北海道の南、函館市を含む渡島地方の郷土料理「いかめし」。米不足が深刻な中に生まれた昔ながらの料理ですが、今では北海道森町の阿部商店の駅弁として広く知られ、各地で開催される物産展でもトップクラスの人気を誇ります。今回はどこか懐かしい味わいで、一度食べたら何度でも食べたくなるような「いかめし」をより身近に感じられるよう、自宅でも作れるレシピから歴史までを詳しく紹介します。
目次
【いかめし】を作ってみよう!
「いかめし」はイカの胴体の中にお米を入れて甘辛い醤油味に炊いたものです。
材料はシンプルで作り方も想像できるのですが、家で作ろうとすると重い腰がなかなか上がらないこともあるかと思います。
今回は北海道在住の管理栄養士の筆者が詳しい作り方をご紹介。 うるち米(普段炊飯器で炊いて食べるようなお米)と同量のもち米を入れて作ることで、冷めても硬くならずモチモチとした食感が楽しめる「いかめし」を作ることができますよ。
《材料(2~3人分)》
- するめいか(胴体のみ) 3杯
- うるち米 60g
- もち米 60g
- (●)酒、みりん、醬油 各大さじ1
- (○)酒100ml
- (○)みりん60ml
- (○)醤油 60ml
- (○)砂糖 大さじ2
《作り方》
- するめいかは下処理をして足、ワタ、軟骨を取っておく。足やワタは他の料理に使用しましょう。
- するめいかの胴体の中を水できれいに洗う。
- 米ともち米を一緒に洗い、ザルに取って水分を切り、(●)の調味料と混ぜ合わせる。
- するめいかの胴体に3を詰めてつまようじで閉じ、胴体に数か所フォークで穴をあける。いかの1/3程度の米を入れ、つまようじは胴体のなるべく端を閉じるようにする。味染みを良くし、破裂を防ぎます。
- 3杯のいかがぴったり入るくらいの鍋を用意し、米を詰めたいかと(○)の調味料を入れ、いかがひたひたになる程度に水を入れて中火で加熱。煮立ったら弱火にして、ところどころ穴をあけたアルミホイルなどで落し蓋をし、10分経ったらひっくり返すことを2~3回繰り返しながら40分程煮る。
- 輪切りにして皿に盛り、完成。
調理のコツとおすすめのアレンジ
もち米が無い場合、うるち米100%で作ることも可能です。逆に、モチモチしたいかめしが好きな場合はもち米100%で作っても良いですよ。
アレンジとして、いかの足を刻んで米と一緒に胴体に詰めて炊いたり、ウズラの卵や枝豆、とうもろこしを入れて炊いても美味しいです。
また、中身を冷凍チャーハンやケチャップライス・ドライカレーなどに換えてトマト煮込みにしたり、ミルク煮にしてみる方法もあります。意外な相性が見つかるかも!?
改めて北海道の郷土料理【いかめし】とは
「いかめし」は、道南の函館地方・渡島(おしま)地方の郷土料理。レトルト商品としてスーパーに並んだり、家庭でも簡単に調理することができ、1年を通して食べることができます。主食にも、おかずにも酒のつまみとしてもよく合い、幅広い年代に好まれています。
料理としての歴史、由来や発祥
イカに米やじゃがいもを詰めてしょうゆ味で煮込んだ料理は日本海沿岸で古くから食べられてきました。私たちのよく知る「いかめし」は第二次世界大戦の際、食料統制下におけるコメ不足が深刻な中、函館本線森駅(北海道茅部郡)の駅弁として“いかめし阿部商店”が昭和16年に販売したのがはじまりです。 「少しでも米を節約できる料理」に選ばれた食材が、道南地域で大漁に水揚げされていたイカでした。イカに米を詰めて炊き上げた「いかめし」は、戦時中の兵隊さんから手軽に食べられるうえに腹持ちも良く美味しいと評判になり、庶民からも愛される人気の駅弁となりました。
人気駅弁の生みの親“いかめし阿部商店”について
明治36年創業の“いかめし阿部商店”の「いかめし」は、昭和16年の販売から80年以上が経った今でもロングセラーの商品となっています。コメ不足で誕生した商品でしたが、戦後も森駅のホームで販売されており、地元の学生の売り子や買い物客でにぎわっていたそうです。阿部商店は“実演販売”で売上を飛躍的に伸ばしていき、全国の百貨店からの出店要請など実績を積んでいきました。しかし森駅に急行列車が停車しなくなると売上は激減。徐々に販売形態を催事や駅弁大会に移していきました。また、近年は国産スルメイカの不漁が続き、世界規模での調達先を確保するなど、物流ルートを広げ安定した原材料調達に奮闘しています。
そしてコロナ流行初期の2020年5月に3代目として社長に就任したのが、1991年生まれの今井麻耶さんです。小学生の頃から駅のホーム立売りを手伝ったり、20代前半にアメリカでの実演販売や世界各地を回った経験があるなど「いかめし」とともに育った今井さん。家業と両立してプロバスケットボールのリポーターも務めています。就任までの会社は食材のコスト高や社内の高齢化で経営難にありました。それでも今井さんは、引き継ぐという強い意思を曲げませんでした。新体制発足のタイミングでコロナによる大打撃を受け、全盛期の売上に回復するにはほど遠い状態になってしまいましたが、それでも今井さんは諦めることなく空港での販売やリポーターの仕事を通じての販売、いかめし関連商品の販売など、新しい販売方法を開拓し続けています。
料理としての特徴
いかめしは北海道民が大好きな甘辛い味付けが特徴です。慣れない人には「しょっぱい」「甘い」と感じるかもしれませんが、これが北海道の味。
しっかり味の染みたお米と軟らかく煮えたイカが口の中で混ぜ合わさり、「イカ入り醤油おこわ」のような味わいと言えます。
いかめしには兄弟がいた!?
いかめしのアイデアを参考に、函館本線長万部駅でも米不足で弁当が作れなくなった事情から、内浦湾で獲れるカニを1杯丸ごと使った「かにめし」を販売したという歴史もあります。
【いかめし】のカロリーや栄養について
いかめしは100gあたり130kcalです。
いかは高たんぱく、低脂質でタウリンを豊富に含む魚介類です。タウリンは滋養強壮や疲労回復の速度を早めたり、肝臓でのアルコール分解を助ける働きを持ちます。
また、お米には炭水化物が含まれいているため、タンパク質と炭水化物を効率よく摂取することができる食品と言えます。 タウリンの働きもあることから、運動後の疲労回復にピッタリの食品ですね。
どこで買える?お取り寄せできる?
「いかめし」は今や様々な製造業者が販売しており、全国のアンテナショップやスーパー、空港、通販でも気軽に購入できるようになりました。 いかめし阿部商店でも全国各地での出展やオンラインショップなどで販売しているので、公式HPをぜひチェックしてみてください。
まとめ
長く愛され続ける北海道の郷土料理「いかめし」についてたっぷりご紹介しました。イカの旨味ともっちりとしたお米の食感、甘めの醤油だれで味付けされたどこか懐かしい味わい、全国的に人気の駅弁には企業やファンの思いが詰まっています。ぜひレシピを参考にご自宅で作ったり、催事で見かけたら購入して味わってみてください!