物繊維も含みますが、「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」も含みます。 レジスタントスターチは腸内では消化することができない炭水化物ということで、食物繊維と同じような働きをします。レジスタントスターチは腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える助けをするほか、消化を緩やかにすることで血糖値の急上昇を防いだり、便秘の解消にも役立ちます。

③ビタミンB1

長芋100g中に「ビタミンB1」を0.1㎎含みます。
ビタミンB1は糖質をエネルギーへと変換する際に必要とされる栄養素です。甘いものや炭水化物が好きな人には多く摂取することをおすすめします。
長芋自体にも炭水化物も含むため、ビタミンB1を含むことは理にかなっていますね。
ニンニクや玉ねぎに含まれる刺激成分「アリシン」と一緒に摂取すると吸収率が高まり、より効果を発揮しますよ。

④ジアスターゼ

「ジアスターゼ」とは、人体でも作られる消化酵素の一種です。デンプンを消化することができますが、加熱すると分解されて力をなくします。
長芋自体にもデンプンを含むことから、長芋はセルフで消化することができるという、とても消化に良い野菜と言えます。食欲がない時や内臓に負担がかかっているときには長芋を食べると消化に良くエネルギーにも代えやすいということです。

ジアスターゼの効能を期待したい場合、とろろ汁にしたり出汁(だし)でとろろを薄める場合は40~50℃程度に冷ましたものと混ぜ合わせるようにしましょう。

長芋の皮は捨てる?食べる?

皮を剥いた長芋

栄養素を丸ごと取り入れるのであれば、皮まで丸ごと食べましょう。皮にはポリフェノールや食物繊維が多く、捨ててしまうのはもったいないです。

長芋にはヒゲ(側根)が多いため、とろろにする際には口当たりが気になるかもしれませんが、ヒゲはたわしでこする程度にそぎ落とし、それでも気になる場合はコンロやライターででチリチリ炙ってみましょう。

それか、白い部分だけでとろろを作った後、皮の部分を焼いたり炒めたりしても良いです。

長芋の仲間たち

色々な種類の長芋

長芋に似た生のまま食べられるネバネバする芋は、植物学的に大きく「ヤマノイモ科のヤマノイモ属」に分類されます。「山芋」という呼び方はこれらをまとめて差すと考えて大丈夫。

その中でも「長芋・大和芋・伊勢芋・イチョウ芋」「自然薯(じねんじょ)」「大薯(だいじょ)」の3つの種類に分かれます。

◆自然薯(じねんじょ)

日本に古くから自生し、滋養強壮に役立つと言われ食用・薬用に用いられています。強い粘りがあり、収穫までに3~4年かかる品種です。
「自然薯(じねんじょ)」は長芋よりも糖質含有量が高く、100gあたり121kcal、糖質は24.6g含みます。

◆大薯(だいじょ)

おもにアフリカやオセアニア、熱帯のアジアの地域で生産される種類で日本ではほとんど栽培されていません。「台湾山芋」や「沖縄山芋」とも呼ばれ、「ヤムイモ」の一種です。
見た目は様々な形があり、九州では大薯を「つくね芋」と呼ぶこともあります。

紫色のタイプと白いタイプがあり、品種や産地で色も形も違います。 「大薯(だいじょ)」は長芋よりも糖質含有量が高く、100gあたり109kcal、糖質は16.4g含みます。

◆イチョウ芋

長芋の仲間で扁平で扇状に広がっている形をしていることから「イチョウ」に形が似ているためイチョウ芋と呼びます。産地は関東近辺で、関東ではイチョウ芋のことを「大和芋(ヤマトイモ)」と呼ぶことも。

粘りは長芋よりも若干強い程度。
「イチョウ芋」は長芋よりも糖質含有量が高く、100gあたり108kcal、糖質は21.2g含みます。

◆つくね芋

長芋の中まで丸みを帯びた形をしています。関西が産地で、伊勢芋・丹波芋などが代表的。九州で「つくね芋」と呼ぶ品種とは違う種類です。長芋よりも粘り気が強いです。

納豆やオクラ、ネバネバ食材との組み合わせで

長芋とろろ、納豆、オクラご飯

長芋の栄養素を丸ごといただくには生のままが一番!これは、長芋には熱に弱い栄養素も含まれるからです。また、すりおろすことで量をたっぷり摂取することができます。

さらに他のネバネバ食品と組み合わせることで、より栄養価が高いメニューに変身させることができます。例えば、食欲のない時に助かる「とろろかけご飯」は長芋だけだとたんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルが不足してしまいますが、一緒に納豆やおくら、めかぶなどを添えることで栄養バランスの良いとろろかけご飯になります。

また、そばやうどんにとろろをかける際も、生卵やなめこ、なめたけ、もずくなどを一緒に盛り付けて食べることでツルっとさっぱりした麺類を楽しめる上、栄養価も高くなります。

長くおいしく味わうための保存のコツ

おがくずの中で保存する2本の長芋

産地直送の長芋をkg単位で購入したり、道の駅などで箱ごと購入する場合は「おがくず」に入れられていることが多いです。おがくずが無いご家庭では1本丸ごとの場合、新聞紙に包んで保湿しながら冷暗所に置きましょう。

使いかけの場合は切り口にラップをし、冷蔵庫の野菜室へ入れます。切り口は褐変してしまいますが、気にならなければ褐変したまま使ってしまいましょう。

とろろにした場合、1回ずつ食べやすい分量を小分けに冷凍すると便利です。ひと晩冷蔵庫に入れて低温解凍することで滑らかなとろろが楽しめます。

長芋が変色する理由

輪切りした長芋

長芋は空気に触れると赤茶色っぽく変色していきます。これは長芋に含まれるポリフェノールによる反応です。変色しても味に変わりは無いのですが、見た目が悪いためすりおろしたり千切りにした後は早めに食べ切るか、ステーキ・煮物で食べたい場合は酢水に漬けると良いです。

長芋がかゆくて苦手な人は対策を知ろう!

長芋が手や口につくと痒さを感じる場合があります。これは、長芋に含まれるシュウ酸カルシウムの栄養です。シュウ酸カルシウムは顕微鏡で拡大して見ると針のような形をしているため、肌に刺さってチクチクかゆみを生じさせるのです。

シュウ酸カルシウムは酢で分解されるため、手や口の周りのかゆみが気になるときには酢水で洗うと和らぎますよ。

おすすめの食べ方

長芋とろろ卵かけご飯,味噌汁,漬物

長芋は自然薯やつくね芋に比べると粘りがさらさらしており水気が多いため、千切りや薄切りにする料理に向いています。

もちろん、すりおろして「とろろかけごはん」にしたりお好み焼きやオムレツに混ぜ込むとふわふわ・トロトロした食感も楽しめますよ。

筆者が個人的に好きな食べ方は、すりおろした長芋に生卵を適量混ぜて醤油を垂らしてご飯にかける食べ方です。幼少期に父がよくやっていたため、一緒に食べていた思い出の味でもあります。名前を付けるまでもないのですが、「TTKG(とろろたまごかけごはん)と言ったところでしょうか(笑)

卵はタンパク質が豊富でビタミン・ミネラルなどの栄養素を「とろろ」にプラスすることができ、栄養価も高い食べ方と言えます。

秋掘り長芋はとろろや酢の物、サラダ向き。春掘り長芋は味が凝縮されているため、片栗粉をまぶしてフライドポテトのように揚げたり、煮物やステーキにしても美味しいですよ。

まとめ

長芋の産地や栄養価、含まれる栄養素の働きをお伝えしました。
北海道では長芋が気軽に手に入るため、昔からよく食べられています。中には「食べ過ぎて嫌い!」という人もいるほど!

すりおろして生で食べる以外にも、加熱して甘みやホクホクとした食感を味わう食べ方もおすすめです。一度にたくさん取り寄せて、ヘルシーな長芋料理を堪能してみてはいかがでしょうか。

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