【あさり】を食べよう!栄養素とその効能。旨味の秘密やおすすめの食べ方について詳しく紹介

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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北海道から九州にかけて生息する「あさり」。酒蒸しや味噌汁、深川めし(炊き込みご飯)といった和食はもちろん、ボンゴレやクラムチャウダーといった洋食でも日本人にとってはお馴染みの貝類です。今回は管理栄養士の筆者が鉄やタウリンなど、あさりに含まれる栄養成分とその効能を詳しく解説。しじみやはまぐりとの比較、栄養を効果的に摂取する調理法、旨味の秘密やおすすめの食べ方についてもご紹介します。

まずは【あさり】について詳しく知ろう

アサリ,あさり

内湾(ないわん)に生息する小型の二枚貝である「あさり」は、旨味と栄養成分が豊富な貝類として知られています。江戸時代にはアサリ売りが町を回っており、日常的な食卓に欠かせない食材として昔から親しまれてきました。スーパーでよく見かけるサイズは直径2~3㎝前後のものが多いと思いますが、大きいものでは殻の長さが6cmにまでなります。

主な産地や漁獲量

国内の漁獲量は年々減少しており、2022年に熊本県産の産地偽装で話題になったアサリ。農林水産省の調査によると、ここ数年は国内に流通する全体量の8割以上が輸入もの(令和2年は89%)となっています。その中でも中国産が7割、韓国産が2割以上を占めています。
同じ農水省の調査において、2020(令和2)年の国産あさりの漁獲量は4,400t。トップは愛知県の1,600t、次いで北海道が1,500tとなっています。産地は他にも、静岡、三重、千葉、広島と全国各地にあります。

卵を産むことで数を増やすアサリは、海水の温度が20度前後になる春と秋に産卵します。北海道では春の海水温が低いため、夏のみの産卵に。その分、栄養を蓄える時期が長いので大きく育つといわれています。

名前の由来

あさりは漢字で「浅利」と書きます。その名前の由来は、「水位の浅い所に棲む貝」という説、「さり」を「砂利」と解釈し「砂の中に生息する貝」という説、「漁り(あさり)」という言葉が貝を獲る意味を持つことから「漁り貝」が語源になったという説もあります。

旬の時期

あさりの「旬」卵を産む前の春先と秋のはじめと言われていますが、これは本州産のあさりです。産卵期が夏の1度しかない北海道産のあさりは9月~6月にかけてと旬が長くなります。ただし、道内各地の漁港ごとに漁期や漁獲量が決められているため、旬の期間ならいつでもあさりが獲れるわけではありません。北海道の主な産地は厚岸町、湧別町、釧路町、知床町などです。

旨味たっぷり、世界中で愛される食材

あさりの潮汁

あさりは味噌汁にすると他に出汁がいらないくらいの旨味を持っています。その旨味の正体は「コハク酸」というアミノ酸です。コハク酸はうまみを感じさせるほかにも肌を引き締める働きや脂肪燃焼効果があると言われています。 あさりの産地は日本だけでなく、朝鮮半島やフィリピン、台湾などの日本海沿岸各地にあります。また、ヨーロッパやアメリカでも養殖されており、世界各国で愛される食材となっています。朝鮮半島ではスンドゥブに欠かせない食材ですし、ヨーロッパではイタリアのボンゴレアクアパッツァ、スペインではパエリア、そしてアメリカではクラムチャウダーにと大活躍です。

【あさり】の栄養成分とその効能を知ろう

あさり,アサリ

あさり(生)は100gあたり30kcal、タンパク質6.0g、脂質0.3g、炭水化物は0.4g、食物繊維は0gです。カルシウムなどのミネラルが豊富な食材です。

ただし、あさりには塩分も多く含みます。100ℊ中2.2㎎と、これは塩を加えずとも美味しいお吸い物ができるくらいの含有量です。あさりを料理に使う際は味見をしながら調味料を加減すると良いでしょう。

◆カルシウム

あさりは可食部100ℊ中に66㎎カルシウムを含みます。
カルシウムは健康な骨や歯を作るほか、筋肉の収縮にも使われるミネラルです。あさりに含まれるカルシウム量は牛乳の約半分ですが、海産物の中ではトップクラスの含有量です。牛乳が苦手な人はあさりでも十分カルシウム補給ができますね。

◆タウリン

あさりに含まれる栄養素のなかでも特に注目の成分がタウリンです。100ℊ中に664㎎含みます。タウリンはアミノ酸に似た物質なのですが、コレステロール値を正常値に近づけたり、肝機能を高めたり、高血圧の改善や動脈硬化の予防にも役立ちます。体内では肝臓や筋肉、脳、心臓などに分布する体にとって重要な栄養素です。

◆ビタミンB12

あさりはビタミンB12100gあたり52.4μg含みます。これは食材の中でもトップクラスの含有量。 ビタミンB12は赤血球を合成するのに必要な栄養素です。不足すると貧血や不眠や肩こり、腰痛などを伴う神経障害になりやすくなります。ただし、水に溶け出やすいため調理する際は汁ごと食べられるような料理にすることをおすすめします。

◆鉄

あさりは100g中に3.8mg含みます。これは牛の赤身肉の2.2㎎~2.5㎎よりも多い数値です。お肉が苦手、硬くて食べられないという人にはあさりでの鉄の摂取もおすすめです。
鉄は正常な赤血球を作るのに必要なミネラルです。不足すると貧血を起こして、めまいや立ちくらみなど疲れやすくなります。鉄には2種類あり、赤身の肉、貝類、小魚などに多く含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品や乳製品、卵に多く含まれる「非ヘム鉄」に分けられます。その違いは吸収力で、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べ吸収力が約5倍も高いのが特徴です。

加工あさりの栄養成分、しじみ・はまぐりとの比較

①水煮缶

アサリの水煮

あさりはどうしても下処理が必要だったり、殻がゴミになるということで調理しにくい食材です。時短したい場合は「水煮缶」がおすすめです。

水煮缶は生のあさりを水煮にしてから缶詰に閉じ込め、圧力と熱をかけたものです。茹でた時に流出する栄養素もありますが、ほとんどの栄養素が生よりも多く含まれています。また、国産であることが少ないので、産地を気にする人は食品表示をよく見てください。

あさりの水煮缶は100gあたり114kcal、タンパク質20.3g、脂質2.2g、炭水化物は1.9g、食物繊維は0gです。カルシウムは110㎎、鉄は29.7ℊと豊富!ただし、水溶性であるタウリンを摂りたい場合は、生から調理するようにしましょう。

②佃煮

アサリの佃煮

生姜とあさりを甘辛く炊いた「あさりの佃煮」は絶品です。ご飯やお酒にもピッタリ!佃煮も水煮と同じく、凝縮される栄養素も多いですが流出する栄養素もあります。佃煮は醤油と砂糖を多く使うため、塩分や糖質の摂り過ぎには注意!食べる量は1食に小さじ1杯程度に抑えましょう。

③しじみ・はまぐりと比べて

しじみとはまぐり

あさりはよく似た貝であるしじみはまぐりと比べるとカロリーが低く、ほかの栄養素も同等か若干少ない食材です。しかし、しじみは小さいために量を食べることは難しく、はまぐりは高価なことから日常的には食べにくいもの。経済的なあさりをたっぷり食べることで、しっかりと栄養を摂ることができます。

栄養価を効率的に摂取するおすすめの食べ方

アサリご飯

あさりの中では生食できるものも一部流通していますが、ほとんどが加熱用です。加熱すると気になるのが栄養素の損失具合ですよね。加熱によって損失するビタミンはそれほど多くはありません。しかし、ビタミンB群やタウリンは水溶性のため、茹でたり煮る調理法では栄養素が流れ出てしまいます。生のあさりを調理する際は出汁まで食べられる料理にすることをおすすめします。 ただし、鉄やタンパク質をしっかり補給したい場合は殻がない水煮缶に頼ることも正解です。

美味しく味わうための「砂抜き」方法

アサリの砂抜き

あさりを調理して食べたことがある人ならご存じだと思いますが、あさりは貝の中に砂を含んでいることが多々あります。砂抜きする前のあさりをそのまま調理してしまうと、身を嚙んだ時に「ジャリッ」という音がして食欲が無くなってしまうことも。

スーパーによっては砂抜き済みのあさりを置いてあるところもありますが、「砂抜き済み」と書いていないあさりは料理の下ごしらえとして砂抜きを行うようにしましょう。

あさりの砂抜きの方法は簡単! 20度前後の塩水(塩分濃度3%ほど)を用意し、あさりを平らに入れて上から鍋の蓋をかぶせて暗くし、2〜3時間放置するだけです。暗い方が海の中だと思って砂をしっかり吐き出してくれます。猛暑の時には冷蔵庫に入れた方が良いですが、基本は常温に放置してOKですよ。砂抜きを終えたらボウルの塩水を真水に替えてあさりを入れ、貝をこすり合わせるようにして表面の汚れを取り除きます。 潮干狩りでとったあさりの場合は砂を含んでいる量が多いため、4~5時間ほど砂抜きすることをおすすめします。

購入後の保存方法

あさりは新鮮なうちでないと砂を吐き出してくれないため、購入後はすぐに砂抜きをしましょう。砂抜きをした後は水を切り、ビニール袋などに入れて冷蔵庫で2~3日は保存可能です。食べきれない場合、砂抜き後に水を切ったあさりを1食分ずつビニール袋やフリーザーバッグに入れて空気を抜き、冷凍すると良いですよ。冷凍したあさりは解凍せずにそのまま調理に使えます。冷凍あさりは2~3週間はおいしく食べられます。

北海道のあさりを食べよう!

七輪で北海道産アサリを焼く

北海道で獲れるあさりと本州産はほぼ同じですが、北海道のあさりの方が殻の模様が薄く、大きなサイズにまで成長するという特徴があります。味にそれほど違いはないのですが、プリップリの肉厚な身を食べた時の食感や旨味は格別ですよ。
漁期は十勝・釧路沖が9月から翌年の7月まで。根室では4月から7月と、9月から11月の2シーズンが設けられています。水揚げ量のトップを誇るのは、牡蠣で有名な厚岸町です。湖からの淡水と海水が混ざった厚岸湾は植物性プランクトンが豊富で、しっかり栄養を蓄えながら海水温が低い環境下でじっくり大きく育つのです。
あさり好きであれば一度北海道産の特大あさりを味わってみてください。

まとめ

あさりの産地や旬、栄養価とその働きのほか、調理のコツもお伝えしました。北海道産のあさりは本州産と比べると大きさが全然違います。旨味たっぷりで健康成分をたっぷり含むあさり。是非日ごろから食べてほしい食材です。

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