ラタトゥイユや夏野菜カレーには欠かせない野菜であり、どんな料理も彩り豊かに仕上げてくれる「ズッキーニ」。見た目はキュウリに似ていますが、実はかぼちゃの仲間です。今回は管理栄養士の筆者がβカロテンや葉酸、ビタミンCなどを適度に含むヘルシーなこの野菜について、詳しく解説。栄養を効果的に摂取するおすすめの食べ方や美味しいズッキーニの選び方、種類ごとの特徴についても紹介します。
目次
【ズッキーニ】について詳しく知ろう
平成の前半には珍しい野菜だったズッキーニ。日本では新顔野菜、とまではいきませんが、家庭で料理することは少ない野菜です。まずはズッキーニの生態や旬の時期、産地、種類についてを勉強しましょう!
【ズッキーニ】とは?
ズッキーニの植物学的分類は「ウリ科カボチャ属ペポ種」です。これは「金糸瓜(きんしうり)」や「そうめんかぼちゃ」と呼ばれる黄色いずんどう形の瓜科の野菜と同じ種です。細長い形のものが多いため、きゅうりの仲間と思ってしまう人も多いのですが、実はかぼちゃの仲間。日本では「つるなしかぼちゃ」と呼ばれることもあります。
ズッキーニの原産地はアメリカ南西部からメキシコにかけて。「ペポカボチャ」の仲間にはハロウィンのかぼちゃに使う巨大なカボチャや観賞用のおもちゃカボチャもあり、それらの突然変異がズッキーニだといわれています。アメリカ南西部やメキシコから16世紀ごろにヨーロッパに伝わり、イタリアで品種改良が行われて食味が向上し、今のような栽培種が広がりました。日本に伝わったのは1977年と最近になってからです。
ズッキーニは未熟な状態で収穫されて食用となります。完熟するまで育ててしまうと巨大で皮が硬く、種も大きく硬くなってしまい食べられなくなってしまうので栽培する際は収穫適期を逃さないように注意しましょう。抱き枕のようなサイズにもなるため、大きく育ててみても面白いですね。
旬の時期と主な産地
ズッキーニの旬の時期は夏です。6月〜9月が美味しく、全国的にたくさん収穫できる時期となります。農家によってはハウス栽培をすることで出荷の時期を早くできたり、暑い地域ではほぼ一年中栽培も可能です。 主な産地は長野県と宮崎県です。この2県で全国シェアの約半分をカバーできるほどの生産量となっています。
色や形いろいろ、種類豊富なズッキーニ
ズッキーニには色や形が様々あることはなかなか知られていません。細長くて緑色か黄色のズッキーニの流通が多いですが、丸型やUFO型、鶴の首のように細長いものなど面白い形のズッキーニもあるのです。品種ごとの特徴をお伝えします。
①細長いズッキーニ
一般的なズッキーニは長さ18〜25cmほどで太さも直径4〜5cmです。色は緑か黄色多いですが、緑色に黄緑のマダラ模様のある品種や、シマシマ模様ができる品種、オレンジ色など様々あります。
細長く切ってフライにしたり、グリルにしたり、ラザニアのパスタの代わりにズッキーニを使うなど、その形状をいかした調理方法がおすすめです。
②丸ズッキーニ
ズッキーニはころんと丸く育つ品種もあります。色は多種多様ですが、直径7〜10cmが食べ頃のサイズです。味は普通のズッキーニとほぼ同じではありますが、若干コリっとした歯応えが強い印象です。
丸い形をいかして、中身をくり抜き詰め物をしてグリルしたり、生のままマリネやカルパッチョにしても美味しいです。
③グリーンパンツズッキーニ
バナナのように細長く育ち、下部がぶっくり膨らみ先っぽは尖ります。黄色い部分が多いのですが、下部の約1/3が黄緑色をしていて緑色のパンツを履いているような見た目のズッキーニです。通常の細長タイプよりも柔らかめで甘味がある印象です。フライや天ぷらにして素材の味を楽しむ食べ方をおすすめします。
④トロンボーンズッキーニ
「トロンボチーノ(Trombocino)」とも呼ばれるイタリアの伝統品種です。外側は乳白色ですが、中身が黄色いのが特徴です。15〜20cmで若取りするとズッキーニのように調理ができ、大きくなりきってから収穫するとカボチャのように調理して食べられる品種です。 トロンボチーノは、ズッキーニというよりも「若くても食べられるカボチャ」といった感じですね。形はピカイチで面白いです。
⑤UFOズッキーニ
丸ズッキーニが扁平になり、肩がゴツゴツしている面白い形のズッキーニです。濃い緑や黄色、白、クリーム色など様々な色のバリエーションがあります。見た目はオモチャカボチャのようで食べられそうにないのですが、ちゃんと食べられます。
くし切りにしてグリルにしてもよし、形を利用してくり抜き、肉詰めにしてオーブンで焼いくと豪華な1品になりますよ。
⑥花ズッキーニ
花ズッキーニは品種による違いではありません。ズッキーニは花が咲き、雌しべに花粉が授粉することで実ができ、大きくなり5〜7日後に未熟果を収穫します。花ズッキーニは開花後2〜3日経って実が4〜5cmのところで収穫。花は取れやすいので取り扱いに注意しましょう。おすすめの調理方法は、花の部分にチーズやリゾットを詰めてフライにしたり、そのまま天ぷらにするような食べ方です。フワッと香る花の甘い香りが上品ですよ。
【ズッキーニ】の栄養成分とその効能について
ズッキーニは100gあたり16kcal、タンパク質1.3g、脂質0.1g、炭水化物は2.8g、食物繊維は1.3gです。
100g中94.9gが水分であり、エネルギーが低く、カリウムの含有量も多いためダイエットに適した食材です。きゅうりと違って生以外にも食べるバリエーションがある点が嬉しいですね。ここからはズッキーニに含まれている特筆すべき栄養素とその働きをお伝えします。
◆カリウム
ズッキーニには100g中にカリウムが320mgと多く含まれています。カリウムはナトリウムを体外に排出する働きがあるため、むくみの解消に役立つ栄養素です。
カリウムは煮たり水にさらすことで水に溶け出すため、多く摂取したい場合は生やフライ、油でさっと炒めるなどの調理法がおすすめです。
◆カルシウム
ズッキーニはカルシウムを100g中に24mgと意外に多く含む野菜です。もちろん牛乳や乳製品と比べると少ないですが、副菜や煮込み料理にズッキーニを使うだけで気軽にカルシウムを摂取できると思うと嬉しいですよね。
◆葉酸
ズッキーニ100g中に36μgの葉酸が含まれています。葉酸は妊娠初期の胎児の正常な成長を促す栄養素です。妊娠を希望する女性にはいつも多めに摂取して欲しい栄養素です。 葉酸も水溶性の栄養素であるため、水さらしはNG。汁物にする場合はスープを残さずいただきましょう。
◆ビタミンC
ズッキーニ100g中にビタミンCは20mg含まれています。ビタミンCは熱に弱い栄養素、かつ水溶性のビタミンであるため、加熱や水さらしをすることでせっかくの栄養素を無駄にしてしまいます。ズッキーニからビタミンCを摂取したい場合は生のままサラダやカルパッチョにすることをお勧めします!
夏バテ予防にピッタリの理由
ズッキーニは夏バテ予防に大変おすすめの野菜です。
夏バテになると体がなんとなくだるかったり、疲れやすくなるという症状が出ます。これらの症状の原因は水分と栄養の不足であることが多いのです。
ズッキーニには100g中約95gの水分が含まれており、ミネラルやビタミンが含まれています。また、栄養価の高いトマトとの相性が良いため、ズッキーニとトマトを一緒に使った料理を食べると夏バテ予防につながります。加えて、豚肉や魚介類などのビタミンB群やタンパク質が多い食材を合わせると完璧です。
油との相性が抜群
ズッキーニは油との相性が良い食材です。天ぷらやフライ、フリットにすると、実がしっかり柔らかくなり、甘味や旨味が堪能できます。 ズッキーニを煮込む際はまず油で炒めてあげると本来のおいしさを楽しめますよ。栄養価の面でも、油と一緒に摂取することでβカロテンの吸収率を高めることができます。
おすすめの食べ方
ズッキーニは生でも加熱しても美味しく食べられる野菜です。水溶性のビタミンや火に弱い栄養素をメインに摂取したい場合は、スライスしてサラダに入れたり、スティック野菜としてバーニャカウダソースにつけて食べるのもおすすめです。 ズッキーニはさっと湯通しするとパスタのような柔らかさになるため、平らに薄く切ってラザニアの代わりにしたり、長い千切りにしてスパゲティの代わりにも使えます。
《煮込み:ラタトゥイユ》
ズッキーニをたくさん使用する料理として有名なのが「ラタトゥイユ」です。ズッキーニやトマト・ナスなどの夏野菜をニンニクとオリーブオイルで炒めて蒸し煮した南フランスの煮込み料理。油で炒めてから煮ることでズッキーニに多く含まれるβカロテンの吸収率を高め、体の免疫を強化し、風邪の予防や夏バテの予防の効果が期待できます。
ラタトゥイユによく似た料理の「カポナータ」もおすすめ。カポナータはイタリアのシチリア半島発祥の夏野菜の煮込み料理です。オリーブオイルやニンニクで炒め煮することは変わりありませんが、ラタトゥイユは塩胡椒でシンプルに味付けするのに対し、カポナータは白ワインビネガーと砂糖も加えて甘酸っぱく味つけします。
《揚げ物:フライ・天ぷら》
フライや天ぷらにし、衣でズッキーニの風味や旨味を閉じ込め、中をふんわりとろりと仕上げることができます。衣のサクッとした食感と、ズッキーニの柔らかなテクスチャが最高! ズッキーニを素揚げし、カレーのトッピングなどに使うこともおすすめです。表面が少々こんがりするまで揚げることで、適度に水分が飛びズッキーニ本来のおいしさを引き出すことができます。
《焼き物:ステーキ》
ズッキーニを焼く際のポイントは、多めの油でじっくりゆっくりと焼き上げることです。そうすることで、ズッキーニを柔らかく、ジューシーに甘味と旨味たっぷりのステーキに仕上げることができます。
《生食:サラダ・マリネ・カルパッチョ》
生でも食べることのできるズッキーニはサラダなどの加熱しない調理もおすすめ。マリネにする際は食べる直前に和えることをおすすめします。ズッキーニは95%が水分であるため、マリネにしてから時間を置くと水分が出て味が薄まってしまいます。塩揉みしてから和えればその心配もありませんが、せっかくのズッキーニの水溶性の栄養素が流れ出てしまうため、少々勿体無いところ。 二色のズッキーニをそれぞれ薄くスライスしてさらに綺麗に並べればおしゃれなカルパッチョに!オリーブオイルと塩胡椒、少しのハーブで召し上がれ♪
《その他:カレー・スープ》
農家的に言わせていただくと、ズッキーニは「ナスと同じような使い方をすれば美味しく食べられる」野菜です。使い慣れない野菜だからこそ、食べ方に困ってしまうケースもありますが、ナスの代わりとして使ってみてください。夏野菜カレーや味噌汁に入れても美味しく食べられますよ。グリーンカレーに入れてみるのも大正解。ナスよりも油を吸わないためヘルシーです。
新鮮なズッキーニの選び方のコツ
新鮮なズッキーニの見分けかたは、ヘタの切り口が乾燥し切っていないことや、皮にハリとツヤがありなめらかなこと、太すぎず大きすぎないこと、ズッキーニの下部がしっかりしまっていて変色などがなく変に柔らかくないことがポイントです。本当にとれたてのズッキーニはヘタや果皮に棘がありチクチクしますよ!出荷の際、表面を拭くことで棘は取れます。
長く美味しく楽しむ保存方法
ズッキーニの保存方法ですが、切っていないのであれば常温で2〜3日保存可能です。夏野菜であるため、寒い冷蔵庫は本来苦手なのです。使いかけのズッキーニの場合、切り口にピッタリとラップをして冷蔵保存しましょう。こちらも2〜3日で使い切るのが理想です。
食べきれない場合、グリルしてから冷凍保存すると使い勝手がいいですよ。粗熱を取ってからフリーザーバックに入れ、空気をしっかりと抜いて冷凍します。1ヶ月程度で使い切れると、冷凍焼けや冷凍の匂いがつかないです。冷凍ズッキーニは冷ったままスープやカレーに入れて煮込んで使えます。
ズッキーニに関するよくある質問
ここからは、実際に栽培している農家がズッキーニに関するよくある質問に答えていきます。これを読んで是非、ズッキーニ博士になってください!
①緑色系と黄色系で味や栄養に違いはある?
厳密に言うと、緑色の方が皮に葉緑体を多く含むため緑色のズッキーニの方が栄養価が若干高いですが、特筆するほどではありません。味もよ〜く食べ比べてみると、黄色の方が皮が柔らかく感じ、緑の方が甘味が濃いように感じる…程度で個人によって感じ方にも差があると思います。
②花には栄養がある?
花にも栄養はありますよ!ただし、花を食べると言っても1つあたり数グラムでしかないため、身を食べた方がしっかり栄養素を摂ることができます。
③生で食べても大丈夫?
先ほどから述べている通り、サラダやマリネ、カルパッチョなどに生で食べることもおすすめします。生で食べることで、水溶性の栄養素を無駄なく摂取することができます。
④皮は食べられますか?
はい、ズッキーニは皮まで食べられる野菜です。大きくなりすぎたズッキーニは皮が硬くなってしまうため剥いて食べることを推奨しますが、適度な大きさのズッキーニであれば皮ごといただきましょう。皮にもしっかり栄養があります。
まとめ
以上、ズッキーニ農家による栄養素や食べ方の解説でした!夏になると安くなり、量もたくさん出回るズッキーニ。家庭菜園でも最近は人気が高い野菜です。さまざまな栄養素を含んでいて、料理のバリエーションも豊富なことがわかりましたね。調理のポイントをご参考にズッキーニを多く取り入れた食卓を囲んでみるのはいかがでしょうか。