とうもろこしの「ひげ」。一般的にはなじみの少ないこの部位の正体はとうもろこしの「雌しべ」の名残です。皮を剥く際に一緒に取って捨ててしまうことが多いのですが、古くから漢方薬の原料にもなるほどの部位なのです。
ただ捨てるにはもったいない「ひげ」は、簡単に食べたりお茶にすることができます。今回はとうもろこしのひげに含まれる栄養素や、ひげを使ったレシピを管理栄養士が紹介します。
目次
とうもろこしのひげの正体
とうもろこしのひげは「雌しべ」が残ったもの。正式には「絹糸(けんし)」と言います。とうもろこしに限らず、植物は子孫を残すために花の「雌しべ」に「雄しべ」から出た花粉が受粉することで実を付けます。
つまり、とうもろこしの実は無数の花が受粉した後にできる実の集合体、ということです。
とうもろこしの実の数だけひげがついているため、1本のとうもろこしには約500もの実とひげがついていることになりますね。
また、絹糸はとうもろこしの実の下の方から先に延びてくるため、購入したとうもろこしの先が、たまに実がついていない場合があると思いますが、それはとうもろこしの先端の絹糸が受粉する前に花粉がなくなってしまったため受粉することができなかった結果なのです。
ひげで見分ける美味しいとうもろこし
とうもろこしのひげは美味しいとうもろこしを見分けるための目印にもなります。
ひげがこげ茶色になり、チリチリと縮れているとうもろこしが完熟の合図です。逆に、ひげがきれいな薄緑色でさらさらしているとうもろこしは、まだ収穫には早い未熟なとうもろこしと言えます。
生産者はとうもろこしの収穫適期を判断する材料として、ひげの色も一つの指標としています。
ひげにも栄養素が含まれている
冒頭にも述べた通り、とうもろこしのひげは「南蛮毛(なんばんげ)」と呼ばれ、漢方薬としても使われています。漢方薬としての南蛮毛は、利尿作用があり、血圧を下げる近づける働きがあるといわれています。
生のとうもろこしから採取したひげにも、同じ働きを持つ栄養素が含まれているので紹介します。
栄養素①利尿作用をもつ《カリウム》
カリウムは体内の塩分や水分を調整する働きを持ちます。過剰な塩分を水と一緒に尿として排出するため、むくみの改善や血圧の正常化にも役立ちます。
カリウムは水溶性の栄養素なので調理法には注意が必要です。
栄養素②抗酸化作用に期待《フラボノイド》
植物に含まれるポリフェノールの一種です。ポリフェノールということで強い抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防いだり、血管をしなやかに保つために働きます。 ポリフェノール類も水溶性の栄養素のため、調理法に注意しましょう。また、水溶性の栄養素は体内に貯めることができないため、毎日摂取することが必要です。
栄養素③お腹のスッキリ感に《水溶性食物繊維》
食物繊維には水溶性と不溶性の二種類があるのですが、とうもろこしの実自体には不溶性の食物繊維が多く、とうもろこしのひげには不溶性水溶性の2種類の食物繊維が含まれているのが特徴です。不溶性食物繊維は便のカサを増やして腸の働きを活発にし、便意を感じやすくさせてくれます。水溶性の食物繊維は血糖値の急上昇を防いだり、余計な脂質を体外に排出する働きを持ちます。
とうもろこしのひげの取り方
完熟のとうもろこしはひげの色が茶色っぽくなっています。茶色っぽくなってしまったひげは食べるとゴワゴワして美味しいものではないため、茶色い、皮から飛び出している部分は切り落としてしまいましょう。とうもろこしの皮に包まれて守られている綺麗なひげを取っておきます。
生のままとるのも良いですし、レンジで加熱した後、皮を剥くときに取っても良いです。ただ、薄皮とひげを付けたまま茹でとうもろこしにした際は、ひげのカリウムやポリフェノールなどの水溶性の栄養素がお湯に溶け出てしまっているため、ひげにはあまり栄養素が残っていないと思ってください。
また、ヤングコーンの時期はよりひげが長くてきれいで、食べやすいです。ツヤツヤしたひげは、まるで絹の糸のよう。最近では生のヤングコーンを道の駅や直売所でも気軽に買え、お取り寄せも可能になってきました。ヤングコーン好きや、ひげに含まれている栄養素に期待したい人はヤングコーンからひげを採取してみてください。
とうもろこしのひげを食べるレシピ
とうもろこしのひげの効能をお伝えしましたが、実際どうやって食べるのか、どんな味なのかが気になりますよね。
ひげ自体はほとんど味がしません。とうもろこしのゆで汁に似たほんのりとした甘さと、シャキシャキとした食感が特徴です。
次にレシピを紹介します。
とうもろこしのひげ入りサラダ
とうもろこしのひげはさっと洗ってざるに上げて水分を切っておきます。
お好きなサラダに食べやすい長さに切ったとうもろこしのひげを生のまま混ぜるだけ。ほとんど味がしないので、どんなサラダにも合います。
かき揚げ
通常のかき揚げの作り方と同じように、具として食べやすい長さに切ったとうもろこしのひげを混ぜて揚げます。少々焦げやすいので、一緒に上げる野菜は火の通りやすいものを選んだり、細めに切っておくと良いです。とうもろこしのひげ特有のごわごわした食感が気にならなくなります。
とうもろこしのひげは素揚げにすると水分が飛びバリバリになります。衣はカロリーが高いので、気になる方は素揚げにして塩を少々かけて食べてみてください。
スープ
とうもろこしのひげをお好みの長さに切り、コンソメスープやトマトスープに入れてさっと火を通すだけ。同じ要領でみそ汁に入れても食べられます。
火の通し方で食感が変わるので、サクサクとした端切れを楽しみたい人はあらかじめひげをお椀に盛っておき、スープを注ぐだけでも良いです。
汁ごといただくことで水溶性の栄養素も丸ごと摂取できます。
とうもろこしのひげを飲むレシピ
とうもろこしのひげは食べるだけでなく、飲みものにすることも可能です。 お茶にしたり、スムージーやポタージュに入れる方法を紹介します。
とうもろこしのひげ茶
とうもろこしのひげを乾燥させた後、炒って作るお茶です。とうもろこしのやさしい甘さと風味があって飲みやすく、ノンカフェインのお茶です。完成後は清潔な密閉容器に入れると1~2か月美味しく楽しめます。
〈作り方〉
1.とうもろこしのひげをカラカラに乾燥させます。ザルなどに重ならないように並べ、天日で3~5日乾燥させましょう。
2.乾燥したひげを2㎝程の長さに切り、フライパンや鍋で乾煎りします。とうもろこし2本分のひげ程度なら2~3分程でOK。香ばしい香りがするまで焦げないように煎ります。これでとうもろこしのひげ茶は完成!
飲み方はというと、鍋に400㏄の水を入れ、とうもろこしのひげ茶5gを入れて沸騰させ、好みの濃さまで煮出すだけ。3分ほど煮れば香り良く飲みやすいお茶になります。
飲むときに茶こしや目の細かいザルでひげを濾し、できあがりです。温かいまま飲んでも良いですし、粗熱が取れたら容器に移して冷蔵庫で冷やして飲んでも良いです。
「コーン茶」というお茶もありますが、コーン茶は専用の品種のとうもろこしを乾燥させて焙煎したものです。コーン茶の方が麦茶寄りの味で飲みやすいのですが、ひげ茶よりも栄養価は低いです。
スムージー
とうもろこしのひげをお好きな食材と一緒にミキサーに入れて攪拌するだけ!
味に特徴が無いので、どんなスムージーにも入れることができます。
ひげが新鮮なうちに消費しきれない際は、使いやすい長さに切った後密閉袋に入れて冷凍しておくといつでもスムージーに入れることができます。
まとめ
とうもろこしのひげの正体から栄養価、簡単な食べ方をお伝えしました。
とうもろこしの実も栄養豊富ですが、ひげにまで体にうれしい働きを持つ栄養素が含まれていることがわかりましたね。知ってしまった以上、ただ捨ててしまうのはもったいない!
サラダやお茶など様々なレシピで「ひげ」を堪能してみてはいかがでしょうか。