おにぎりの具やパスタソースとして大人気の「たらこ」は、スケトウダラの卵巣を塩蔵して作る魚卵加工品です。旨味が強くて塩気もあって、ごはんのおかずやお酒のお供としてついつい食べ過ぎてしまうほどに美味しい食材。そんな「たらこ」に含まれる栄養素とその働きについて、管理栄養士の筆者が詳しく解説。気になるプリン体や塩分量、明太子との違いやお手軽レシピもご紹介します。
目次
【たらこ】について詳しく知ろう
おにぎりやお茶漬け、うどんやパスタなどの麺類にも相性バッチリな「たらこ」。普段は、“ただ美味しいから”食べているという人も多いはず。まずはたらこについての知識を深めましょう。
【たらこ】とは?
たらこはスケトウダラの卵巣、およびそれを塩蔵したものです。広義ではマダラ(真鱈)も含みますが、一般に「たらこ」と呼ばれるものはスケトウダラの卵巣を指すことが多いです。北海道では助子(スケコ)とも呼ばれ、旬である冬の時期は塩漬け前の生の状態で流通し、煮付けなどに使われます。
たらこの歴史
たらこが生産されるようになったきっかけは、明治時代マダラが不漁時にスケトウダラを代わりに漁獲したことから、卵であるたらこの加工が始まったと言われています。たらこは全国の約6割が北海道産。しかし国内のスケトウダラの漁獲量は年々減少傾向にあり、ロシアやアメリカなどから輸入したスケトウダラを日本で加工して販売するのが一般的となっています。今後の資源量や漁獲変動によって、品質や価格などに影響することからこれらの情勢に注視していく必要がありますね。
「真子」「切子」「バラ子」について
一般的に販売されているたらこは、「真子」「切子」「バラ子」と分別することができます。大きな違いは「形」です。「真子」は、スケトウダラの卵巣がきれいで整った形のもので、贈答用に向いてます。「切子」は形が崩れてしまったもので、家庭用としてよく使われています。「バラ子」は「切子」同様に形が崩れており、皮がついていない粒だけのたらこを指します。「切子」や「バラ子」は形が崩れているだけで味や品質には問題ありません。
「辛子明太子」との違いは
たらこと明太子は原材料が基本的にどちらもスケトウダラの卵巣から作られている食品です。一般的にたらこは塩漬けしたもの、明太子は唐辛子等の辛みをつけた調味液で味付けしたものと区別されています。ただし、たらこにはマダラの卵巣を使った「またらこ」と呼ばれる種類もあります。明太子はスケトウダラの卵巣に唐辛子を原料とする調味液で味付けしたものと規約で定義されているため、マダラや他の卵巣を使ったものを「明太子」と呼ぶことはありません。 また、明太子の呼び名は韓国でスケトウダラのことを「明太(ミョンテ)」と呼ぶことから由来します。たらこはスケトウダラの漁獲量が多い北海道で「たらのこ」と呼ばれていました。そこから次第に「たらこ」の呼び方で呼ばれるようになったそうです。
【たらこ】の栄養成分とその効能について
たらこ(生)は100gあたり140kcal、タンパク質24.0g、脂質4. 7g、炭水化物は0.4g、食物繊維は0g、食塩相当量は4.6gです。たらこは塩分が多いイメージが強いため、栄養について注目されることが比較的少ない食品ですが、実は多くの栄養素を含んでいます。下記で栄養素について詳しくご紹介します。
①タンパク質
たらこは「アミノ酸スコア100」と必須アミノ酸がしっかり含まれており、上手にタンパク質を摂取するのに適した食品です。三大栄養素の一つである「タンパク質」は、筋肉や内臓、髪の毛、皮膚、血液など体のあらゆる部分を作るのに欠かせない栄養素です。人間の体の15〜20%を占めているタンパク質は筋肉や内臓などの材料になるだけではなく、ホルモンを作ったり、代謝に必要な酵素を作ったり、免疫を作る材料にもなるなど、健康の維持に重要な役割を担っています。
②ビタミンB群(ナイアシン)
たらこはビタミンB群が豊富な食品。その中でもビタミンB3とも言われるナイアシンが豊富で、100gあたり49.5mgとトップクラスを誇る量です。ナイアシンは三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質の代謝のサポートをしたり、アルコールを分解するのに役立ちます。
③ビタミンE
たらこに含まれるビタミンEは100gあたり7.1mg。ビタミンEは活性酵素の働きを抑えて老化を予防することから別名「若返りビタミン」「アンチエイジングビタミン」とも呼ばれています。また、血行を良くする働きもあるため、血流の悪さからくる冷え性の改善にもつながります。
④ミネラル(鉄、亜鉛、カルシウム、カリウム)
たらこはミネラルが豊富な食品です。鉄や亜鉛は貧血予防に効果的です。カルシウムは骨や歯を丈夫に保つほか、体の筋肉の収縮、精神の安定にも必要なミネラルです。カリウムは体内の余分な水分を排出する働きがあり、むくみの改善に効果的です。
気になる「塩分」や「プリン体」。美味しく健康的に食べるために
たらこには100gあたり120.7mg、ひと腹で約30mgのプリン体が含まれています。
プリン体の1日の摂取目安が400mgであるため、他の食品とのバランスを考慮して食べるといいですね。プリン体を摂りすぎると余分なプリン体が分解されて尿酸になり、体内に溜まり結晶となって痛風や尿路結石症を引き起こします。たらこに限らず魚卵にはプリン体が豊富に含まれているため、食べ過ぎに気をつけましょう。
たらこの塩分は100gあたり4.6g。たらこは塩蔵したものであるため、塩分を多く含みその塩分濃度は約5%といわれています。そのため、生活習慣病を予防する為にも食べ過ぎには注意しましょう。ご飯と相性の良いたらこは、美味しくてつい食べ過ぎてしまうこともあるかもしれません。どうしても食べたい場合は、体内の塩分を体外に排出してくれるカリウムが豊富な食品を合わせ食べるのもおすすめです。
豆乳と合わせたたらこのクリームパスタや、じゃがいもと合わせたタラモサラダなど、工夫して調理することで、塩分の摂り過ぎを気にせずおいしく召し上がってみてはいかがでしょうか。
他の魚卵類との比較(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン参照)
独特のプチプチとした食感や味わいを楽しめる魚卵。たらこ以外に明太子やいくらなど、さまざまな種類があります。下記では種類ごとのカロリーや栄養についてご紹介します。
◆いくら・筋子
いくらと筋子は鮭や鱒の卵です。
いくらは100gあたり252kcal、タンパク質32.6g、脂質15.6g、炭水化物0.2g、プリン体3.7mg、塩分2.3g。
筋子は100gあたり263kcal、タンパク質30.5g、脂質11g、炭水化物0.2g、プリン体3.7mg、塩分2.3g。
いくらと筋子のプリン体の値は意外と低く、驚かれた方も多いのではないでしょうか。他にもタンパク質やビタミンAなど、栄養が豊富が豊富。ただし、たらこと比べて脂質は高いため、食べ過ぎには注意が必要です。
◆明太子
明太子は100gあたり121kcal、タンパク質21.0g、脂質3.3g、炭水化物3.0g、プリン体159.3mg、塩分5.6g。
明太子はたらこと似た値ではありますが、塩分とプリン体がやや高めです。食べ過ぎには気を付けつつ、食べ合わせやバランスを工夫して美味しく食べましょう。
◆数の子(かずのこ)
数の子は鰊(にしん)の卵巣を塩漬けまたは天日干しにしたものです。100gあたり139kcal、タンパク質25.2g、脂質6.7g、炭水化物0.2g、プリン体21.9mg、塩分0.8g。 同じ卵でも数の子は高タンパク・低脂質、塩分も低めです。比べてみると違いがありおもしろいですね。
たらこのおすすめレシピ
たらこの栄養価についてよくわかりましたね。食べ過ぎに注意は必要なものの、管理栄養士おすすめのレシピを紹介します。
◆たらことチーズのアヒージョ
たらこの塩味で味付け要らずのアヒージョです。たらこの火が通った食感と生の食感の2通りを楽しむため、たらこに火を通しすぎないことがポイント。ジャガイモやキノコなどの具材を追加してもOK!(1人分:650kcal/塩分1.5g バケット無し)
《材料(2人分、直径12㎝のスキレット)》
- たらこ 2腹
- モッツアレラチーズ 1/2個
- ニンニク 2片
- オリーブオイル 100ml
- 黒コショウ 少々
- イタリアンパセリ 少々
- バケット お好みで
《作り方》
- スキレットにオリーブオイル、みじん切りにしたニンニクを入れて香りが出るまで加熱する。
- ニンニクが色づいてきたら手でちぎったモッツアレラチーズをまんべんなく入れ、たらこを皮からしごき出して中心に盛り、仕上げに黒コショウとイタリアンパセリを散らす。
- たらこの1/3に火が通ったら火を止めて完成。
◆TKTBG(卵かけたらこバターご飯)
日本人が愛する「TKG=卵かけご飯」にたらことバター(TB)をトッピングしただけ!シンプルながら一番おいしい食べ方だと思っています。熱々のごはんに絡んだ卵に、たらことバターの香りが合わさりご飯が進む!(487kcal/塩分1.8g)
《材料》
- ご飯 1膳
- 卵 1個
- たらこ 1腹
- バター 10g
- 醤油 お好みで
- 小葱 少々
《作り方》
- 熱々のごはんに卵を割り入れ、良く混ぜる。
- 均一に混ざったら腹からしごき出したたらことバターを乗せ、小口切りにした小ねぎを散らし、醤油をお好みの量かけて完成!
北海道のたらこは美味しい!
全国の約6割のたらこが北海道で生産されており、明太子の原料にも北海道産が多く使用されています。たらこといったら北海道!と言っても過言ではありません。
特に道内でたらこの産地として有名なのが、北海道南部にある白老町の海岸沿いにある「虎杖浜(こじょうはま)」という場所。虎杖浜で作られるたらこは、輸入原料のように塩漬け加工前の冷凍し解凍するという工程がなく、水揚げされたあとそのまま塩漬け〜熟成と工程をその日のうちに全て一貫して同地でできるため、品質が高く美味しいと評価されています。また、たらこは成熟度合いによって、ガム子(未熟)、真子(成熟)、目付(過熟)、水子(完熟)の4つに分別されます。虎杖浜たらこは、最も品質が良く鮮度の高い真子を選別して作っていることも美味しさの秘訣の一つと言えるでしょう。ぜひ皆さんも北海道に立ち寄った際は、お土産にたらこを買ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
たらこの歴史や栄養価、他の魚卵との比較などをお伝えしました。ご飯のお供に欠かせないたらこ。近年はロシアやアメリカなどの輸入原料が増え、本場である北海道のたらこを食べる機会は減りつつあります。北海道でとれるたらこは新鮮で、たらこが本来持つ旨みがたっぷりです。見つけたらぜひ味わってみてくださいね。