【いくらの醤油漬け】を徹底解説!おいしく作って味わうための11ポイント。筋子の選び方からアニサキス予防まで

郷土料理
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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秋の味覚の代表格と言えば『いくら。北海道では秋鮭の漁が始まる9月から新鮮な生の筋子がスーパーに並びます。今回はおいしい「いくらの醤油漬け」の作り方について、道産子の料理研究家で管理栄養士の筆者が徹底解説。筋子の選び方から失敗しないほぐし方、味付けや保存方法にアニサキスの予防法、思った通りに作れなかったときの対処方法についても詳しく紹介します。

いくらの醤油漬けとは

いくらの醤油漬けとご飯

お寿司屋さんに行くと一年中食べることのできる「いくら」。このことから、いつでも鮭の卵がとれると思いがちですが、スーパー等で生の筋子を入手できるのは9月~11月ごろまでです。 いくらとは秋鮭(シロサケ)の卵を指します。鮭の卵はお腹の中にある時には「卵巣膜」という膜に包まれており、その状態を「筋子」と呼びます。筋子を金網などでバラバラにした状態のものを「いくら」と呼び、出汁醤油などに漬けることで「いくらの醤油漬け」をはじめとした味の付いたいくらが出来上がります。

自宅でおいしい「いくらの醤油漬け」を作るための11ポイント

生の筋子がスーパーによく並ぶ北海道のような地域において、「いくらの醤油漬け」はおふくろの味!各家庭でそれぞれに味付けしたものを瓶詰めにして保存しています。
今回は、初心者の方でも美味しく作れるように、11のポイントに分けて詳しくご紹介。ポイントさえ押さえてしまえば、難しい工程はないのでとても簡単ですよ。お店で食べたり買ったりするのが当たり前だった今までから、新たな挑戦をしてみてはいかがでしょうか。
作りたてのいくらは本当におすすめです。

1.作る時期は?

北海道の漁港で獲れたての秋鮭

まずは筋子が手に入る時期を知りましょう。いくらは漁期の最初から中間が美味しいとされています。漁期のごく初め頃のいくらは若干小粒で皮が柔らかすぎてしまうことがあり、漁期の後半になると卵の膜が硬くなってしまい食感が悪くなってしまいます。 9月の頭ごろからイクラは手に入り始めますが、9月中旬から10月中旬までのもので作ることをおすすめします。

2.新鮮な筋子を選ぶ

新鮮な秋鮭の筋子,生のいくら

新鮮な筋子を選ぶことが「いくらの醤油漬け」づくりの最大のポイントです。

筋子をしっかり見て、卵が溶けたり割れたりしていないかをしっかり確認しましょう。卵が少し黒ずんでいるいくらは鮮度が落ちてしまっています。食べると苦いため、要注意。ほぐしたいくらの中に黒い粒があれば取り除きましょう。 また、購入したいくらはその日のうちに醤油漬けにすることもポイントです。

3.筋子のほぐし方のコツ

筋子を40℃のお湯でほぐす,いくらの醤油漬けの作り方

焼き網を使っていくらをほぐす方法もありますが、そのためだけに網を買うのであれば道具が必要ない方法で行いましょう。

40℃前後(人肌程度)のぬるま湯に塩を入れ、食塩濃度5%の塩水を作ります。何度か食塩水を入れ替えるため、多めに作っておくと効率が良いです。

ぬるま湯食塩水の中に筋子を入れて筋子の膜をやさしく破り、指の腹を使って卵をつぶさないようにほぐしていきます。いくらがパラパラとほぐれたら、浮いてきた薄皮やごみを取り除いてザルに上げます。

再びボウルに戻してぬるま湯食塩水を注ぎ、やさしくかき混ぜながら薄皮やつぶれたいくらの白い幕を取り除き、2~3回繰り返したらザルにあげたまま5分放置して水切りをします。これで準備はOK!

いくらにはアニサキスが付着していることがあります。アニサキスは海産物についていることが多い寄生虫の一種で、生きたまま胃に到達すると胃壁を噛み、痛みを感じる上に病院にかからなければならないやっかいな寄生虫です。
このように、丁寧に下処理するとアニサキスも取り除くことができますよ。それでも心配な場合は2日間冷凍庫に入れてから冷蔵庫で解凍したものを食べると安心です(アニサキスは冷凍すると死ぬため)。

4.いくらを温水に入れると白くなった!?どうして??

お湯でほぐして白くなったイクラ

いくらを温水でほぐしていたら真っ白になってしまうことがあります。「茹で上がってしまったのでは!?」と慌て驚いてしまう人も居て、諦めて捨ててしまったという人も…。

高級な生いくら、下処理でダメになってしまったら大ショックですよね。

このコラムを読んだあなたはラッキー!いくらが白くなってしまっても安心してください。白くなる理由は、表面についているたんぱく質や油分がお湯と反応して変性したから。中身や皮自体はまだ無事です。お湯に含まれている塩が少ないと白くなりやすいため、お湯にはしっかり塩を溶かして使いましょう(塩分濃度は1%で十分)。

白くなってしまったいくらは味付けすると調味液に含まれている塩分で元に戻るため、白くなっても素早くそのまま工程を続行してくださいね。

ただし、あからさまに高い温度(60℃など)でほぐすと茹で上がって元に戻らなくなってしまうため、塩水の温度には気を付けましょう。

5.味付けのポイント

いくらを濃口醤油に漬けて味付けする,いくらの醤油漬け

卵がほぐれたら味付けです。まず、いくらの醤油漬けは濃口醤油を使用するか薄口醤油を使用するかで仕上がりの色が変わります。濃口醤油はルビーのような深い赤色に染めますが、白醤油は素材の色をそのままに、明るいオレンジ色に仕上げてくれます。

味付けに使う調味液はしょうゆ、味醂、酒を使用することが多く、アルコールを飛ばすために軽く煮立ててから冷ましておくことが重要です。冷ます時間を加味して、いくらをほぐす前に調味液を準備するようにしましょう。

いくら300~350gに対して醤油を50ml、酒と味醂を20mlずつ、水を大さじ1合わせて煮立てるとちょうど良いです。薄口醤油は濃口よりも塩分が高いため、若干少なめに入れましょう。

「煮立たせるのが手間だなぁ」と思う人には麺つゆや白だしを使った味付けをおすすめします。市販品をいくらに注ぐだけなので味付けは超簡単!3倍~5倍濃縮の商品を選び、保存容器や密閉袋に入れたいくらがひたひたになるか若干少ないくらいの量を入れるだけ。少しかき混ぜてから半日ほど漬ければ完成です。筆者は北海道でメジャーなめんつゆ「めんみ」の5倍濃縮を使うことも多々あります。こちらも半日から1日漬け込むだけで味が付き、完成です。

6.味付けのアレンジ

いくらの味噌漬け

味付けのアレンジは醬油の代わりにを使ったスッキリとしたもの、みそを加えたねっとり濃厚な舌触りのもの、塩麴醤油麹で漬けたまろやかな風味が楽しめるものなど意外とたくさんの味付け方法があります。

「味噌漬け」の場合はいくら300~350ℊに対して味噌50ℊ、酒と味醂を大さじ1ずつ、醤油を小さじ1合わせたものを混ぜ合わせて漬けダレを作ります。その後はキッチンペーパーにいくらを包んで上下にタレを塗って挟むだけ。塩麴や醤油麹で漬ける場合はいくらと調味料を1:1の量で合わせます。

醤油以外の調味料で漬けても、美味しく楽しめますよ。

7.保存方法

いくらの醤油漬けをスプーンですくう

いくらは漬け込んでから冷蔵で保存し1週間で食べきるようにしましょう。清潔なスプーンで取り分けることを忘れずに。

フリーザーバックや瓶に入れたものを冷凍すると1か月以上保存可能です。食べる2日前に冷蔵庫に移動させてじっくり解凍させてください。小さめの瓶に入れて小分けに冷凍しておくと長く楽しめますよ。

8.アニサキスに注意

先ほど述べたように、筋子にはアニサキスが付いていることがあります。すべての筋子についているわけではないのですが、しっかり目視しながらアニサキスを発見したら箸などで取り除くようにしましょう。アニサキスが心配な場合は醤油漬けした後に2日間冷凍庫へ。しっかり冷凍してから冷蔵庫に移し、解凍したものを食べると安心です。 妊婦の場合、生のいくらにはアニサキスや食中毒菌が付着している場合があるため、避けた方がリスク回避となります。

9.美味しい食べ方いろいろ

サーモンいくら丼

「いくらの醤油漬け」はご飯にかけて食べる以外にも美味しい食べ方があります。

焼き鮭と一緒にどんぶりにした「腹子飯」や、サーモンと合わせた「親子丼」がおすすめ!ほかにも、冷製茶わん蒸しや卵豆腐の上にトッピングしたり、肉寿司や大根おろしの上にトッピングなどもおすすめです。

味噌漬けや塩麴漬けも同様にアレンジできますが、酒の肴にチビチビ食べると最高です。

10.しょっぱくなってしまったときは

いくらの乗ったちらし寿司

「いくらの醤油漬け」が何かの手違いでしょっぱくなってしまったときには、ちらし寿司のトッピングや大根おろしとの和え物にするなど、調味料兼食材として使ってみるのもアリです。少しもったいなく感じるかもしれませんが、鍋物の彩として盛り付け時に乗せるのも手ではあります。

11.食感が思っていたものと違うときは

いくらはゴムのように硬かったり、ぐにゃぐにゃした食感になることがあります

硬いいくらは「ピンポンいくら」とも言われており、まさにピンポン玉のように弾みそうなくらいの弾力があります。ピンポンいくらになってしまう原因としては、鮭の卵の月齢がたちすぎていることが挙げられます。11月頃の鮭の卵は皮が硬くなってしまうのです。

ぐにゃぐにゃしたいくらはもしかすると、ほぐすときの温度が高かったからかもしれません。硬くなってしまうと元に戻らないため、ほぐす際の温度は適温(40℃前後)を守りましょう

いくらの栄養素について

スプーンに乗ったイクラの醤油漬け

ここまでで「いくらの醤油漬け」を作るポイントを紹介しました。最後にいくらに含まれる栄養素について解説しますね。

いくらはキラキラした赤い見た目から高級感がある宝石のような食べ物です。卵ということでカロリーが高いように思いがちですが、いくら100g当たりの栄養価はエネルギー272kcal、タンパク質32.6g、脂質15.6g、炭水化物0.9g、食物繊維は0gです。脂質こそ若干高く感じますが、糖質が少なめでタンパク質が多い食品だということが分かりますね。1食あたり30~40ℊ程食べると考えるとカロリーはそれほど高くないですね。食塩相当量は2.3gということで食べ過ぎはむくみや高血圧症などにつながるので注意が必要です。

いくらは確かに脂質が多い魚卵ですが、その脂質には不飽和脂肪酸であるDHA・EPAが豊富に含まれています。DHA・EPAは共に生活習慣病の予防や改善に役立つ脂質です。

他にもいくら100g中には94㎎のカルシウム、44μのビタミンD、9.1㎎のビタミンEが含まれており、栄養価がとても高い!

しかも、いくらの鮮やかな赤色に秘められているアスタキサンチンという強力な抗酸化成分が含まれています。アスタキサンチンはビタミンEの何千倍ともいわれる抗酸化作用を持つため、アンチエイジングや血管の健康を保つ成分としてサプリメントとしても注目されています。

自家製の「いくらの醤油漬け」を作ろう!

いくらの醤油漬けを作る際のポイント11個と、いくらに含まれる栄養素についてお伝えしました。お店で食べると高級ないくらですが、自分で漬けると半額以下で自分好みの醤油漬けを楽しむことができます。

食欲の秋、生の筋子が手に入りそうだったら自宅で漬けてみませんか?

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