【ホッキ貝】を食べよう!栄養&効能ガイド。旬の時期やおすすめの食べ方、選び方まで詳しく解説

北海道食材の豆知識
Misato Watanabe

Misato Watanabe

調剤薬局で事務兼管理栄養士として従事していました。その後お菓子メーカーに勤め、現在は苫小牧市で1歳児子育て奮闘しながら、鮮魚店で日々新鮮な魚をお客様にお届けしています!

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北海道が国内の漁獲量の大半を占める「ホッキ貝」。北国を代表する貝類の一つであり、近年は回転寿司のネタとしても定番になりその人気が全国に広まってきました。タウリンやミネラルが豊富で旨みがあって美味しいこの貝について、管理栄養士で本場ともいえる苫小牧市に在住の筆者が栄養素とその効能について詳しく解説。旬の時期やおすすめの食べ方、食べる際の注意点などについても紹介します。

【ホッキ貝】について詳しくしろう

新鮮なホッキ貝

「苫小牧」という北海道の地名をご存知でしょうか。北海道の中南部にある太平洋を望む場所に位置する都市です。北海道で苫小牧といえば、三星のよいとまけ、そしてホッキ貝です。地元のスーパーには必ずホッキ貝の冷凍が品揃えされており、ほぼ1年を通して殻付きの生ホッキ貝も並びます。道産子で苫小牧市在住の筆者も、ホッキ貝に慣れ親しんでおり、近所の方からお裾分けでいただくことも。あっさりとしていて主張しすぎず、旨みもあるため、さまざまな料理と相性の良い貝です。 まずはその生態や食材についての歴史などを学びましょう。

【ホッキ貝】とは

「ホッキ貝」はマルスダレガイ目バカガイ科に属する2枚貝で、殻はハマグリ型で厚く重いのが特徴です。標準和名は「ウバガイ(姥貝)」といいますが呼ばれることは殆どなく、「ホッキガイ(北寄貝)」や「ホッキ」の地方名で流通しています。旬は北海道だと冬の1月〜3月ですが、1年を通して生のホッキ貝は各地のスーパーに流通しています。

ホッキ貝は水深20m程度の浅い海の、河川水の流入や有機物の堆積が少ない砂底に潜って生息しています。北海道では檜山沿岸を除くほとんどの砂浜地帯で獲れ、主な漁獲地域はトップが苫小牧市、それ以外だと別海町根室市が挙げられます。道外だと青森県、宮城県、福島県あたりの東北地方で獲れています。ホッキ貝は資源保護が徹底され、産卵期は禁漁のほか、殻長7.5cm以下の漁は禁止と定められています。その努力の成果として、ここ数年の北海道の漁獲量は年間5,000t前後で推移し安定しています。

アメリカウバガイ

近年は回転寿司でもお馴染みのネタとして人気があり、赤みの鮮やかな輸入ホッキ貝が増えてきています。これらの多くはカナダから輸入されている「アメリカウバガイ」で、ウバガイの近縁種にあたります。ウバガイよりも一回り大きく、茹でた足の色の赤みが濃いのが特徴です。

【ホッキ貝】の栄養成分とその効能

活北寄貝の刺身

ホッキ貝(生)は100gあたり73kcal、タンパク質11.1g、脂質1.1g、炭水化物は3.8g、食物繊維は0gです。貝類の中では脂質、炭水化物、リンが多めです。また、タウリンも豊富なホッキ貝。栄養成分と効能について詳しく解説していきます。

◆タウリン

「タウリン」と言えば、タコやイカを思い出す方も多いのではないでしょうか。実は、ホッキ貝にもタウリンが豊富に含まれております。北海道漁業協同組合連合会「北海道ぎょれん」によると、ホッキ貝には100g中2.519mg牡蠣(100g中1.130mg)の約2倍ものタウリンが含まれています。栄養ドリンクの主成分としてもよく見かけますよね。タウリンはタンパク質が分解される過程でできるアミノ酸に似た物質で、体内では肝臓や筋肉、脳、心臓などに高濃度で含まれています。母乳の中にも多く含まれ、乳児の発達に重要な栄養の一つです。

タウリンは高血圧を改善し、動脈硬化、心不全、心臓病などの予防に有効的です。また、血中コレステロールや中性脂肪を減らし、肝機能を高める働きもあります。

◆グリシン、アラニン

「アラニン」「グリシン」はアミノ酸の一種です。アラニンはアルコール代謝を促進し、肝機能を保護するアミノ酸です。グリシンは血中コレステロールの上昇を抑え、高血圧や脳卒中の予防に効果的なアミノ酸です。アラニン・グリシンには旨み成分があるため、ホッキ貝を食べた時に甘みのある味わいを楽しむことができます。

◆ミネラル

ホッキ貝にはマグネシウム・カルシウム・リン・鉄などのミネラルが含まれています。マグネシウムはエネルギーを作り出す際に使われ、カルシウムとリンは結合して骨や歯の健康を維持し、鉄は赤血球の材料となって全身に酸素を運んだり、肝臓や筋肉に貯蔵されます。

◆ビタミンB12

ビタミンB群を多く含むホッキ貝。中でもビタミンB12が豊富で、100gあたりにビタミンB12を47.5μg含みます。ビタミンB12は赤血球を合成するのに必要な栄養素です。不足すると貧血や不眠や肩こり、腰痛などを伴う神経障害になりやすくなります。

【ホッキ貝】は加熱すると旨みがアップ?

焼きホッキ貝

ホッキ貝は上記で説明したグリシンアラニンの旨み成分がたっぷりで、肉厚でジューシー。刺身やお寿司で食べる以外にも、焼く・煮る・炊く・揚げるなど調理法に加熱を加えることで、味や食感も変化し、様々な料理を楽しめますよ。ホッキ貝はさっと火を通すと旨味や甘みを強く感じるため、しゃぶしゃぶや炙り焼きにすると柔らかさを失わずに美味しく食べられます。加熱しすぎると硬くなってしまうので、火加減には注意してください。半生の状態が美味しさと柔らかさのベストです。

【ホッキ貝】のおすすめの食べ方

しゃぶしゃぶや炙り焼きの他、代表的な料理として「ホッキカレー」「ホッキの炊き込みご飯」「ホッキのフライ」「ホッキサラダ」などが挙げられます。ここからはホッキの一大生産地である苫小牧(とまこまい)の一般家庭でよく出てくる食べ方や料理をご紹介します。

①刺身

ホッキ貝の刺身,ウバガイ

新鮮なものはそのまま刺身や寿司で生食ができます。刺身を作るときは、ウロと呼ばれる内臓は取り除きましょう。これはホッキ貝が砂場で生息するため、内臓には砂が含まれていて食感がよくないからです。また、ホッキ貝独特のクセが苦手という方は軽く湯通しすることでクセが弱まり、甘味や旨みが増して美味しく食べることができます。

②炊き込みご飯・混ぜご飯

ほっき飯,ホッキ貝の炊き込みご飯

炊き込みご飯を作る際は、ご飯とホッキ貝の身を一緒に炊き込むと硬くなるので注意しましょう。別鍋で他の具材を醤油、みりん、酒、砂糖で煮詰め、ホッキ貝をさっと火を通すのがおすすめです。旨みが口の中で広がってとても美味しく仕上がります。

③ホッキカレー

苫小牧名物ホッキカレー,ほっきカレー

北海道苫小牧市のソウルフードといえば「ホッキカレー」。ホッキカレーは水揚げ量が多い東北の福島県浜通りでも同じように名物となっています。どちらも昔は肉よりもホッキ貝の方が安価だったため、肉の代わりに入れるようになったことが始まりだったとか。ホッキカレーを作る際は、最初から煮込むと硬くなってしまうので、火を止める少し前に入れるといいでしょう。カレーとホッキ貝の甘みが相性抜群ですよ。

④その他

ホッキ貝のサラダ

単体だとボリュームの少ないホッキ貝も、サラダにすると主役級になり、かつみんなで美味しくいただくことができておすすめです。和風、洋風どちらにも良く合い、見た目もホッキの朱色が鮮やかに映える一品になりますよ。また、ジューシーでぷりぷりな食感を味わうならバター焼きや酒蒸しがおすすめです。夏の季節にはバーベキューで大きな貝殻を器がわりにして、バターを入れて焼いて食べると絶品です。

【ホッキ貝】を食べる際の注意点について

ホッキ貝は生で食べられることが多い貝です。寄生虫や食中毒の危険性について、それぞれ確認していきましょう。

◆生で食べる場合は寄生虫に注意

ホッキ貝にいる寄生虫は主にヒモビルアニサキスです。ヒモビルは実は食べても全く問題がなく、食中毒になることはありません。ただ細長い3〜4cmの幼虫みたいな見た目をしているため、取り除くことが無難でしょう。

寄生虫の中でも有名なアニサキスは貝類の内臓にも生息しています。そのため、60℃以上で1分以上加熱するか、マイナス20℃以下で24時間以上冷凍してアニサキスを死滅してから食べるようにしましょう。家庭でホッキ貝を刺身や寿司など生で食べたい場合は、一度冷凍することで食中毒のリスクを回避し、安全に召し上がってくださいね。

◆妊娠中や授乳中の方、お子様にとっては?

生で食べるのが美味しいホッキ貝ですが、妊娠中の方は妊娠前に比べて免疫力が低下しているため、少量でも食中毒になる危険性があります。妊娠中の食中毒が危険と言われる理由は、下痢を繰り返すことで子宮収縮を起こし、胎児に影響を及ぼすことがあり得るからです。そのためホッキ貝は生で食べず加熱して食べるようにしましょう。ホッキ貝はタンパク質や、鉄分、ビタミンB群、ミネラルを多く含んでおり、加熱すれば妊娠中や授乳中の方、お子様から大人まで幅広い世代におすすめすることができる食材です。是非日々の食事に取り入れてみましょう。

【ホッキ貝】を生で買った際の下処理方法

ほっき貝を捌く

ホッキ貝の下処理方法をご紹介します。筆者もよく下処理を行いますが、コツを掴めば少し手間ですが意外と楽ちんですよ。スーパーで新鮮なホッキ貝を見つけたら是非試してみてください。

《砂だし》

ホッキ貝の中に含まれる砂は、アサリなどのように塩水につけても砂がなかなか抜けません。殻付きのホッキ貝を購入した時は、殻を外したらウロ(内臓)を取り除き、塩水で洗うことで簡単に取り除けます。

《殻を割って可食部位を取り出す》

まずはじめに、ホッキ貝が水管(呼吸する器官)を出すための隙間にナイフを差し込みます。貝の左右には貝柱がついているので、殻の内側から殻に沿ってナイフを滑らし、貝柱を外しましょう。身を引き出した後は、水管を切り落とし、身とヒモを切り離します。身は半分に開き、中にあるウロを包丁で取り出します。ヒモについている黒い部分は臭みの原因になるため、指で摘んで取り除きましょう。最後にぬめりを取るために塩もみし、冷水で洗い流して完成です。

《保存方法》

ホッキ貝は生命力が強く、殻付きで冷蔵すると約1週間、剥き身でも2〜3日生きています。殻を外したものはなるべくその日のうちに食べ切りましょう。冷凍する時は、生のまま冷凍すると食感も味も変化して美味しくないため、一度さっと茹でてから水気を取り、ラップに包んだものを保存用袋にいれて冷凍保存しましょう。

新鮮なホッキ貝の選び方

新鮮なほっき貝

ホッキ貝を購入する時は、手に持った時サイズが大きくずっしり重みがあるものを選びましょう。また、水管に触れた時に勢いよく閉まる貝はイキが良く特に新鮮でおすすめです。

まとめ

北海道を代表する味覚であり、1年を通して楽しめる「ホッキ貝」の生態や栄養素とその働き、おすすめの食べ方や注意点について解説しました。生は勿論、煮ても焼いても揚げてもカレーに入れても…どんな料理でもホッキ貝は美味しく召し上がれます。冷凍品も多く出回っているため、「自分で捌くのはちょっと…」という方でも気軽に食べることができますよ。ただし、苫小牧にいらした時は是非、海鮮食堂でぷりぷりの生やホッキカレーを味わうことをおすすめします!!

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