漬物、酢の物、サラダ、カッパ巻きなど様々な料理で活用される「きゅうり」。栄養のない野菜というイメージが強いですが、そのみずみずしさと歯切れのよさから多くの人に好まれており、日本人は世界で最もきゅうりを消費している国として知られています。今回は管理栄養士の筆者が、意外とバランスよく含まれている栄養素とその効能について詳しく解説。美味しく食べるためのちょっとしたコツ、選び方や保存方法についても紹介します。
目次
【きゅうり】について詳しく知ろう
きゅうりはサラダや漬物など、常備野菜としてご家庭でストックされてる方も多いのではないでしょうか。普段の食生活で身近なきゅうりの生態や旬の時期、産地、種類について学んでいきましょう。
【きゅうり】とは?
きゅうりの植物学的分類は「ウリ科キュウリ属」です。原産地はインド西北部のヒマラヤで、日本には中国を経て平安時代に華南型きゅうり(黒イボタイプ)が、明治になってからは華北型きゅうり(白イボタイプ)が伝来しました。現在、日本で栽培されている品種の多くは、これらを交雑したものです。黒イボタイプは皮が厚く緑が濃く、白イボタイプは皮が薄く歯切れがよいのが特徴で、日本では白イボタイプが主流です。 きゅうりは土壌の適応性が高い野菜ですが、日照時間が不足すると生育が悪くなり、曲がり果が発生します。時々バラエティ番組などで見られる変わったきゅうりの形は、ほとんどが日照不足が原因とされています。家庭用としてはそのまま食べても全く問題はありませんが、対策をする場合は追肥や水やりを徹底し、茂りすぎた葉を落とすことでまっすぐなきゅうりに改善されますよ。
栄養がないって本当?
「きゅうりに栄養はない」と良く聞きますが、これは誤った認識です。正しくは「カロリーが最も少ない果実」としてギネスブックに掲載されています。きゅうりのカロリーは100g中14kcalと低カロリーで、95%以上が水分でできているため、このことから「カロリーが最も少ない」から「栄養がない野菜」として誤った認識が広まったといわれています。反対に「最も栄養価がが高い果実」としてギネスに掲載されているのはアボカドです。きゅうりが100gあたり14kcalに対し、アボカドは1個あたり約230kcalとハイカロリーです。
旬の時期や主な産地
きゅうりの旬の時期は夏です。6月〜9月が美味しく、全国的にたくさん収穫できる時期となります。主な産地は宮崎県、群馬県、埼玉県、福島県で、全国で55万300tの収穫量があります。漬物やサラダ用の食材として、年間の消費量は全野菜中トマトに次ぐ第2位と、身近な食材である事が分かりますね。
【きゅうり】の栄養成分とその効能について
きゅうりは100gあたり14kcal、タンパク質1g、脂質0.1g、炭水化物は3g、食物繊維は1.1gです。先述したように水分が95%と野菜の中でも多く、体を冷やす効果があり夏バテ防止にぴったり。また、カリウムやビタミンCなどがバランスよく含まれ、ダイエットにも適した食材です。きゅうりに含まれる様々な栄養素について詳しく解説します。
◆カリウム
きゅうりには100g中カリウムが200mgと多く含まれています。カリウムはナトリウムを体外に排出する働きがあるため、むくみの解消に役立つ栄養素です。
カリウムは煮たり水にさらすことで水に溶け出すため、多く摂取したい場合は生や、油でサッと炒めるなどの調理法がおすすめです。
◆ビタミンK
ビタミンKには血液凝固する成分を合成し、出血を止める働きがあります。また、骨からカルシウムが血液中に溶け出すのを抑えたり、カルシウムが骨に沈着するよう骨形成を助ける働きがあり、ビタミンDと並び、骨や歯を丈夫にするために欠かせないビタミンです。ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、油でさっと炒めたり、脂質が含まれる食材と合わせることで吸収率がアップします。
◆ビタミンC
きゅうり100g中にビタミンCは14mg含まれています。ビタミンCは熱に弱い栄養素、かつ水溶性のビタミンであるため、加熱や水さらしをすることでせっかくの栄養素を無駄にしてしまいます。きゅうりからビタミンCを摂取したい場合は生のままサラダや漬け物などにすることをおすすめします。
◆シトルリン
シトルリンはタンパク質を構成するアミノ酸の一種。腎臓の機能を高めて利尿作用を促します。体内の老廃物も一緒に排出するため、むくみなどの予防、改善におすすめです。シトルリンはきゅうりの他にスイカや冬瓜など、ウリ科の食材に多く含まれています。
食べ方によって栄養が変わる?
きゅうりは生食が一般的ですが、食べ方によって栄養アップに繋げることができます。
皮まで食べる
きゅうりの95%は水分ですが、残りの5%には栄養が豊富に含まれています。その栄養が含まれている部分はずばり、濃い緑色の皮の部分です。皮をむくと栄養を捨てていると言っても過言ではありません。ぜひきゅうりを食べる際は皮をむかずに食べるのをおすすめします。もちろん、皮をむいても水分やカリウムがしっかり含まれているので、皮の苦みや皮の食感が苦手な方はむいて調理するなど、好きな食べ方できゅうりを味わいましょう。
ぬか漬けにするとビタミンB1が増加
きゅうりをぬか漬けにすることで、ぬかに含まれるビタミンB1が加わります。ビタミンB1は糖質の代謝を高めエネルギーを作り、疲労回復や免疫力をアップさせる効果があります。
漬物にするとナトリウム量が爆増
生のきゅうりはナトリウム量が100g中1mgですが、塩漬け1000mg、醤油漬け1600mg、ぬか漬け2100mgと漬物にすることでナトリウム量が爆増します。塩分が気になる方は食べる量に注意してください。また、ぬか漬けや醤油漬けよりも、塩漬けの漬物の方が塩分が低いため、食べる時の参考にしてみてくださいね。市販の漬物の塩分が気になる場合は、自分で浅漬けや即席漬けなど手作りすると塩分を調整できるので便利ですよ。
夏バテ予防にピッタリの理由
きゅうりは夏バテ予防に大変おすすめできる野菜です。猛暑が続き、冷たいものを摂り過ぎると胃腸が冷えて消化能力が低下し、食欲が落ちて夏バテを起こしやすくなります。さらに、汗と一緒にミネラルが体外に出ると熱中症の原因にも。きゅうりには水分が95%含まれており、ミネラルやビタミンが含まれているため、夏バテにはぴったりの食材です。また、100g中14kcalと低カロリーであるため、ほかの食材と合わせやすいのが利点です。加えて、ぬか漬けは疲労時に摂りたいビタミンB1が補えます。きゅうりを食べて、夏を元気に乗り越えましょう。
【きゅうり】を美味しく食べる調理のコツ
きゅうりはそのまま食べられますが、一手間加えることでより美味しく食べることができますよ。下ごしらえの際は、両端を切り落とします。この両端にはククルビタシンという苦味成分が含まれているため、両端を切り落として、苦い部分は捨てましょう。
①板ずり
きゅうりはまな板の上で塩を振ってから、押さえるように転がすことで、色が鮮やかになり、イボが取れて青くささがなくなり美味しさが増します。その後水洗いし、サラダや酢の物、漬物やピクルス、炒め物など料理に使用すると、シャキシャキした歯ざわりを楽しめますよ。
②熱湯にくぐらせる
きゅうりを熱湯にくぐらせることで、雑菌が取り除かれ、緑がより色鮮やかになり、余分な水分が抜け食感がよくなります。また、調味料が中に染み込みやすくなる効果もあります。きゅうりにひと手間加えることで、普段のきゅうりをより美味しく召し上がってみてはいかがでしょうか。
新鮮な【きゅうり】の選び方
新鮮なきゅうりの見分け方は、濃い緑で光沢のあるものを選ぶことや、太さが均一であること、イボを触ると痛く感じるほどしっかりしていること、きゅうりの肩部分に適当な丸みを持っていることがポイントです。特に太さが均一でないと、水分が下にたまり、中に「す」が入っていることも多いので要チェックです。
【きゅうり】の保存のコツ
きゅうりの保存温度は10〜15℃です。低温に弱く、冷やし過ぎるとビタミンCが減少するので、温度の低い冷蔵室は避け、野菜室に入れましょう。気温の低い冬は、日の当たらない涼しい場所での保存がおすすめです。また、水気があると傷みやすくなるため、水分を拭き取った後ポリ袋に入れ、へたを上にして立てて保存します。
また、冷凍する場合は薄い小口切りにして塩もみをした後、ジップロックなどの保存袋に並べて入れ、空気を抜いて冷凍しましょう。保存期間は約1ヶ月で、使う際は自然解凍してサラダや酢の物、ちらし寿司などに利用します。
まとめ
私達にとって身近なきゅうりの解説でした。「きゅうりには栄養がない」とよく言われますが、実のところさまざまな栄養素を含んでいて、夏バテにも有効で、調理の組み合わせで栄養アップできる素晴らしい食材であることがわかりましたね。夏にもってこいなきゅうり、おうちでも今まで以上に取り入れてみてはいかがでしょうか。