疲労回復の効果が期待されるアスパラギン酸というアミノ酸をはじめ、ルチンや葉酸、β-カロテンなど豊富な栄養素を含む「アスパラ」。和洋中問わず様々な料理との相性が良くて美味しいことから、新鮮なものが手に入る旬の時期にはたくさん食べておきたい野菜の一つです。
今回はアスパラが含む栄養成分とその働き、部位や色による味や栄養価の違い、おすすめの食べ方や保存方法などについて、管理栄養士の筆者が詳しく紹介します。
目次
アスパラはどんな野菜?
アスパラは「アスパラガス」が正式名称です。北海道民のほとんどは「アスパラ」と呼ぶため、本記事でもアスパラガスではなくアスパラと表記しますね。
店頭でよく見かけるのは太陽の光をたっぷり浴びて育った「グリーンアスパラ」。他にも土を寄せたり遮光をして暗闇の中で育てることで緑色に着色させない育て方をした「ホワイトアスパラ」、紫色の色素を含む「パープルアスパラ」があります。
日本では18世紀後半にオランダから観賞用で渡来したのが始まりで、比較的新顔な野菜です。北海道でも18世紀の後半には開拓使がアメリカから種を取り寄せて栽培していました。
雌雄異株の多年生草本作物で、まだまだ不思議がいっぱいの野菜。種を植えて2~4年間は根の部分を大きく育てます。地中で根がしっかりと張り、こまめに手入れをすることで毎年立派なアスパラが生えてくるのです。栽培方法によっては春だけでなく、夏や秋にも同じ株から収穫することができます。
北海道は全国生産量No.1。道内の産地や旬について
国内では、北海道が全国第1位の出荷量を誇ります。北海道の中でも名寄市と、中富良野町、美瑛町がトップスリーです。
アスパラの旬は春がメインです。ハウス栽培と露地栽培で収穫スタート時期に差はありますが3月~6月の間の約4ヶ月間がアスパラの収穫時期です。 栽培方法によっては夏や秋にも楽しめる「夏アスパラ」を収穫することもできるため、旬の時期は春と夏で2回楽しめるということになります。
アスパラの栄養価と栄養素の働きを紹介
アスパラの栄養価は100gあたり22kcal、タンパク質2.6g、脂質0.2g、炭水化物3.9g、食物繊維は1.8gです。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、2.1gです。 このほかにもアスパラには様々な栄養素が含まれています。それぞれの様々な働きを詳しくお伝えします。
◆アスパラギン酸
アスパラには旨味成分でもあるアミノ酸の「アスパラギン酸」が多く含まれています。アスパラギン酸は体内で最も早くエネルギーに代わるアミノ酸です。疲労回復の速度を早める働きもあり、栄養剤に使われていることも。
他にも甘みを示すアミノ酸の「セリン」も含まれているため、アスパラは旨味と甘味が強い野菜となっています。他の野菜には無い味わいが、根強いファンの舌をつかんで離しません。
◆ルチン
「ルチン」は高血圧予防の効果があるといわれている色素成分の一種です。
血管を強くしなやかに保ったり、血の流れをスムーズにしてくれます。生活習慣病の予防になる栄養素として注目を浴びています。
◆葉酸
アスパラは100g中に「葉酸」を190μg含みます。野菜の中でもトップクラスの含有量です。 葉酸は遺伝子を形成する「塩基」という物質を作るために必要です。正常な細胞分裂や、赤血球を作る際にも必要不可欠な栄養素です。葉酸が不足すると貧血になることも。
◆食物繊維
「食物繊維」は便秘の解消に役立ったり、脂質や糖の吸収を妨げる働きを持ちます。
意識して摂取しなければ不足してしまう栄養素で、日本人の平均摂取量は理想値よりも低いのが現状です。 アスパラをはじめとした野菜、果物、きのこ類、海藻類、豆類などを積極的に食べることで不足を防ぐことができます。
◆そのほかの栄養素
アスパラには上記の栄養素の他にもカリウム、ビタミン類、β-カロテンが豊富に含まれています。カリウムはむくみや高血圧の予防、ビタミン類やβ-カロテンは免疫や体の調子を整える働きを担います。
旬の時期にはモリモリと食べておきたい野菜ですね。
美味しいアスパラの見分け方
畑からの採れたてや、農家から産地直送されるアスパラに勝るものはありませんが、スーパーでアスパラを購入する際に抑えておきたいポイントを紹介します。
まずは茎がまっすぐで色が均一なこと。それから持った時に重さがあり、しなしなしていないこと。穂先が開いていないことと、切り口が乾燥してなくてみずみずしいこと。これらが新鮮かどうかを判断できるポイントです。
色の違いによって変わる味と栄養素
ホワイトアスパラはグリーンアスパラと同じ栄養素が入っていますが、色素が少ない分栄養も少なめです。味はというと、えぐみが少なくより洗練された甘みや旨味を感じることができます。繊維質もグリーンアスパラより少なく、軟らかいのが特徴です。
紫アスパラはグリーンアスパラよりも味が濃く、栄養価も高く、甘味を強く感じます。ただし、紫アスパラは加熱すると緑色になってしまうので色を活かしたい場合は注意が必要です。紫色が退色する原因は、加熱のダメージで紫色の色素が壊れてしまうためです。紫アスパラを食べる時は生のままで紫色を楽しむか、加熱して味を楽しむかのどちらを取るかを考えて調理しましょう。
アスパラの栄養素を逃さずに食べるおすすめの調理法
茹でて食べる事が多いアスパラ。しかし、茹でるとお湯に水溶性の栄養素が溶け出てしまうため、焼いたり炒めたり揚げるような油を使用した調理法の方が栄養素が無駄になりません。
新鮮なアスパラほど風味があって味も良いです。加熱時間も短く済みますので、さっと炒めたり焼いて食べることをおすすめします。
アスパラの根元付近の皮は硬くて繊維質です。そのまま食べると口当たりが悪いのですが、ポタージュスープにすると繊維が気にならないで丸ごと食べられますよ。食物繊維もより多く摂取することができます。
鮮度を保つ保存のコツ
アスパラはスーパーでも冷蔵コーナーに並んでいることが多く、畑から直送のアスパラも収穫後は選別されてすぐ冷蔵庫へ。温度が上がると鮮度がガクッと落ちるため、輸送中も冷蔵され続けています。
家で保存するときにはアスパラをビニール袋に入れて保湿しながら、立てて保存しましょう。農家直送のアスパラも、段ボールに入れられていますが、常に縦向きで輸送されています。横向きでアスパラを保存すると、だんだん曲がっていってしまうので注意。保存期間は冷蔵で2~3日ですが、どんどん味が落ちるためなるべく早めに加熱して食べるか作り置きすると良いですよ。
冷凍保存も可能です。アスパラをさっと洗った後、しっかり水分を拭き取ってから使いやすい大きさに切って、フリーザーバックに入れて冷凍するだけ。食べる時には冷凍のままスープや炒め物に使いましょう。2〜3か月は美味しく使うことができます。
白と紫アスパラの保存の注意点
ホワイトアスパラガスは光に当たると変色し、紫アスパラは光に当たることで色がだんだん緑色に近づいていきます。
保存するときは新聞紙にくるむなどしてなるべく光に当たらないようにし、早めに食べ切るようにしましょう。
栄養満点のアスパラレシピ
新鮮なアスパラはサッとゆでてマヨネーズを付けるだけでも美味しい!でも、ちょっとひと手間加えるだけでオシャレにもなります。今回は栄養満点なアスパラを使った見栄えのするレシピを紹介します。
春の味覚を堪能しましょう!
①アスパラとサーモンの焼き漬け
サーモンのピンク色がアスパラと相まって春らしさを演出してくれる1品です。 お弁当のおかずにもどうぞ。細めのアスパラの方が味が染みます。
《材料(2人前)》
- アスパラ(細めでOK) 5~6本
- 生鮭やサーモン 120g
- (●)醤油 大さじ2
- (●)みりん 大さじ2
- (●)酒 大さじ1
- (●)砂糖 大さじ1
- 焼き油 少々
《作り方》
- アスパラは根元から5㎝程の範囲をピーラーでぐるりと剥き、根元2~3㎜を切り落として4㎝の長さに切り揃える。
- サーモンは食べやすい大きさに切る。皮付きの方が焼いたときに崩れにくい。塩を少し振っておく。
- (●)の材料を小鍋に入れて中火で熱し、砂糖が溶けたら火を止める。
- フライパンに油を入れて中火で熱し、アスパラとサーモンを両面こんがり焼き上げる。
- 保存容器に4と3を入れ、ラップをして1時間ほどなじませたら完成。
②アスパラグリルのポーチドエッグ乗せ
黄身がトロトロのポーチドエッグをこんがり焼き上げたあま~いアスパラと一緒に口に運びます。素材の味だけで至福の味!
焼いたベーコンや生ハムを添えたり、粉チーズをかけても美味ですよ♪
《材料(2人前)》
- アスパラ6~8本
- オリーブオイル 大さじ1
- 卵 2個
- 塩、黒コショウ 少々
《作り方》
- アスパラをさっと洗い、根元から5㎝までの間を1周ピーラーで剥く。切り口を2~3㎜切り落とし、フライパンに入る長さに切る。
- フライパンにアスパラとオリーブオイルを入れ、蓋をして弱火で10分間加熱。
- 蓋を取り、中火で焼き上げる。
- アスパラを蒸している間にポーチドエッグを作る。沸騰したお湯(約700㏄)に酢(大さじ2)と塩(小さじ1)を入れて箸でお湯をぐるぐるかき混ぜ渦を作る。渦の真ん中にお椀に割った卵をそっと入れ、また箸で3週ほどお湯をかき混ぜた後は弱火で2分程茹でる。お玉で掬ってキッチンペーパーの上に乗せる。
- 皿にアスパラグリル、ポーチドエッグを乗せ、塩コショウを振りかけ完成。
アスパラの下ごしらえの注意点
アスパラを調理するレシピの中で、「半分から下のすんなり折れない部分は皮が硬いので折って捨てる」という下ごしらえ方法があります。これはせっかくのアスパラの美味しい部分を捨ててしまうことになるため、やめましょう。 皮の硬い部分はピーラーや包丁で剥くだけで大丈夫。根元に近い部分の方がえぐみが少ないため、よりアスパラの甘さをダイレクトに感じることができますよ。
まとめ
アスパラの産地や栄養価、含まれる栄養素の働き、簡単にできる栄養満点なアスパラレシピをお伝えしました。
北海道の長い冬を土の中で耐え、春に一気に出てくるアスパラは贈答用にもよろこばれる「ごちそう」ともいえます。旬の時期にぜひたくさん食べましょう!