「緑黄色野菜」という栄養価の特に優れた野菜の分類に属する人参。β-カロテンが豊富で他にもカリウムや食物繊維がたっぷり含まれています。
今回は人参が持つ栄養素の働きや効果と、捨ててしまいがちな葉っぱや皮の活用方法、栄養素を逃がさない上手な食べ方などを管理栄養士が解説します。
生でも煮ても焼いてもおいしい人参!たくさん食べましょう♪
目次
「人参」とはどのような野菜か
人参はスーパーに行けばいつでも買うことができる野菜です。しかも、生鮮売り場の人参はほとんどが国内産ということからも、1年を通して日本のどこかで生産・収穫されているということがわかります。 カレーや肉じゃが、煮物や野菜炒めなど様々な料理に彩りを添えてくれる人参。どんな野菜なのかについて解説します。
◆緑黄色野菜の一つ
栄養価が高い野菜を特に「緑黄色野菜」と呼びます。
β-カロテンが100gあたり600μg以上含まれる野菜が「緑黄色野菜」に分類されますが、皮付きの生の人参は100gあたり8600μgものβ-カロテンを含みます。
実は「β-カロテン」の名前の由来は人参です。ニンジンを英語で言うと「キャロット」ですが、キャロットが訛って「カロテン」になったという訳です。栄養素の名前の由来になるほど栄養豊富だ、ということがわかりますね。
◆人参の生産量全国No.1は北海道!
都道府県別の国内生産量第1位は北海道。全体の出荷量の約3割が北海道産となります。
そんな北海道で栽培される人参の旬は夏から秋にかけて。雪が解けるころに出回る「越冬人参」もありますが、それ以外の時期は千葉県や茨城県での生産が多いです。
北海道の中で栽培が盛んなのはオホーツク地方、十勝地方、後志地方です。
人参の優れた栄養素について知ろう
人参(皮付き)は100gあたり39kcal、タンパク質0.7g、脂質は0.2g、炭水化物は9.3g、食物繊維は2.8gです。糖質は「炭水化物-食物繊維」で求めるため、糖質量は6.5gです。
人参に多く含まれる栄養素を紹介します。
①免疫力を高める β-カロテン
皮付き人参100g中に8600μgのβ-カロテンが含まれています。β-カロテンは体内でビタミンAと同様に免疫力のアップや粘膜の健康を保つ働きをします。
ビタミンA自体はレバーやバター、ウナギなどに多く含まれますが、ビタミンAの過剰摂取は体に不調をもたらすこともあります。その点、β-カロテンは摂りすぎても過剰症はありません。
②体のむくみをとる カリウム
皮付き人参100g中に300㎎のカリウムを含みます。カリウムは身体の水分と塩分のバランスを取る大切なミネラル分です。体内の塩分濃度が高くなると水分と一緒に塩分を排出する働きを持ちます。その結果、血圧を下げたり、むくみを改善してくれることになります。
カリウムは熱には強いですが水に溶け出る性質があるため、カリウムを多く摂取したいときには生のままやかき揚げ、ポタージュや汁物などがおすすめです。
③食物繊維
皮付き人参100gあたり食物繊維を2.8g含みます。皮を剥いたからと言って格段に少なくなるわけではなく、100gあたり2.4gの含有量になります。
食物繊維は便のカサを増やしたり、腸の蠕動運動を促す働きがあるため、便秘気味の人は皮つきのまま調理したほうがより多くの食物繊維を摂取することができます。
人参の葉っぱや皮にも栄養素が
皮には食物繊維が多く、葉には根には少ない鉄やカルシウム、葉酸を多く含みます。
鉄は正常な赤血球に必要不可欠なミネラルですし、カルシウムは骨や歯の健康を守ります。葉酸は細胞分裂を正常に行えるようにサポートする栄養素です。
このことから、人参の皮や葉は捨てるともったいないのですが、葉付きの人参はなかなか流通していないため見つけたら即買いです。
人参の葉っぱは鮮度が命!しなびやすい上、人参に葉が付いたままだと根の部分まで鮮度が落ちてしまうため、葉付き人参はすぐに葉と根に切り分けましょう。
種類によって異なる栄養素。普段食べているのは東洋系?西洋系?
最近見かけるようになったカラフル人参。オレンジの他にも黄色や紫、赤、黒や白のニンジンがあります。
通常のニンジンに比べてみると細長く、人参らしい味が強く、みずみずしさに欠けるものが多いのですが、これは「東洋系」の人参の特徴です。
人参の原産地は中央アジアのアフガニスタン、ヒマラヤ山脈と言われています。ヨーロッパに伝わったものが「西洋系」、東アジアへ伝わったものが「東洋系」の品種となっています。
人参の原種は白く、今メジャーなオレンジ色の人参が発達したのは16~17世紀ごろと言われています。
日本へは16世紀ごろに東洋系の品種が中国から伝来しましたが、1800年ごろにフランスやアメリカから持ち込まれた「西洋系」が主に作付けされています。
「金時人参」や「島人参」は東洋系の品種です。
生のままと加熱、栄養素を逃がさずに食べるおすすめの調理法は?
生の人参よりも茹でた人参の方がβ-カロテンの吸収率が高まります。
その上、β-カロテンは油との相性が良い栄養素です。油とβ-カロテンを同時に摂取することにより、吸収率が高まるのです。また、先ほど述べたようにカリウムは加熱に強く、水に溶け出る性質があるため、カリウム摂取のためにも油を使った料理が好ましいです。 人参フライやかき揚げ、炒め物や素揚げなどが良いですね。カレーや豚汁なども、肉の脂と一緒に人参を摂取することができるためおすすめです。
栄養満点の人参レシピ
人参は生だとみずみずしく歯ごたえがある食感を楽しめ、加熱すると柔らかくねっとりとした口当たりになります。生のままでもおいしいですが、今回は栄養素を無駄なく摂取することに注目し、油を使った加熱レシピを紹介します。
◆卵と人参の炒め物(2人前)
沖縄の郷土料理「ニンジンしりしり」と呼ぶものです。オリーブオイルは油ですが卵黄にも油脂が含まれるため、人参が含むカリウムやβ-カロテンの吸収率を高めるためにはピッタリのレシピです!
《材料》
- 人参 1本
- 卵 2個
- オリーブオイル 大さじ1
- めんつゆ 小さじ1
- 塩コショウ 少々
《作り方》
- 人参を細めの千切りにする。「しりしり器」があれば便利。
- フライパンにオリーブオイルを敷き、1の人参を入れて中火で加熱。しんなりしてくるまで炒める。
- 溶いた卵を2に入れ、火が通るまで炒める。麺つゆ、塩コショウで味を調え完成。
まとめ
北海道が人参の生産量全国1位だということはご存知でしたか?
今回は人参の持つ栄養素の働きや、ルーツ、おすすめのレシピなどをお伝えしました。葉には根にはない栄養素を多く含むため、葉付き人参を手に入れた場合は無駄なく食べたいですね。
食材同士の組み合わせで栄養素の吸収率もアップ!ぜひ日ごろの調理に活かしてください。