【しじみ】を食べよう!栄養素とその効能。二日酔いに効く理由や旨みがアップする冷凍方法についてご紹介

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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江戸時代の頃から安くて美味しい「しじみ」は、味噌汁に使われる二枚貝の代表格であり庶民の味方。古くから肝臓によいとされ、今では“二日酔いにはしじみが効く”というイメージも定着。実際に肝臓の機能を整えたりパワーアップさせるオルニチンを多く含むほか、ビタミンやミネラルも豊富です。今回は管理栄養士の筆者がしじみの栄養素とその働きについて詳しく解説。旨味の秘密や冷凍するメリットなどもご紹介します!

まずは【しじみ】について詳しく知ろう

ザルの上のしじみ貝

海水の濃度が強い場所では生息できない「しじみ」は、淡水・汽水域に生息する小型の二枚貝です。日本では縄文時代から食べられている歴史の古い食材で、しじみが肝臓に良い食材であるということは江戸時代から気付かれていたといわれています。
主に国内で食用とされているのは北海道から四国・九州にかけて生息する「ヤマトシジミ」、そして希少な存在である琵琶湖水系に生息する固有種の「セタシジミ」です。

漁獲量では島根県が一位!全国の約4割を占めています。2位から順に青森県、茨城県と続き北海道は第4位。道内の主な産地は網走湖、天塩(てしお)川や天塩町のパンケ沼、藻琴湖(もことこ)、石狩川です。
しじみは北海道でも1年中漁獲される貝ですが、漁期は網走湖で5~10月、天塩川で5~11月、藻琴湖では冬季など産地によって時期が異なります。

朝食,しじみの味噌汁とご飯と焼き鮭と卵焼き

庶民的な価格で美味しいしじみの代表的な料理は、手軽に作れる味噌汁や酒蒸し、佃煮や炊き込みご飯です。名産地である青森県の十三湖(じゅうさんこ)ではラーメンが名物になっていますね。加工品としてインスタント味噌汁やサプリメントにも使われるため、貝類の中では比較的身近な存在ではないでしょうか。
そんな日本人の食生活に欠かせないしじみですが、近年は国内の漁獲量が減少しており、ロシアや台湾からの輸入ものに頼っている状況です。

名前の由来

「しじみ」の語源は殻に同心円状に刻まれている輪のような筋が、まるで縮んでいるように見えたということから「ちぢみ」「ちじみ」「しじみ」と呼ばれるようになった説や、単純に小さい貝なので「縮み」と呼ばれて「しじみ」になったという説があります。

旬の時期

しじみは一年中食べられる貝ですが、「寒しじみ」と呼ばれる冬が美味しい季節です。また、「土用しじみ」と呼ばれることもあり、江戸時代には胃腸を整え夏バテ防止用にと夏の土用にしじみを食べる習慣がありました。土用しじみは「土用のうなぎ」が流行るよりも前から食べる風習があったと言われています。

「しじみの味噌汁」が二日酔いに効く理由

しじみのみそ汁と日本酒

しじみ料理といえば味噌汁を思い浮かべる人が多いと思いますが、しじみの味噌汁の中には二日酔いにピッタリの栄養素が豊富に含まれています。その理由を説明します。

「オルニチン」の存在

しじみには「オルニチン」という栄養素が多く含まれています。無数にある食材の中でも、オルニチン含有量はしじみがトップ!しじみ100ℊ(約35個分)の中にオルニチンは10~15㎎含まれています。
オルニチンはもともと人間の体内にもあるアミノ酸の一種です。オルニチンを摂取することで肝臓の中の解毒機能を担う「オルニチンサイクル」という経路を促進し、肝機能を高めてアルコールを分解してくれます。

他にも二日酔いに有効な栄養素が

しじみにはオルニチンの他にも二日酔いを解消する栄養素が含まれていますよ。肝機能を改善する栄養素はタンパク質タウリンビタミンB12が有名です。オルニチンだけでなく、様々な栄養素が肝臓をサポートしてアルコールを代謝し無毒化してくれます。

しじみを「みそ汁」で食べるからこその有効成分

オルニチンの他にも肝機能を高める栄養素を豊富に含むしじみ。二日酔いになったときにはしじみ料理なら何でも有効かと思いがちですが、みそ汁にすることでプラスアルファの利点もありますよ。
アルコールを飲むことで脱水症状になる場合があるため、みそ汁の水分と適度な塩分温かさがスムーズな水分補給につながります。また、調理することで流出しやすい栄養素も汁ごと飲むことで、栄養素を無駄なく摂取することができます。

ウコンと比べるとどう?

ウコン,ウコンの粉末

しじみで肝機能を高める食品や飲料と同じくらい「ウコン」を使った商品も存在します。しじみとウコン、いったいどちらの方が二日酔いに効くのか気になりますよね。

実は、ウコン自体の肝臓の働きをサポートするパワーはそれほど強くはなく、消化酵素の生成を刺激し、消化吸収をしやすくする働きを期待できます。ウコンに関する研究は数多く行われてきていますが、依然として健康に対する効果は明らかにされていません。 オルニチンは科学的にも働きが証明されていることから、二日酔いや悪酔い対策にはしじみの方が効果があると言えるでしょう。

【しじみ】の栄養成分とその効能を知ろう

シジミ,殻の開いた蜆

しじみ(生)は100gあたり64kcal、タンパク質7.5g、脂質1.4g、炭水化物は4.5g、食物繊維は0gです。カルシウムや鉄などのミネラルが豊富な食材です。
オルニチンについては先に述べたので、それ以外の栄養素について解説していきます。

◆カルシウム

しじみは可食部100ℊ中に240㎎カルシウムを含みます。これは牛乳(100ℊ中に110㎎)の約二倍!カルシウムが骨や歯の素になることは有名ですが、カルシウムは筋肉の収縮や心を落ち着かせるためにも働きます。 カルシウムは日本人に不足している栄養素の中の一つです。しじみの佃煮であれば毎日小さじ1ずつでも気軽に食べることができるため、カルシウム補給のために常備しておいても良いですね。

◆タウリン

しじみはあさり同様にタウリンを含んでいます。タウリンはアミノ酸の一種で、コレステロール値を正常値に近づけたり、肝機能を高めたり、高血圧の改善や動脈硬化の予防にも役立つ栄養素です。体内では肝臓や筋肉、脳、心臓などに分布する体にとって重要な栄養素です。

◆ビタミンB12

しじみはビタミンB12100gあたり68.4μg含みます。これはアサリよりも多い量で、食材の中でもトップクラスの含有量です。
ビタミンB12は赤血球を合成するのに必要な栄養素です。不足すると貧血や不眠や肩こり、腰痛などを伴う神経障害になりやすくなります。ただし、水に溶け出やすいため、しじみを調理する際は汁ごと食べられるような料理にすることをおすすめします。

◆鉄

しじみ100g中に8.3mgを含みます。これは牛の赤身肉の100ℊあたり2.2㎎~2.5㎎よりも多い数値で、アサリの二倍以上の含有量です。赤身のお肉で鉄を摂取しようとすると、たくさんの量を食べなくてはいけない上に、噛む回数が多くて後半は顎が疲れてしまうことも。しじみは小さくて食べやすく、鉄の補給がしやすいです。
鉄は正常な赤血球を作るのに必要なミネラルです。カルシウムと同じく、日本人には不足しがちな栄養素なので意識して摂取することが大切です。

栄養バランスに優れた「アミノ酸スコア100」の食材

たんぱく質を構成するアミノ酸は無数にあり、1つだけが秀でていても体内で有効に活用されないため、バランスが重要です。それを数値化したものが「アミノ酸スコア」で、この数字が100に近いほどアミノ酸のバランスが良いと言えます。 しじみは牛乳や卵、肉類と同じようにアミノ酸スコアが満点100の食材です。単品だけでも優秀なたんぱく源ですが、ほかの食材と一緒に食べることでよりバランスに優れた食事へと近づけることができますよ。

しじみは「旨味」がすごい!

シジミの味噌汁を両手で持つ

しじみには旨味成分であるアミノ酸が豊富に含まれています。その代表格が「コハク酸」です。コハク酸はあさりやハマグリなどの貝類に多い成分です。さらに、しじみにはコハク酸の他にグルタミン酸グリシンといった複数の旨味成分が含まれています。これらの成分が「旨味の相乗効果」を生み出し、料理をよりいっそう美味しくするのです。

冷凍しじみで旨味倍増!

しじみは冷凍させることで旨味が8倍以上になる食材です。定食屋や料亭でも、しじみの旨味をアップさせるためにあえて冷凍してから調理するところもあります。

自宅で冷凍しじみを作るコツをお伝えします。スーパーで買ったらまずは砂抜きをしましょう。新鮮なうちでないと砂を吐き出してくれないため、購入後すぐに行うことが必要です。砂抜きをした後は水を切り、1食分ずつビニール袋やフリーザーバッグに入れて空気を抜き、冷凍するだけで準備完了。冷凍したしじみは解凍せずにそのまま調理に使うことができます。冷凍で2~3週間はおいしく食べられます。

二日酔いに効いて、栄養素も豊富なしじみ。食べる際の注意点は?

ここまでで、しじみの持つ栄養素の素晴らしさが理解できたかと思いますが、旨い話には訳がある…こともあるため、食べる際の注意点はあるかどうかも調べてみました。

結論から言うと、健康な人であればしじみの味噌汁5杯分程度のしじみを毎日食べても心配ありません。ただし、肝機能に異常がある人や肝疾患を患っている人には、鉄の過剰摂取につながるほどの量には注意が必要です。肝機能疾患をお持ちの方は医師に鉄の摂取量を相談して、日ごろから意識するようにしましょう。

美味しく味わうための「砂抜き」のコツ

シジミの砂抜き

しじみを調理して食べたことがある人ならご存じだと思いますが、しじみは貝の中に砂を含んでいることが多々あります。砂抜きする前のしじみはそのまま調理すると嚙んだ時に「ジャリッ」と砂に当たることも。砂が入っていると、いくら健康に良いからと言っても食べたくなくなってしまいます。
スーパーによっては砂抜き済みのしじみを取り扱うお店もありますが、基本的に生しじみは砂抜きを行ってから調理するようにしましょう。

まず、バットやボウルに20℃前後の塩水(塩分濃度3%ほど)を用意します。塩水の中にしじみを平らに入れて3~5時間放置するだけです。平らにする理由は、しじみが吐き出した砂をほかのしじみが吸い込まないようにするためです。
猛暑の時には冷蔵庫に入れた方が良いですが、常温に放置でOKですよ。夏場は3時間冬場は5時間を目安にして砂抜きします。砂抜きを終えたらボウルの水を捨てて真水を入れ、貝をこすり合わせるようにして表面の汚れを取り除いてから調理に使います。

栄養を効果的に摂取するおすすめの食べ方

しじみの酒蒸し

しじみは加熱することで損失する栄養素はそれほど多くはありませんが、水溶性の栄養素を持つため、汁まで食べられるような料理にすることをおすすめします。味噌汁の他、酒蒸し、スンドゥブ、チャウダーにしてみてはいかがでしょうか。

ただし、貝殻が付いたままだと食べづらくて量を食べられないため、鉄やタンパク質をしっかり補給したい場合は水煮缶やつくだ煮などの加工品に頼ってみましょう。

また、しじみは冷凍することで旨味を増す食材です。しじみに含まれているコハク酸やオルニチンがうまみを感じさせるアミノ酸なのですが、これらは生の状態よりも冷凍してから調理することで約8倍のパワーを発揮します。冷凍のしじみは凍ったまま調理しましょう。

北海道のしじみを食べよう!

筆者の父は北海道のオホーツク海側にある網走市出身なのですが、網走やオホーツク海側の地方では貝が豊富に獲れることで有名です。網走のしじみは本州産のしじみよりも大きく、食べ応えがあり味もしっかりしています。網走での年間漁獲量は水産資源保護のために量が限られているため、なかなか購入することが難しいですが、見てびっくり・食べて満足いただける品ですよ!

まとめ

しじみの産地や栄養価、含まれる栄養素とその働き、栄養価を無駄にしない調理のコツをお伝えしました。北海道産のしじみは大きくて食べ応えもあり旨味たっぷり!冷凍保存もできる上に、そうすることでさらに美味しくなるメリットもありますよ。たくさん買って保存しておくと何かと便利で、二日酔いの際は強い味方になってくれる食材です。栄養バランスが優れていますので、ぜひたくさん食べましょう!

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