【そば】を食べよう!栄養と効能、そば湯を飲むメリットやルチン豊富な韃靼蕎麦、相性の良い食べ合わせまで詳しく紹介

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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寿司や天ぷらと並んで日本を代表する伝統料理の「そば」。その栽培は5世紀頃には始まっており、江戸時代には蕎麦粉を練って餅状にした「そばがき」から現在のような「そば切り」が主流に。日本人には欠かせない麺料理として、年越しそばやファストフードとして親しまれています。近年ではその栄養面に注目が集まり、高タンパクで低カロリーな食品としてダイエットや健康を気にする人におすすめの食材に。今回はそんな「そば」について、管理栄養士の筆者が栄養素とその働きを詳しく解説。品種や食べ合わせるトッピングについての豆知識もご紹介します。

【蕎麦(そば)】とは?

そばの実とそばの麺

そばはタデ科の1年草で、普通種ダッタン種に分かれます。私たちが一般的に食べているは普通種です。普通種が他家受精(異なる株の間での受粉。遺伝的多様性にメリットがある)なのに対し、ダッタン種は自家受精(同株内での受粉)という違いがあります。

そばの原産地は中国南部の雲南省あたりと言われています。確実に日本に伝来してきたのは5世紀ごろ。当時は救荒作物(ほかの作物が不作でも食料として確保できる作物)として育てられていましたが、江戸時代からは雑穀として育てられるようになりました。北海道では開拓以前から栽培されていましたが、本格的な栽培は開拓使が荒れ地に強いそばの栽培を推奨したことに始まります。

【蕎麦(そば)】にも品種がある

一言に「そば」と言っても、おコメの銘柄と同じように様々な品種が存在します。古くから作られている品種もあれば、美味しくてたくさん収穫できるように改良して栽培されている品種も。ここではごく一部ではありますが、国内最大の生産地である北海道のメジャーな品種を紹介します。

①キタワセソバ

道内生産の大半を占める主流品種です。「極早生(ごくわせ)品種」という夏に収穫ができる蕎麦で、良質多収の優良品種。果実が大きく、食味も良いのが特徴。
※一般的な蕎麦の収穫時期は秋(10月〜11月)。

②牡丹そば(ぼたんそば)

キタワセソバの親品種。こちらも極早生品種で果実が大きい。1926年から作られ続けている古い品種です。

③キタノマシユウ

北海道弟子屈(てしかが)町摩周湖周辺で生まれた極早生品種。キタワセソバから選抜されているため、キタワセソバよりも歩留まりが良く育てやすい。

④ほろみのり

北海道最大の蕎麦の産地である幌加内町の独自品種。収穫時期がかなり早いが甘みが強く、クセがなく上品。

⑤韃靼(ダッタン)そば

韃靼そばの実

韃靼そばはポリフェノールの一種である「ルチン」の含有量が極めて高く、普通のそばの100倍も含まれているとして近年注目度が増しています。古くからの品種は苦みが強く美味しくないという弱点がありましたが、北海道では苦みを抑えた新品種が開発・栽培されています。

韃靼そばの品種としては「北海T8号」や「満天きらり」が有名で、そば以外にもパスタやパン、お菓子にも使われています。 ルチンは血圧降下薬としても利用されており、韃靼そばの粉には100ℊ中に1500㎎ものルチンを含んでいます。ルチンには血管を強くする作用や抗酸化作用、鎮痛作用、血圧を下げる働きなどがあり、韃靼そばの健康効果が期待されています。

【蕎麦(そば)】の栄養成分とその働きについて

そばの実,そば粉,生蕎麦

そばの実は中心が軟らかく、外側が硬くなっています。そばを粉にする際、実の中心の白い部分が先に粉になるため、白いそば粉を「一番粉」と呼び、一番粉だけで打ったそばを「更科そば」と呼びます。甘皮を含めた全ての部分を挽いたそば粉を使った色の濃いそばが「田舎そば」です。

そば粉の種類によっても栄養価が変わりますが、今回お伝えする栄養価は田舎そば用のそば粉(表層部)のものです。

そば粉(表層部)100ℊあたり358kcal、タンパク質は15ℊ、脂質は3.6ℊ、炭水化物は65.1ℊ、食物繊維を7.1ℊ、糖質は58ℊ含みます。 そばを構成する栄養成分の特徴やその働きをお伝えします。

◆タンパク質

そば粉には12~13%の「タンパク質」が含まれています。白米は6~8%、小麦粉は8~10%とほかの穀類と比較すると高タンパクな食品です。 タンパク質は身体の組織を構成する重要な栄養素です。筋トレをしてもタンパク質が不足していると逆に筋肉がエネルギーとして消費されてしまうことから、主食からもタンパク質を摂取したい人にはそばがおすすめです。

◆ビタミンB群

そばは「ビタミンB群」を豊富に含みます。特に多く含まれているビタミンB1は疲労回復、糖質の代謝に使われる栄養です。そば粉(表層部)100ℊ中に0.5㎎のビタミンB1が含まれています。ビタミンB6も100ℊあたり0.76ℊと多く含まれています。ビタミンB6はタンパク質の代謝にかかわる栄養素です。皮膚や粘膜の健康維持も助けてくれますよ。

ただし、ビタミンB群は水溶性ビタミンで水に溶けやすい性質を持つため、茹でると含有量がぐんと減ってしまいますビタミンB群を多く摂取したい場合はそば粉を使ったお菓子やそばの実を入れた雑炊などがおすすめです。そばを茹でた後のお湯にもビタミンが溶け込んでいるため、お蕎麦屋さんのどろっとしたそば湯は栄養価が高いですよ。

◆アンギオテンシン変換酵素阻害物質

そばには「アンギオテンシン変換酵素阻害物質」が含まれています。アンギオテンシンは血圧を上げる働きを持つ酵素のことなのですが、この阻害物質で血圧上昇を阻害するのです。そばの子実中心部に多く含まれ、穀類の中ではそばがこの阻害物質を一番多く含んでいます

◆ルチン

そばに含まれている機能性成分の中でも「ルチン」が注目されています。ルチンはポリフェノールの一種で、血管を強くする作用や抗酸化作用、鎮痛作用、血圧を下げる働きなどをもつ栄養素です。 先述しましたが、一般的に食べるそばよりも「韃靼そば」の方が100倍ものルチンを含みます。ルチンの働きを期待するのであれば韃靼そばを選びましょう。

健康食品やダイエット向け食品として人気の理由

そばは、タンパク質の栄養価の高さを表す「アミノ酸スコア」が81と穀物の中でも最も高い食品です(100が満点)。また、デンプンの含有率がほかの穀物よりも少なく、消化性も劣ることからカロリーが低く血糖値が上がりにくい主食と言えます。 とくに韃靼そばにはルチンが多く含まれています。ルチンは血圧降下薬としても利用されており、100ℊ中に1500㎎ものルチンを含んでいます。

グルテンフリー食品として注目の「十割そば」

十割そば,ざる蕎麦

「十割そば」とはつなぎを使わずそば粉100%で打ったそばです。更科そばも、田舎そばも、そば粉が100%で作られていれば十割そばです。

十割そばの他には小麦粉をつなぎ(他にも卵・自然薯・山ごぼう・ふのり等)とした、「二八そば」や「九一そば」などもあります。
二八そばのつるりとした喉越しのよさや食感は誰もが美味しいと認めるところですが、「十割そば」は混じりけのない純粋な味わいを楽しむことができます。栄養価が高い上、そば粉にはグルテンが含まれていないことから、十割そばはダイエットや健康志向の人にも好まれています。

美味しいそばとは、そばの味や香りがしっかりあり濃厚に感じること、のど越しが良く歯触りが良いこと、噛んでいる時に口の中でそばの香りが感じられること。十割そばはのびるのが早いため、提供されたらすぐに味わうようにしましょう。

栄養素を効果的に摂取するには「そば湯」も飲もう

そば湯,蕎麦を茹でる

そばに含まれている栄養素の紹介の際にも伝えましたが、そば粉には水に溶けてしまう栄養素が多く含まれています。そばは打った後、茹でなければ食べられません。必ずお湯で茹でるため、お湯に栄養素が出て行ってしまうのです。

昔の人はこのことを知っていてか、そばを茹でた後のお湯「そば湯」を飲む習慣がありました。十割そばのお店のドロッとしたそば湯ほど栄養価が高いですよ。もちろん自宅で十割そばを茹でた後のお湯もおすすめです。

【蕎麦(そば)】と相性の良い組み合わせ

そばを食べる際、めんつゆの他にも薬味や具材を組み合わせることが多いと思います。美味しいだけでなく、栄養価や食べ合わせの面でもおすすめの食材があるので紹介します。

①ネギ

ざる蕎麦とネギ

ネギには辛み成分であるアリシンが多く含まれています。アリシンはそばに多く含まれるビタミンB1の吸収率を高める働きがあるため、相性は抜群です!

②卵

月見そば

卵は完全栄養食品ともいわれるほど栄養価が高い食品です。そばに不足するタンパク質やビタミン、ミネラルを卵で補填することができます。「月見そば」として生卵をのせても良し、温かいそばに卵を入れて軽く火を通しても良いです。

③天ぷら(かき揚げ)

天ぷら蕎麦,海老天そば

「天ぷらそば」も王道ですね。その美味しさの相乗効果は誰もが認めるところであり、海老天や野菜天などそれぞれの素材の栄養もプラスで摂取できます。 揚げ玉が乗った「たぬきそば」は北海道でも人気です!筆者は冷やしたぬきそばが大好きです。

④油あげ

きつねそば,油揚げが入った蕎麦

甘じょっぱく味付けされた油揚げが乗った「きつねそば」も、メニューとしては欠かせない存在です。油揚げは大豆で作られた豆腐のような生地を油で揚げたもの。タンパク質と脂質が豊富な食材です。

⑤大根おろし

おろしそば

ざるそばに辛めの大根おろしを添えた「おろしそば」も美味しいですよ。おろしそばは福井県の郷土料理「越前おろしそば」が有名です。
めんつゆに大根おろしを入れる食べ方の他、そばに乗せてめんつゆに入れないようにして食べたり、めんつゆに大根おろしの汁を入れる食べ方など様々あります。 大根おろしには消化酵素が多く含まれているため、そばの消化をより早くしてくれます。「おろしそば」は飲んだシメにもピッタリです。

⑥山菜・きのこ

山菜そば,きのこそば

春は「山菜」、秋は「きのこ」が美味しい季節ですね。そばに合わせる具材で季節も楽しむことができます。山菜にもきのこにも食物繊維がたっぷり!山菜特有のえぐみや苦みには、体の毒素を排出する働きもありますよ。

⑦納豆

納豆そば

「納豆そば」は手ごろでありながらボリューミーなのでお腹がすいたときに重宝します。納豆はタンパク質が豊富でビタミンKも多く含みます。ビタミンKはけがをしたときに止血を助けるビタミンです。また、カルシウムの骨への定着を助ける働きも持ちます。
そばにはビタミンKが含まれていないため、良い組み合わせと言えます。ビタミンKは粒の納豆よりもひきわり納豆の方に多く含まれているので、その補給を目的にする際はひきわり納豆を食べることをおすすめします。

⑧カレー

カレー南蛮そば

蕎麦屋さんのメニューによくある「カレー南蛮」。南蛮とは長ネギを表す言葉です。カレー味のそばだしに長ネギやニンジン、肉が入ったそばが「カレー南蛮」と呼ばれています。
スパイスの香りで食欲がアップし、適度なとろみで温かさが継続。冬に食べたいそばメニューのひとつですね。

北海道の【蕎麦(そば)】を食べよう!

北海道幌加内町のそば畑

北海道はそばの大産地!全国の作付面積の4割以上を占めもちろん全国収穫量の第一位。第二位の福島県は全国収穫量の10%あまりと北海道は断トツです。北海道産のそばは6月頃に種をまき、9月頃に収穫。日本の他の産地に比べて早めに収穫期を迎えるため、9月頃に並ぶ「新そば」は北海道産であることが多いです。秋の新そばが喜ばれる理由としては、そばの風味の強さにあります。

北海道では水田転換作物として利用されていることが多く、大規模で効率的にそばを作ることができるため、値段も本州産よりも抑えることができます。上川地方や空知管内で多く作付けされているほか、十勝や網走地方の畑でも大規模に作付けされています。その中でもトップ産地は幌加内町!次に深川市、音威子府村が続きます。

まとめ

美味しさの点では通常の「十割そば」がおすすめですが、栄養価や健康成分の含有量を考えると「韃靼そば」の方が断然おすすめだということが分かりましたね。 北海道には「ニシンそば」という郷土料理があります。ニシンを干したものを水戻しして甘露煮にしたものを温かいそばの上にのせて食べるのですが、甘辛いニシンはそばとの相性が抜群!是非味わっていただきたい伝統の味です。

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