【鹿肉】を食べよう!栄養と効能。高タンパク・低脂質・低カロリーな食材の魅力とおすすめの食べ方

北海道食材の豆知識
Misato Watanabe

Misato Watanabe

調剤薬局で事務兼管理栄養士として従事していました。その後お菓子メーカーに勤め、現在は苫小牧市で1歳児子育て奮闘しながら、鮮魚店で日々新鮮な魚をお客様にお届けしています!

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ヨーロッパでは高級食材として知られる「鹿肉」。日本では牛・豚・鷄肉に比べて流通量が少なく、馴染みの薄い食材ですが、低脂肪・低カロリーで鉄分も豊富に含む食材として注目されています。今回は管理栄養士の筆者が栄養とその効能について詳しく解説。北海道に生息するエゾ鹿の魅力についてもたっぷりご紹介します。

【鹿肉】の栄養成分とその効能について

生の鹿肉

鹿肉は高タンパク・低カロリー・低脂質なヘルシー食材です。女性や高齢者に必要なタンパク質、鉄分、ビタミン群を多く含んでいることから、美味しく味わうだけでなくダイエット食や介護食としての利用も期待されています。
栄養価は鹿肉100gあたり147kcal、タンパク質22.6g、脂質5.2g、炭水化物0.5g、食物繊維は0gです。鹿には健康やボディメイクにピッタリの栄養素が多く含まれています。 鹿肉の栄養成分について詳しくお伝えします。

◆タンパク質

鹿肉100gあたりタンパク質は22.6g。鶏むね肉24.4g、豚ヒレ肉22.8gに次ぐ高タンパクな食材です。タンパク質は三大栄養素の一つで、通常筋肉や内臓・骨・皮膚・髪・血液をはじめ、ホルモンや酵素・免疫物質などの材料となります。不足すると筋肉量や免疫力の低下が起こります。

◆アセチルカルニチン

鹿肉に含まれる栄養素の中で注目される栄養素がアセチルカルニチンです。アミノ酸の一種で、脳機能向上や疲労、ストレス軽減などの効果があると報告されている成分です。加齢により体内で合成量が減少するため、食事からの摂取が望ましいと言われています。青魚のDHAに似た働きのあるアセチルカルニチンですが、鹿肉には牛肉のおよそ2倍も含まれています。

◆鉄分ヘム鉄

鹿肉は鉄を100g中に3.4mg含みます。これはレバーの9.0mg〜13.0mgに次ぐ多い数値です。鉄は正常な赤血球を作るのに必要なミネラルです。不足すると貧血を起こして、めまいや立ちくらみなど疲れやすくなります。 鉄には2種類あり、赤身の肉・貝類・小魚などに多く含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品や乳製品・卵に多く含まれる「非ヘム鉄」に分けられます。その違いは吸収力で、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べ吸収力が約5倍も高いのが特徴です。

◆ビタミンB2とB6

鹿肉100g中にビタミンB2は0.32mgビタミンB6は0.55mgです。ビタミンB2は脂肪の代謝を促し、効率よくエネルギーにかえる働きがあり、また皮膚や粘膜の健康維持にも役立っています。ビタミンB6はタンパク質の代謝を高め、筋肉や血液などをつくるときのサポートをしてくれます。

このように鹿肉にはビタミンB群がバランスよく含まれているため、摂取した栄養素がスムーズに代謝し、エネルギーに変換され脂肪の蓄積を防ぐことができます。鹿肉がダイエットの強い味方と言われるのは、上記で述べたアセチルカルニチンに加えてビタミンB群も大きな効果を発揮しているからなのですね。

【鹿肉】を食べる際の注意点

ミディアムレアの鹿肉ステーキ

生または加熱不十分な鹿肉を食べると、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌や寄生虫による食中毒のリスクがあります。食肉全般に言えますが、鹿肉を食べる際は十分な加熱処理(中心部の温度が75℃1分間以上)を行いましょう。

【鹿肉】は獣臭がするって本当?

香草たっぷりの鹿肉の燻製

鹿肉をはじめとするジビエ料理は、獣臭があり、硬いというイメージが先行することも多いのではないでしょうか。「獣臭が残るか残らないか」は猟師が鹿を捕獲し、現地でとどめを刺し、血抜きする行程をいかにスムーズに行えるかにかかっています。素早く適切な処理を施された鹿肉は牛肉と変わらないほどの風味になり、とても美味しく頂けますよ。ヨーロッパでは高級食材として利用されています。ただし、ほとんどの方は自分で猟をするわけではないので、購入する際は血抜きを確認し、美味しいかどうかをある程度は見極めましょう。家で調理する際は、他の肉と同様に水や牛乳、ヨーグルト、麹などで漬けおくと臭みを抜くことができます。
近年は養鹿(ようろく)された鹿肉の流通も増えており、新鮮で臭みのないものを味わうことができます。

【鹿肉】の栄養価を効果的に摂取するおすすめの食べ方

鹿肉の煮込み料理,鹿肉シチュー

鹿肉の栄養素をまるごと摂取するには煮込み料理がおすすめです。ビタミンB群は水溶性のため、煮込むことで栄養を逃すことなく食べられます。シチューやトマト煮込みにすると臭みも気にならず、じっくり煮込むことで柔らかい鹿肉を味わうことができます。また、アヒージョにすると焼いて食べるより柔らかく食べられ、見た目もオシャレです。食べやすさで言えば、鹿肉のミンチもおすすめです。ハンバーグやミートソース、餃子など普段の挽肉料理を鹿肉に置き換え、いつもと変わった味や風味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

食材としての【鹿】について

野生のニホンジカ

日本に生息する鹿はすべて「ニホンジカ」であり、古来から住み続けてきた在来種です。北極圏周辺に生息する「トナカイ」、そしてヨーロッパ・北アフリカに生息する「アカシカ」と並んで家畜化が進んでいる種類です。
ニホンジカは中国・韓国・台湾にも分布しており、食用というよりは牡の幼角を使った漢方薬の鹿茸(ろくじょう)の原料として重宝されてきました。

北の寒冷地方に住むものほど体型が大きくなり(ベルクマンの法則)、ニホンジカの中では北海道に生息する「エゾシカ」が体重120〜140kgと最も大きく、東北・関東・近畿に住む体重100kgほどの「ホンシュウジカ」、四国・九州に住む体重60kgほどの「キュウシュウシカ」、屋久島に分布する「ヤクシカ」は体重35kgほどと南に行くほどサイズは小さくなります。

北海道に生息する【エゾシカ(蝦夷鹿)】について詳しく知ろう

北海道のエゾ鹿

先ほど言及した通り、日本にいるシカは全てニホンジカです。ニホンジカには亜種が7種あり、エゾシカ(蝦夷鹿)もそのうちの一つです。「エゾ(蝦夷)」は北海道のことを意味します。

北海道で【エゾ鹿】はどんな存在?

「エゾシカ」は本州以南に住むニホンジカよりも体が大きく、最大で体長190cm、体重150kgに達します。明治初期の大雪と乱獲により、一時は絶滅寸前にまで生息数が減少しましたが、現在はエゾシカの持つ高い繁殖力と生育環境の変化により、生息数は約45万頭と推測され、急速に生息数を増やしています。その数が増えるに従い、農作物の被害や車・列車との衝突事故の増加などの人間社会への影響や、強度の採食・踏みつけによる生態系への影響が昨今の問題となっています。

狩猟と養鹿

現在の日本では養鹿(ようろく)は一部でしか行われておらず、エゾ鹿肉の供給のほとんどが狩猟や駆除による野生のものです。食肉として流通するものは、銃器による捕獲後、食品衛生法による認可を受けた食肉処理施設で解体します。農林水産省の調査(2016年度)では、ジビエの食用販売の種類別でエゾ鹿肉が全国トップとなっています。

北海道の【エゾ鹿肉】を食べよう!

エゾ鹿肉の有効利用に向けた取組みが、北海道庁や民間のさまざまな団体で取り組まれています。本格的な流通に向けた課題も多く、安定供給体制の確立、さらに衛生管理、需要確保などが克服できれば、北海道の新規産業の一つになる大きな可能性を秘めたエゾ鹿肉。

最近では通販で手軽に生肉を購入できたり、他の食肉同様、ジャーキーやソーセージにハンバーグ、ジンギスカンや缶詰などの加工食品も多くあります。栄養豊富なエゾ鹿肉を食べて、北海道を盛り上げていきましょう。

まとめ

鹿肉に含まれる栄養価とその働き、おすすめの食べ方、北海道に生息するエゾシカについてお伝えしました。鹿肉はしっかり処理をすれば美味しく、普段の食生活に不足しがちな栄養素がバランス良く含まれた食材でもあります。なにより脂肪分が少ないヘルシーミートです。いつものお肉とは違った風味や食感を楽しむことができますので、ぜひ日々の食事に取り入れてみてくださいね。

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