じゃがいもは品種によって味や食感、調理特性が全く違うことはご存知でしょうか。
今回はじゃがいもの歴史を知ったうえで、全品種のごく一部にはなりますが22品種の特性とそれを使ったおすすめ料理などを紹介します。
目次
世界のじゃがいもの歴史
じゃがいもは南米のアンデス山脈原産と言われています。紀元前500年ごろから栽培され、寒い地域でも比較的よく育ち、貴重な炭水化物減として食べられてきました。「アンデス」や「インカ」という名前がつくジャガイモは南米の血を強く引く品種です。
ヨーロッパに渡ったのは15世紀の終わりごろですが、アンデス地方よりも気温が高くうまく育たなかった品種を改良することで大きく量産できるじゃがいもが出来上がったようです。
日本のじゃがいもの歴史
日本へ渡ったのは17世紀ごろ。インドネシアのジャカルタ経由で伝わったことから「ジャカルタイモ」がなまり「ジャガイモ」と呼ぶようになったといわれています。その後、アメリカから今の男爵やメークインの親となるイモがアメリカから伝来し、日本のじゃがいも文化が築かれてきたのです。
総務省の家計統計(2016年)から、今では日本人が1年間で食べる野菜重量ランキングの第5位(上位から順にキャベツ、タマネギ、ダイコン、トマト)がじゃがいも。都道府県別のじゃがいも消費量ランキングでは1位が新潟県、2位が北海道、3位が静岡県となっています。
じゃがいもの品種と特徴、おすすめ料理をご紹介
じゃがいもには品種が様々あります。男爵、メイクイーン、キタアカリが有名ですが、このほかにも数えきれないほどの品種があり、最近でも新品種がどんどんと登場しています。ごく一部になってしまいますが、一般でもなんとか入手できそうな品種をピックアップしてお伝えします。
普段使いしやすい『白系』じゃがいも
じゃがいもは大きく分けて、皮を剥いたときに白い肉色、黄色い肉色、その他のカラフルな肉色の品種があります。大まかなその3分類の中でも主要品種について解説します。
◆The王道!「男爵(だんしゃく)」
昔ながらの品種でほくほく感が強く、じゃがいも特有の大地の香りがするのが特徴です。ごつごつした形が特徴で肉色は白いです。
北海道のじゃがいもといえば男爵、というイメージが強く、根強いファンがいます。
◆皮が剥きやすくてしっとり系「メークイン」
つるんとした表皮で俵型のメークイン。メイクイーン、メ―クイーンとも呼びます。イモ臭さが少なく、あっさりとした味です。 皮が薄いので皮ごと食べやすく、煮崩れしにい品種なのでカレーやシチューにピッタリ!
◆ねっとりとした新品種「ピルカ」
まだ量が出回っていない新しい品種です。香が良く、ほっくりした中に甘味もあります。
煮崩れしにくい品種なので煮込み料理におすすめ。フライドポテトやガレットにすると本来の甘みも楽しめます。
◆とにかく大きく育つ「キタカムイ」
丸く大きく育つのが特徴。ほくほくとした食感もありつつ、ねっとり感も備えています。
肉色は真っ白で美しく、煮ても焼いても揚げてもおいしく食べられます。
汁物やフライドポテトにおすすめ。
◆ホクホク真っ白な新品種「スノーマーチ」
男爵よりも植物特有の病気に強いように品種改良されたジャガイモです。品種改良は味の改良だけでなく、病害虫により抵抗力を高めるためにも行われています。
スノーマーチは名前の通り白い肉色が特徴で、男爵よりも芽の部分が陥没していない、球状です。味はシンプルなじゃがいも。 いももちやマッシュポテト、ポテトサラダにどうぞ!
◆丸くて歩留まりが良い「とうや」
つるんとした丸い形をしているので皮が剥きやすく、加工業者に好まれる品種です。
ねっとりした食感は好みが分かれますが、じゃがいもののどが詰まる紛失が好きではない人はとうやで作ったジャガバターなら美味しく食べられるかもしれません。
煮崩れはしにくいので、煮物やしっとり系のポテトサラダ向きの品種です。
◆赤芽で俵型の「はるか」
2007年に登場した比較的新しい品種です。楕円形で芽がキタアカリのように赤くなる品種です。食味に優れており、しっとりなめらかで煮崩れもしにくいのが特徴です。
コロッケやポテトサラダに向きますが、シンプルにイモ自体の味も味わってみて!
◆南の有力品種「デジマ」
北海道生まれですが、産地は主に九州で春に作付け、収穫されます。
ホクホクとねっとりの間の食感で、春に収穫されるじゃがいもの中では一番おいしいと言われている品種です。
ポテトチップスにも使え、肉じゃがやみそ汁などに入れるとやや煮崩れしますがホクッとした食感が味わえます。
◆固め食感「ニシユタカ」
デジマを母に持ちイモがとにかく早く大きくなる品種で、主に九州で栽培されている春に収穫する品種です。
火の通りが早く煮崩れしない特徴を持ち、食感もやや硬めなことからおでんやシチューなどの煮込み料理におすすめ。ジャガイモのきんぴらもニシユタカで作ると柔らかくなりすぎずに仕上がります。
◆加工用がメインの「さやか」
卵型をしていて大きく育つ品種です。皮を剥いたときの可食部が多いので、給食や加工業者に好まれます。水分量が多く、若干水っぽく感じるかもしれません。 ホクホクしてはいますが煮崩れは男爵よりも少なく、煮物やふかし芋に合う品種です。
◆ポテトサラダ専用品種「ひかる」
ホクホクしていて煮崩れしやすい品種ですが、皮を剥いた後黒く変色しづらいので加工用に使われます。ポテトサラダにすると美味しく歩留まりも良いので、業界では「ポテトサラダ原料と言えばひかる」と言われているとか…。
味が濃い!『黄色系』じゃがいも
皮の色が赤や黒っぽくても肉色が黄色いものを集めました。肉色が黄色っぽいじゃがいもは総じて味が濃く、じゃがいも本来の甘みも強めに感じる印象です。イモの味をダイレクトに味わいたい人におすすめの品種です。
◆ほんのり甘い「キタアカリ」
皮が黄色っぽく、中身も薄い黄色がかった色をしていて芽が出る部分が赤い特徴があります。ほくほくしていて黄色い肉質から「黄金男爵」とも呼ばれます。男爵よりしっとりしていて香りが良いです。やや煮崩れしやすいので、コロッケやポテトサラダがおすすめ! 味は男爵よりも甘みがあり、土の香りも控えめ。若い人には男爵よりもキタアカリが好まれる傾向があります。
◆フライドポテト用の「ホッカイコガネ」
皮が黄色っぽく、中の芋の色もうす黄色。
細長く、フレンチフライ用のじゃがいもとして品種改良された芋です。
全くと言っていいほど煮崩れしない上、ホクッとした食感があるので煮物やカレーにも向きます。まずはやっぱり、フライドポテトで食べてみて!
◆希少な人気品種「インカのめざめ」
栗の様な風味と食感。雪蔵などで低温糖化させると非常に甘くなる品種です。
大きく育てることが難しい品種です。その年の気候によっては最大でもMサイズにも満たないことも…。
素揚げやグリル、蒸し野菜など、素材本来の味を楽しむ料理で味わってください!
◆こちらも希少「インカのひとみ」
インカのめざめの後継品種。インカのめざめと同じく、糖化させることで甘くなります。
ややねっとりした舌触りできめが細かい肉質が特徴的です。
小ぶりな芋が多くできる品種なので希少です。イモ好きならば見つけたら即買いしましょう!
◆新ジャガでも甘く感じる「レッドムーン」
皮が赤く楕円形のじゃがいもで、黄色い肉色はまるでサツマイモのよう。皮が薄く食べやすいので、特色ある皮ごと料理に使うと見栄えも良いです。味は甘みが強く、掘りたてでも他の品種よりも甘みを強く感じられます。
食感はねっとり系。煮崩れしにくいので煮込みやスープ、ポトフに良いですがイモ本来の味を味わえるシンプルな料理で食べるとレッドムーンの良さがわかりやすいです。
◆見た目はびっくり「デストロイヤー」(グラウンドペチカ)
レッドムーンの変異株で、皮の色が赤を基調とした紫のブチがある品種です。「デストロイヤー」と呼ぶのは、覆面をかぶっているレスラーのように見えるからという由来があります。
面白い名前とは裏腹に、味はレッドムーンなのでファンが多い品種。 貯蔵性が良いので糖化させて楽しむこともできます。
◆滑らかでホクホク甘い「アンデスレッド」
皮が赤く、肉色は黄色。味は甘みが強くて人気が高い品種ですが、芽が出やすいので貯蔵が難しい品種でもあります。
肉質はホクホクしながら滑らかで、煮崩れしやすい品種です。
皮ごとグリルや素揚げ、アヒージョなどに使うと色もきれいです。
◆アンデスレッドの奇形「タワラヨーデル」
アンデスレッドの株の中に、まが玉状の芋ができる変異株があったものに名前を付けた品種。形は変形しているものの、味や調理特性はアンデスレッドと同じと言えます。
◆フランス生まれの「シェリー」
フランス育ちの細長い形をした皮が赤いじゃがいもです。味はレッドムーンに似ており、甘みがある品種。煮崩れしにくいうえ、しっとりしながらもホクッとした食感もあり海外では人気の品種です。
日本では種イモが入手しづらく、小ぶりで収量性が良くないことからレア品種になっています。
色鮮やかな『カラフル』じゃがいも
3分類目のカラフル品種の紹介です。カラフル、と言ってもピンク系か紫系のどちらかになってしまいますが、どちらも野菜には少ない色なので食卓の彩りにはもってこいの品種たちです。
◆濃いピンク色が鮮やか「ノーザンルビー」
皮も中身もピンク色をしたじゃがいも。煮崩れはしにくく、しっとりねっとりとした食感が楽しめます。
加熱してもピンク色がきれいなので色を生かした料理に使用しましょう。ピンクのポテ トサラダやコロッケ、フライドポテトにしてもきれい!ピンクのビシソワーズも美しいです。
◆鮮烈な紫「シャドークイーン」
皮が黒っぽく見えますが、皮も中身も濃い紫色をしたジャガイモです。アントシアニンと呼ばれるポリフェノールが多いじゃがいもなので、他の品種よりも栄養価が高いと言えます。
煮崩れしやすいので色を活かして素揚げやポタージュ、ポテトサラダにしてみてはいかがでしょうか。ハロウィンにかぼちゃと一緒に二色のサラダにしても面白いです。
じゃがいも本来の味を確かめるおすすめ調理法
それぞれの品種がどんな特徴があり、どんな料理に向くかがわかったかと思いますが、シーズン初めの「初物」や新しい品種はじゃがいも本来の味をしっかり味わいたいものです。
その際、おすすめの食べ方は素揚げか、グリルか、ふかし芋(じゃがバター)。
数種類を食べ比べてみると品種ごとの特徴がわかりやすいですよ。
おすすめ料理①:じゃがバター
洗ったじゃがいも(中2個)を皮ごと耐熱皿に置き、上半分に十字に切り込みを入れる。ラップをピッタリとかぶせて500~600wのレンジで6分間加熱する。串や箸を差し、中心まで火が通っていればじゃがいもを開き、バター(小さじ2~)を乗せる。
お好みで塩や醤油をかけていただく。北海道ではバター+塩辛や、バター+いくらなどの組み合わせも!海苔の佃煮もおすすめ。
おすすめ料理②:グリルドポテト
洗ったじゃがいも(中2個)を皮ごと一口大の乱切りにし、ボウルに入れてオリーブオイル(小さじ2)をまぶす。グラタン皿にじゃがいもを入れ、魚焼きグリルやオーブントースターの中温で15~20分スッと串が通るまで焼き、完成。お好みで塩やハーブソルトやケチャップを漬けて召し上がれ。
おすすめ料理③:素揚げ
洗ったじゃがいもを皮ごと好みのサイズに切り、160℃~170℃の油でじっくり揚げる。火が通ったら油をきり、熱々のうちに塩をまぶして完成。
切り方によっても食感や味が変わるので工夫してみると面白いですよ!
まとめ
じゃがいもの歴史から品種ごとの特徴と、おすすめの食べ方をお伝えしました。じゃがいもが旬の時期には数種類をそろえて食べ比べをしてみると楽しいですよ。
品種によって味も風味も食感も違うので、様々試してお気に入りの品種を見つけてみてはいかがでしょうか。