【つぶ貝】を食べよう!栄養と効能、旬や種類ごとの特徴、食べる際の注意点(毒素)とおすすめの食べ方について

北海道食材の豆知識
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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「つぶ貝」は北海道ではホタテに次いで漁獲量の多い貝類で、刺身や焼き物は居酒屋メニューの定番であり、家庭でも煮たり蒸したりして食されている身近な食材です。今回は管理栄養士の筆者が意外と知らないつぶの栄養素とその働き、そして種類ごとの特徴やおすすめの食べ方について詳しく解説。唾液腺に「テトラミン」という毒素を持つため、丸ごと購入する際の注意点やさばき方もご紹介します。

【つぶ貝】について詳しく知ろう

北海道では食用の大きな巻き貝を通称して「つぶ」と呼びます。バーベキューで炉端焼きにして食べたり、法事の食事やオードブルなどには醤油で煮付けられたものがよく出されます。道産子である筆者も、幼い時からつぶ貝に慣れ親しんでおり、スーパーで生のつぶ貝が買える時期はよく購入して食べています。
コリコリとした食感や噛めば噛むほど滲み出る美味しさに魅了される人も多く、刺身や寿司ネタに使われるほか、珍味などにも加工されるほど愛されている貝です。まずは「つぶ」の生態や食材としての歴史などを学びましょう。

【つぶ貝】とは

3種類のツブ貝,エゾバイ,エゾボラ,灯台ツブ,青ツブ,貝つぶ

北海道で「つぶ貝」と呼ばれる貝は10種類以上あります。大きく分けて「エゾボラ類」と「エゾバイ類」の二つに分けられていますが、「エゾボラ類」の中にはエゾボラ(通称:真つぶ)ヒメエゾボラ(通称:青つぶ)が分類され、「エゾバイ類」の中にオオカラフトバイ(通称:灯台つぶ)などが分類されます。
大型で「マツブ(真つぶ)」と呼ばれる「エゾボラ」は主に刺身で食べられ市場でも高値で取引される高価な貝です。小型の「灯台つぶ」と呼ばれる「オオカラフトバイ」は煮付けや焼き物で食べられる事が多く、主に日高、十勝、釧路で漁獲されます。

エゾボラやヒメエゾボラは小型のつぶ貝で殻が頑丈で固く、ぐるぐる巻いている殻の肩にコブがあるという特徴があります。ヒメエゾボラは北海道沿岸ではどこでも漁獲されますが、東京以北の本州や朝鮮半島でも漁獲されます。大きさは「エゾボラ」で孵化後1年で殻高20mm・殻径12mm、5年後には殻高80~90mm、殻径50〜55mmになります。

つぶ貝は実は肉食で主に死んだ魚介類の肉や生きている巻貝や二枚貝を食べます。

味や食感の特徴

つぶ貝の寿司

新鮮な「つぶ貝」は生で食べるとコリコリとした歯ごたえがあり、アワビにも似ている食感ですが甘みや旨味はアワビよりもあると言われています。寿司屋や居酒屋でもネタや刺身として喜ばれ、お酒のお供にもピッタリの貝です。 炉端焼きやバター焼き、煮付けにするとクニっとした歯応えになり、ほんのり磯の香りがするもののアサリやハマグリといった二枚貝の仲間よりもクセがなく、和洋中とどんな料理にも使えるあっさりさです。

主な産地

漁場は北海道沿岸のほぼ全域です。船に餌が入ったカゴを積み、水深100〜200mの漁場に出かけて1本の縄にカゴを100〜200個つけて沈める「かご漁業」によって漁獲されます。餌にはイカやスケトウダラ、サメなどの肉が使われます。

灯台つぶ,オオカラフトバイ

小型の「灯台つぶ」と呼ばれる「オオカラフトバイ」は煮付けや焼き物で食べられる事が多く、主に日高、十勝、釧路で漁獲されます。

真つぶ(エゾボラ)と青つぶ(ヒメエゾボラ)

エゾボラ(真つぶ)やヒメエゾボラ(青つぶ)は小型のつぶ貝で殻が頑丈で固く、ぐるぐる巻いている殻の肩にコブがあるという特徴があります。ヒメエゾボラは北海道沿岸ではどこでも漁獲されますが、東京以北の本州や朝鮮半島でも漁獲されます。 ヒメエゾボラは他のつぶに比べて高水温に耐える特性があるため、さまざまなところに分布できると考えられています。

旬の時期について

旬は5月〜10月の暖かい時期であることもあり、北海道ではバーベキューでもよく食べられる貝です。 北海道で獲れる「つぶ貝」と呼ばれる貝は約10種類!スーパーでは先述した以外の種類は「貝つぶ」として販売されていたりもします。生鮮として販売されるだけでなく加工品としても大活躍!煮つぶのほか、塩辛や粕漬け、わさび漬け、味醂漬けなど珍味として1年中食べることができます。

【つぶ貝】の栄養成分とその効能について

つぶ貝の酒蒸し

つぶ貝100gあたりエネルギーは86kcal、タンパク質は17.8g、脂質は0.2g、炭水化物は2.3gです。カルシウムを60mg、鉄を1.3mg、亜鉛を1.2mg含みます。
代表的な栄養素はタンパク質やビタミンB12、ビタミンEです。貝類は他の魚介類に比べても低脂質で低カロリーです。タンパク質もしっかり含まれているため、ボディーメイク中の食事にもピッタリ!
それぞれの栄養素の働きについて解説します。

◆タンパク質

つぶ100g中に17.8gのタンパク質を含みます。他の魚介類と同様に、つぶは脂質の含有量が少なく高タンパクな食材です。
タンパク質は身体中の組織を形作る重要な栄養素で、1gあたり4kcalの熱量に変わるエネルギーの素でもあります。タンパク質は年を重ねることにより食事量が少なくなると不足しがちになります。つぶ貝は食事になるだけでなく、加工品であればおつまみとしても取り入れやすいため常備しやすいですよ。

◆ビタミンB12

つぶは100g中にビタミンB12を6.5μg含みます。ビタミンB12は貧血を改善したり、疲労回復速度を早めたり、便秘・食欲不振の改善や予防、神経を正常に保つために働く栄養素です。不足が続くと認知症や記憶力低下、うつ症状につながるとも言われています。
ビタミンB12の1日の摂取推奨量は2.4μgであるため、つぶを50gも食べれば1日に必要なビタミンB12をカバーする事ができます。

◆ビタミンE

つぶ100g中にビタミンEを1.8mg含みます。1日の摂取目安量は年齢や性別で前後しますが、5mg〜7mgが目安となっています。つぶ100gを食べるだけで1食に必要なビタミンEがおおよそカバーできる量です。
ビタミンEは強い抗酸化パワーを持つビタミンで、体内のありとあらゆる場面で酸化を防ぐ役割を持ちます。血管や血液・細胞や細胞膜の健康を守る結果、老化の防止にもつながる栄養素です。

【つぶ貝】がもつ毒素「テトラミン」について

つぶ貝の断面 ,毒素テトラミンを含む唾液腺の部分

「ヒメエゾボラ」をはじめ、北海道内で漁獲されるつぶ類の唾液腺「アブラ」とも呼ばれますが、この部位には「テトラミン」という成分が含まれており、食べると食中毒症状を起こします。微量であれば症状は軽くわからない程度ですが、つぶ数個分の唾液腺を食べるだけでも吐き気や頭痛、めまいを引き起こしたり、酔っ払ったような感覚になります。(死亡例はありません)
テトラミンは熱に強い性質を持つため、加熱しても分解されないため調理前に取り除く事が大切です。

“アブラ”を好んで食べる人もいるとかいないとか

上記で述べたように、つぶの唾液腺(アブラ)に含まれている「テトラミン」という毒素を摂取すると、まるで酔っ払ったような症状が出ます。このことから、「つぶのアブラで酔った」と言われることも。
「テトラミン」は神経を麻痺させる成分であるため、摂取後30分から1時間で頭痛やめまい、足のふらつきや吐き気などを引き起こします。数時間で回復しますが、この感覚がアルコールを摂取した時のような感覚であるため、唾液腺をつけたままつぶを食べてその感覚を楽しむ人もいるとかいないとか…。アブラによる症状は人によりけり。おすすめはしません。
ちなみに、第二次世界大戦中に酒が手に入らなくなり、ヒメエゾボラ(青つぶ)の唾液腺を食べて酔いを楽しんだという逸話もあります。

【つぶ貝】のさばき方のコツ

つぶ貝は加熱するとフタの隙間に鉄串や竹串を入れて引っかけ、クルクル回しながら身を取り出す事ができます。ただし、つぶを刺身で食べたり、バター焼きやフライにするには生のまま身を巻貝から取り出さなければいけません。

生のままつぶ貝の身を取り出す方法をお伝えしますね。

まず殻口を上に向け、1段目当たりの螺層(らそう)部分にキリなどで穴を開けるか、ハンマーで軽く叩いて殻を割ります。中身が取り出せたら「内臓のう」と「身」の部分を切り離し、唾液腺を取り除いてから調理します。
毒が含まれる唾液腺は乳白色で食道の両脇に1対あります。調理の際に内臓のうを切り離した後、唾液腺に切れ目を入れて指や先の細いもので取り除きましょう。
つぶはワタと呼ばれる内臓部分もほとんど食べる事ができますが、内臓部分は加熱して食べましょう。

美味しい【つぶ貝】の選び方と保存方法

つぶ貝を手に持つ,ツブ貝を選ぶ人

つぶ貝の捌き方や食べる際の注意点をお伝えしました。美味しいつぶ料理を食べるためには鮮度の良いつぶを選ぶ事が第一歩!新鮮なつぶ貝の選び方と、購入後の保存方法について解説します。

選び方のコツ

つぶ貝の貝殻がやや薄く重たいものは身が太っています。蓋が固く閉じていたり、元気よく動いているつぶは鮮度が良い証拠ですよ。

保存方法のコツ

殻付きのものはできるだけ当日中に食べましょう。冷凍も可能です。冷凍する場合は殻から取り出して唾液腺を除去してから冷凍すると使い勝手が良いです。
「真つぶ」の場合はバター炒めやアヒージョ、パスタなどに使えるように下処理をした後にスライスしてから小分け冷凍しましょう。
「灯台つぶ」の場合は大量に煮付けにした後、身だけ取り出してアブラを取ってから1度に食べ切れる量ごとに小分けして、ラップや保存袋に入れて冷凍すると食べる時にも便利ですよ。

【つぶ貝】のおすすめの食べ方

北海道民はバーベキューで居酒屋でオードブルでお寿司屋でお祭りで・・・とにかく「つぶ貝」をよく食べます。道産子管理栄養士でもある筆者がおすすめの食べ方を紹介します。

①刺身

真ツブ貝の刺身,つぶ刺し

大きな「真つぶ」はぜひ生で食べてみてください。コリコリした食感とほんのりとした磯の風味、貝類特有の甘さが素晴らしいハーモニー! 生で食べる場合は殻から取り出してアブラを取り除いた後、塩もみをしてヌメリをとり、スライスして完成です。

②煮付け

灯台つぶの煮付け,煮ツブを殻から取り出す

「灯台つぶ」や「青つぶ」は煮付けにして食べる事が多いです。醤油と砂糖、酒、生姜を少量入れた煮汁でコトコト煮ます。つぶ貝に火が通った後、一度しっかり冷ましてからもう一度温めると味がよく染みますよ。煮付けは食べる時にアブラを取り除くため、お子様が食べる時には注意してください。加工されている煮つぶはアブラが取り除かれているものが多いですが、まずは確認するようにしましょう。

③焼きつぶ

焼きツブ貝,つぶ焼き

「青つぶ」の焼きつぶは絶品です。つぶは焼くと固くなるイメージがあるかもしれませんが、焼きたての焼きつぶはやわらかくて香りが良いですよ!アブラを取り除けば肝まで美味しく召し上がれます。貝の口を上に向け、焼き台の上で酒と醤油を注入しながら身が乾かないように焼きます。バーベキューには欠かせないメニューでお酒がすすみます。

④蒸し物(酒蒸し)

つぶ貝の酒蒸し

牡蠣のように酒蒸しするのもおすすめです。フライパンにつぶを並べ、酒を適量ふりかけて蓋をし、中火から弱火で10分ほど蒸し焼きにします。殻を砕いて身を取り出す事が難しい場合、酒蒸しにしてから身を竹串で取り出し、アブラを取り除いてから他の料理に使用するという手もあります。

⑤おでん

つぶ串の入ったおでん

つぶ貝はおでんにもピッタリ!酒蒸しした後、アブラを取り出して串に刺し、おでんの煮汁に入れて一度冷ましてからまた温めることでしっかり味が染みたおでんつぶになります。

まとめ

北海道でよく食べられている「つぶ貝」について解説しました。生で食べてもよし、煮ても焼いても絶品のつぶはどんな料理にしても美味しく召し上がれます。加工品も多く出回っているため、「自分で捌いたり料理するのは難しいな」「貝のまま買うと貝殻がゴミになるから嫌だ」という人でも気軽に食べる事ができますよ。ぜひいろいろなつぶ料理を食べてみてください!

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