【行者にんにく】とは?強い香りの美味しい山菜。その食べ方や栄養について

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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北海道の春の味覚の代表「行者にんにく」。雪解けとともに芽吹くこの山菜は強い香りとシャキっとした食感が特徴です。北海道では醤油漬けにして保存食として食べるほか、天ぷらにしたりジンギスカンの具にしたりと食卓を賑わせてくれます。

今回は道産子に大人気のこの山菜について、管理栄養士の筆者が栄養はもちろん美味しい食べ方まで詳しく紹介します。

「行者にんにく」はどんな山菜?

行者にんにく,山菜

「キトビロ」や「ヒトピロ」といった別名のほか、北海道では「アイヌネギ」とも呼ばれます。北海道の山菜の中でも高級品で、「幻の山菜」とも。北海道の先住民アイヌの文化では、乾燥した行者にんにくを薬草として食べることもあります。

「行者にんにく」の名前の由来は、「行者(修行僧)が好んだ香りの強い野菜」だといわれています。その昔、修行僧が行者にんにくを食べたことで滋養がつきすぎてしまい修行にならなかったため、食べることを禁じられてしまったそうです。しかし、その美味しさとパワーを求めてこっそり食べていたことから「行者にんにく」と呼ぶようになったという訳です。

ニラのように光沢のある葉が特徴で、根元付近は赤褐色をしています。スズランに似ていることもあり間違えられるのですが、スズランには毒があるので気を付けましょう。

◆旬の時期

行者にんにくの旬は

栽培物もありますが、山菜好きの人は山の中に生えている行者にんにくを探して収穫します(山菜狩りは土地所有者の許可を受けましょう)。

行者にんにくは繁殖力が弱く、種をまいても食べられる大きさの株になるまで4~5年かかるため、乱獲してしまうと収穫量がぐんと減ってしまいます。その美味しさからマナー違反者も存在し、どんどん収穫量が減っているため「幻の山菜」と呼ばれてしまっているのです。大切な山の幸を守るためには大きい行者にんにくのみを選んで収穫し、必要以上の量は収穫しないことがマナーです。

◆病みつきになる“味”と“におい”

行者にんにくは「にんにく」という名前の通り、強烈な香りを持ちます。生のニンニクよりも強くにおうため、翌日や翌々日まで引きずることもしばしば。
味はというと、濃いニラの味と言えばよいでしょうか。食感はニラよりも繊維感が強いです。

味もにおいも栽培物よりも天然物の方が勝ります。
北海道民は行者にんにくの味と香りで春が来たことを感じます。

◆ニンニクとの違い

ニンニクと違う点は、ニンニクは「鱗茎(りんけい)」という地下茎が肥大した部分を食べますが、行者にんにくは新芽を食べるという点です。
※ニンニクも新芽や茎(にんにくの芽)を、行者にんにくと同じように調理して食べる事が可能です。

行者にんにくを美味しく食べよう!

期間限定の高級山菜であるため、生の行者にんにくを手にする機会はなかなか無いと思いますが、デパートやお取り寄せで入手したときにはぜひ下記の食べ方を試してみてください。

これ以外にも麻婆豆腐や卵とじ、餃子に少々刻んで入れるなど、ニラを使うような料理にもピッタリですよ!

おすすめレシピ①行者にんにくの「醤油漬け」

行者にんにくの醤油漬け

生の行者にんにくを水洗いして土を取り除き、お好みの大きさにカットします。3㎜程度の小口切りのようにする人もいれば、1㎝程に切る人もいますし、切らずに醤油漬けにして長いままやお好みの長さに切って食べる事も。

沸騰したお湯に行者にんにくを入れて5秒ほど茹でたらざるにあけて水を良く切った後、行者にんにくが浸る量の濃口醤油に漬ければ完成。煮沸消毒した瓶や密閉袋に入れ、一晩以上寝かせれば食べられます。

醤油漬けした後に冷凍もできますよ!

おすすめレシピ②行者にんにくの「天ぷら」

行者にんにくの天ぷら

てんぷら粉を使えば超簡単!シンプルイズベストな山菜の楽しみ方ですね。
食べるときには塩がおすすめです。

おすすめレシピ③行者ニンニクの「キムチ和え」

行者にんにくのキムチ和え

サッとゆでた行者にんにくの水分を搾り、適度な大きさに切ってキムチと和えるだけ。
行者にんにくとキムチの量はお好みで大丈夫です。いつものキムチによりパンチが出て、元気になる味に!ごま油を少量垂らして白ごまをふったり、さらに卵黄を盛りつけてもGOOD。

行者にんにくの気になる「におい」。選び方や保存方法のコツ。

コンテナいっぱいの行者ニンニク

◆匂いが気になる場合は?

行者にんにくはとにかく匂いが強烈です。それを楽しむのが醍醐味ではありますが、控えめにしたい場合は冷凍してから調理しましょう。におい成分を作る酵素の働きが弱まり、調理しても匂いが抑えられます。
また、行者にんにくを食べた後にりんごジュースを飲んだり、生のリンゴを食べることで匂いが弱まるという人もいます。

◆選び方のコツ

行者ニンニクを購入する際は葉の緑色が鮮やかでつやがあるもの、茎の切り口がみずみずしく乾いていないものを選びましょう。
また、天然物か栽培した物なのかもチェックしましょう。天然物の方が香りが強く、味も濃いですよ。

◆保存のコツ

「生」の場合、新聞紙などで包んでビニール袋に入れ、野菜室に立てるように保存すると4~5日は保存できます。
「冷凍」の場合は土を取ってきれいに洗った後に水気をよくふき取り、フリーザーバックに入れて冷凍します。調理するときは解凍せずに凍ったまま調理しましょう。
おすすめレシピで紹介した「醤油漬け」も冷蔵保存、冷凍保存が可能です。

行者にんにくの栄養価

行者にんにく

生の行者にんにくは可食部100gあたり34kcal。たんぱく質は3.5g、脂質は0.2g、炭水化物は6.6g、食物繊維は3.3g含まれます。「炭水化物ー食物繊維」で求められる糖質の量は3.3gです。

カルシウム29㎎、鉄1.4mg、葉酸85㎍など、行者にんにくはさまざまな栄養素を含む野菜です。特に多く含まれている栄養素をご紹介します。

◆栄養素①強い抗菌力を持つ《アリシン(硫化アリル)》

アリシンは玉ねぎやネギ、にんにく、ニラ類を切った時に目に染みる成分です。硫化アリルの一種で、ただ目に刺激をもたらすだけではなく、抗菌作用や疲労回復の速度を早める働き、血栓の予防やコレステロールを代謝する働きもあります。

しかし硫化アリルであるアリシンは熱に弱い性質を持つので、アリシンの健康効果を期待する場合は生のままの行者にんにくの醤油漬けなど加熱をしない調理法で食べることや、加熱時間が短時間で済む炒め物にすることをおすすめします。 アリシンはビタミンB1の吸収率を助ける役目も持つため、ビタミンB1が持つ疲労回復作用をより高めてくれます。

◆栄養素②骨を強くする《ビタミンK》

行者にんにく100g中にビタミンKは320㎍含まれます。これは野菜の中でもトップクラスです。厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンKは成人で1日150μgの摂取が目安と定められていることから、行者にんにくが含むビタミンKの多さには納得ですね。 ビタミンKはカルシウムを骨へと沈着させる際に働く栄養素です。また、止血作用もあるため、切り傷や擦り傷を早く治す働きも持ちます。

◆栄養素③免疫力を高める《ビタミンC》

行者にんにく100g中にビタミンCは59㎎含まれます。
ビタミンCは肌へのコラーゲン沈着の際に働いたり、抗酸化作用を持ち細胞を若々しく保ったり、免疫力を高める栄養素です。

1日の必要量は100㎎であるため、行者にんにくを少量食べるだけでもほかの野菜や果物をバランスよく摂取するだけでしっかり必要量を摂取できます。

まとめ

北海道の春の味覚「行者にんにく」について解説しました。

行者にんにくは美味しくて元気が出る野菜ですが、においも強烈!匂いを抑える調理法も紹介しましたが、念のため次の日の予定をチェックしてから召し上がるようにしてください。

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