【鮭】を食べよう!栄養と効能、サーモンとの違いやおすすめの食べ方

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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「捨てるところが無い魚」ともいわれる鮭は、日本人の食卓に欠かせない食材として古くから重宝されてきました。コラーゲン豊富な皮、良い出汁が出るアラ、内臓は「メフン」という北海道の郷土料理としても食されます。そんな鮭の栄養素とその効能を管理栄養士の筆者が詳しく解説します。旬の時期や美味しい食べ方まで、鮭づくしの情報をお届けします。

鮭、北海道を代表する魚を詳しく知ろう

獲れたての秋鮭,コンテナいっぱいの北海道の鮭

鮭が北海道で食べられてきた歴史は、北海道の先住民「アイヌ」の人々が貴重な食糧として捕獲し食べていた1800年代にさかのぼります。北海道で漁獲される鮭の主な魚種はシロザケであり、「秋鮭」「トキシラズ」「アキアジ」という呼び名で親しまれています。

北海道における漁獲量は全国の約8割を占めています。サケは稚魚のうちに河川から海に出て、産卵期になると生まれ育った川に戻り交尾を行う「里帰り出産」の習性を持つ珍しい魚です。 鮭は「捨てるところが無い魚」として様々な部位を食べたり利用したりしますが、人間が食べるだけではなく、動物が食料として補食したり、産卵後の鮭の死骸は生物のエサとなって分解され、川や森の栄養素ともなるのです。

旬の時期

鮭の旬は10~11月。海で2~8年暮らして成魚になった頃、産卵期の鮭が川に戻る時期に市場に多く出回ります。川だけでなく、海で網を使い漁獲する方法もあります。5月から8月にかけての春~夏にもサケ漁が行われますが、こちらは海での漁となります。

鮭は過去に、乱獲されることで大幅に漁獲量が減ってしまった時期がありました。その後、世界的な条約や河川での稚魚の保護活動、稚魚の孵化場の設立等により漁獲量は安定しています。

様々な呼び方について

時鮭,トキシラズ

鮭には様々な呼び名があることをお伝えしましたが、先述した三種類の呼び名(秋鮭、トキシラズ、アキアジ)の他にもまだまだあります。

秋鮭、アキアジは秋に日本沿岸に回帰してきたもので婚姻色の出ていないものが「銀毛(ぎんげ)」、出たものを「ブナ」と呼びます。

「トキシラズ(時知らず)」は、春ごろに北海道太平洋沿岸から三陸沿岸にかけて漁獲される鮭を指します。秋に回帰する一般の鮭と違い、時季外れに漁獲されることからトキシラズと呼ばれています。

また「目近(メジカ)」は本州の日本海側に回帰する鮭のことで、秋にオホーツク海側で漁獲されます。トキシラズとメジカは脂乗りが良く食味の良い鮭として知られています。

さらに「鮭児(ケイジ)」と呼ばれる脂肪含有量が高い鮭があります。鮭児は漁獲量が少ないため希少価値が高く、「幻のサケ」と呼ばれて高値で取引されます。

旬の時期=一年で最も鮭が美味しい時期というイメージがありますが、秋の産卵を迎えたメス鮭は肉質や味はイマイチ。お腹に抱えた卵「いくら」に価値があり、鮭の身自体はイクラに栄養を与えることでボロボロになってしまいます。産卵後のメス鮭は古くから「ホッチャレ」と呼ばれ、北海道弁で「すてるもの」を意味します。秋に食用として出回る鮭の身は雄の方が美味しく価値があります。

食材としての活用方法

秋鮭の切り身,鮭の加工場

鮭は一般的には生で食べるほか、塩を振って塩鮭で食べる事が多いかもしれません。しかし、他にもたくさんの活用方法がある食材です。

塩蔵(新巻鮭)冷凍(ルイベ)干物(トバ)肝臓の塩辛(メフン)などの日持ちする加工品にしたり、卵はいくら筋子として出回ります。他にも皮はチップスになったり、鼻の軟骨は「氷頭」として珍味として扱われたり、骨は出汁をとることもできます。

産卵を終えたメスや、産卵前に漁獲されていくらだけを取り出された鮭は「魚醤」や「鮭節」などの加工品に有効利用されています。

アイヌの保存食としても重宝されていた

アイヌの鮭の保存方法

北海道の先住民族の「アイヌ」の人々は鮭をより長く保存し食べ続けることができるよう、保存技術も持っていました。アイヌの伝統保存食「サッチェプ」がそれに当たり、「乾いた鮭」という意味を持ちます。サッチェプは塩漬けにしてしばらく寝かせた後、水洗いして尾を上にして丸太につるし、3か月間寒風にさらしてから屋内の囲炉裏の上につるしてじっくり燻すことで出来上がります。サッチェプは「オハウ」というアイヌの伝統食である汁物にして食べます。

鮭に含まれるカロリーや栄養素、その働きについて

生鮭のフィレ

シロサケ100g当たりの栄養価はエネルギー133kcal、タンパク質22.3g、脂質4.1g、炭水化物0.1g、食物繊維は0gです。秋が旬のシロサケはタンパク質が多く、脂質も控えめです。 シロサケに含まれる栄養素について、詳しく解説します。シミやしわの原因となる紫外線などの光から肌を守る「美肌効果」、血液中の脂質の酸化を抑えることによる「動脈硬化の予防」、栄養が届きにくいところまで届くことから「眼精疲労の改善」などが期待されている食材です。

①タンパク質

タンパク質は筋肉や体の組織、爪や髪の毛を構成する栄養素です。また、1g4kcalの体を動かすエネルギーにもなります。タンパク質が不足するとむくみや筋肉量の低下などが起こります。
魚のタンパク質は肉と比べると消化しやすいことが特徴です。

②不飽和脂肪酸(DHA・EPA)

魚の脂質には不飽和脂肪酸であるDHA・EPAが豊富に含まれており、鮭も例外ではありません。

DHA・EPAは共に生活習慣病の予防や改善に役立つ脂質です。特に、DHAは記憶力の維持増進・EPAは血管疾患の予防に役立つ脂肪酸です。

不飽和脂肪酸は魚の身よりも皮付近に多いため皮まで召し上がることをおすすめします。

③ビタミン類

鮭には他にもビタミンDビタミンB群が多く含まれています。ビタミンDはカルシウムの骨への沈着をサポートすることから骨を丈夫にする働きがあります。そのためカルシウムが多い乳製品との相性が良い栄養素です。

また、魚には珍しくビタミンB群を多く含む食材です。ビタミンB群は食べ物からエネルギーを作り出す際に必要不可欠な栄養素です。

④アスタキサンチン

鮭は、じつは白身魚に分類され、鮭の身の赤さはエサのプランクトンの色素が由来となっています。プランクトンの色素は「アスタキサンチン」と言い、鮭はプランクトンを大量に食べることでアスタキサンチンを身に蓄積する性質があります。

アスタキサンチンには強力な抗酸化作用があり、細胞の劣化を防ぐ役割があります。抗酸化物質と言えば、ビタミンEやビタミンCも抗酸化作用があるのですが、アスタキサンチンは他の抗酸化物質にはない、「脳にまで届く」抗酸化作用を持ちます。そのため、脳の老化防止や脳血栓・脳梗塞を予防できる抗酸化物質です。アスタキサンチンの強い抗酸化作用はビタミンEの何千倍ともいわれています。

また、アスタキサンチンはビタミンCと一緒に摂取することで、再利用できるという持続型の栄養素です。

部位ごとの特徴的な栄養素

鮭は大きな魚です。1尾あたり平均60~70㎝もあり、重さは2~3㎏です。大きいものでは5kg以上も!1人で1食に丸ごと1匹食べられる魚であれば栄養素を丸ごと摂取することができますが、大きな魚は部位ごとに栄養価が違います。ここでは鮭の部位ごとに特徴的な栄養素をお知らせします。

鮭の「皮」

鮭皮のフライ

鮭の皮にはタンパク質の一種であるコラーゲンと、脂質(DHAやEPA)が多く含まれます。鮭料理や焼き鮭を召し上がる際には皮ごと食べるようにしましょう。皮の食感が苦手な人はしっかり焼くことでパリッとした焦げ目をつけると食べやすいですよ。皮ごとフライや天ぷらなどにするとより食べやすいです。

鮭の「カマ」

秋鮭のカマ

鮭のカマは脂が乗って美味しい部位です。鮭の目の周りに特に多く含まれているのがDHAやEPA。骨が入り組んでいて食べるのが少し難しい部位ですが、焼き物や汁物にしてほじくるように食べましょう。 出汁として利用するだけでも汁に旨味と栄養素が溶け出るので、捨てるのであれば出汁を取る目的で使ってみてください。

鮭の「ハラス」

鮭のハラス焼き

鮭のハラスは部位の中で一番脂質が多いです。脂質が多いということは、カロリーも高め。トロトロの脂がたっぷりのハラスはご飯のお供やおつまみに最高ですが、ダイエット中の方は控えめにしましょう。

その他の部位

鮭の頭の先(鼻)の部分を「氷頭(ひず)」と言います。氷頭は軟骨なため、コリコリした食感が楽しめます。コラーゲンやヒアルロン酸と言った美肌効果の期待できる栄養素が多く、骨なのでカルシウムも豊富です。

北海道では薄切りにして酢漬けにした「氷頭なます」や刺身のように醤油をつけて食べることが多く、珍味として親しまれています。

サーモンとの違い

サーモンの刺身

鮭とサーモンの違いは「天然か養殖か」です。天然物である鮭にはエサ由来の寄生虫が体内に潜んでいる割合が高いため、生食はできません。「ルイベ」という、2日間以上冷凍した生鮭をスライスして半解凍で刺身のように食べる郷土料理は寄生虫を冷凍して殺してから食べるという理にかなった方法です。養殖物であるサーモンはエサを完全にコントロールできるため、寄生虫の心配が無いため生食できます。

サーモンは100gあたり241kcal、タンパク質は20.1g、脂質は16.5g、炭水化物は0.1g含みます。シロサケと比べてみると、脂質が多くカロリーも高めです。

栄養素を逃さない調理のコツ

サーモンルイベ,鮭のルイベ

鮭は脂溶性の栄養素も水溶性の栄養素も含みます。栄養素を逃さないようにするには調理した汁ごと食べられる石狩鍋などの汁物や、冷凍した生鮭をスライスして食べる「ルイベ」がおすすめです。また、鮭を使った炊き込みご飯も丸ごと栄養素を摂取できるおすすめ料理です。

栄養素を効果的に摂取できるおすすめレシピ

鮭の栄養素を丸ごと摂取するのにおすすめの調理法は「炊き込みごはん」です!いろいろな食材を一度に食べることができる上、多めに炊いて冷凍したり、おにぎりにしてランチにしたりと、とても便利な料理です。ご飯に鮭の旨味が染みわたる炊き込みご飯のレシピを紹介します。

鮭の炊き込みご飯

鮭の炊き込みご飯

秋らしく塩鮭とまいたけを使い、生姜が香る炊き込みご飯です。鮭のピンク色が鮮やか!ニンジンや油揚げ、ヒジキなどを入れてアレンジも可能です。

《材料(3~4人前)》

  • 米 2合
  • 塩鮭 2切れ(120gほど)
  • まいたけ 50g
  • 生姜 親指の第一関節分くらい
  • (●)みりん 大さじ2
  • (●)薄口醤油 小さじ2
  • (●)顆粒だし 小さじ1
  • 小葱 少々

《作り方》

  1. 米をとぎ、ざるの上に上げて水気を切っておく。
  2. 生姜を千切りにし、マイタケは適度な大きさに割いておく。
  3. 炊飯器のお釜に米とまいたけ、塩鮭、(●)の調味料を入れて2合の目盛りまで水を入れる。
  4. 鮭を入れ、炊飯する。
  5. 炊きあがったら鮭の骨を取り、ざっくり混ぜて茶碗に盛り、小口切りにしたネギを散らして完成。

まとめ

鮭全体の栄養素から部位ごとの特徴的な栄養素、その食べ方などを紹介しました。鮭は生では食べられないため、刺身で食べたいときには2日間以上冷凍した物か、サーモンを食べましょう。

北海道の郷土料理にも鮭を使ったものが盛りだくさん!秋の生鮭の季節になった時には、ちゃんちゃん焼きや石狩鍋にも挑戦してみてください。

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