北海道栗山町でさつまいもを生産する農家で、管理栄養士でもある筆者が『さつまいもの保存方法』をご紹介します。さつまいもは生芋のまま長期間保管が可能な野菜で、上手に保存すると1年以上美味しく食べられる不思議な野菜です。ただし、スーパーで買ったりお取り寄せで楽しめる期間はせいぜい2月ごろまで。さつまいも好きなら常温・冷蔵・冷凍の保存方法を使い分け、いつでも美味しく食べられるようにしてみませんか。農家直伝の簡単レシピもお伝えします。
目次
さつまいもの【常温】保存の正しい方法
さつまいもを長く美味しく味わうためには、野菜の特徴を知ることが重要です。さつまいもは10℃以下になると「低温障害」という生理現象を引き起こします。低温障害になったさつまいもは元に戻ることなく、内部が黒く変色したり腐っていきます。味も食べられるような味ではありません。寒さに弱い野菜であることを踏まえ、必ず10℃を下回らない場所に保管しましょう。
家の中で保管する際はさつまいも1つずつを新聞紙でくるむことで保湿し、温度が一定な場所に段ボールや紙のコメ袋などに入れて保管しましょう。
ただし、家庭で保管するのであれば2~3か月が限度かもしれません。長期保管しすぎると湿度が足りなくなるため、さつまいもが乾燥してきてシワが寄ったり軽くなってしまい、本来の美味しさを損ねることがあるためです。ときどき様子を見ながら食べすすめ、味の変化を楽しんでみてください。
長期にわたってさつまいもを出荷する農家や業者では、温度と湿度を厳密にコントロールできる保管庫で管理し、熟成させながら出荷しています。
保管する際の適温は14℃、湿度は90%以上必要です。この温度と湿度を保つことができればさつまいもは約1年保管することができ、さつまいものでんぷん質が糖へ変化していくため、より甘くてしっとりねっとりしたものに熟成されます。
さつまいもの【冷蔵】保存の正しい方法と保存期間
さつまいもを生のまま冷蔵保存すると、前段で述べた通り「低温障害」を引き起こします。使いかけであっても、冷蔵庫に入れずに切り口にラップをしたり、皿に切り口を下にしておくだけにしておきましょう。室温で放置していても2~3日は美味しく食べられます。
さつまいもを冷蔵保存するときは、調理後の場合です。焼き芋やポテトサラダ、煮物にした際は粗熱を取ってから清潔な容器に入れて冷蔵保存します。逆に、調理後のさつまいもを常温に放置しておくと、付着している土壌菌などが悪さをすることで腐敗しやすいため、料理したものは出来るだけ早く冷蔵しましょう。 冷蔵後は2~3日で食べ切ったほうが無難です。
さつまいもの【冷凍】保存の正しい方法
さつまいもを冷凍する場合は加熱してから冷凍します。「ペースト」「焼き芋」「乱切りにしてグリル」など好きなように調理・加工してから粗熱を取り、使いやすいように1回分をラップに包んで密閉袋に入れて冷凍しましょう。
おすすめは「焼き芋」の冷凍です!一度に大量のさつまいもを焼き芋にして、熱々で楽しむもよし、冷蔵庫で冷やして食べるのもよし、マッシュしてサラダやスイートポテトに変身させるのも良いですが、余った焼き芋を一つずつラップに包んで密閉袋に入れて冷凍して保存しておきましょう。冷凍庫から出してすぐに食べても硬すぎなく、アイスのように食べることができますよ。もちろんトースターやレンジで解凍して熱々の焼き芋にしてから食べても良いです。この食べ方は「べにあずま」のようなホクホク品種ではなく、「シルクスイート」や「べにはるか」などのしっとりねっとりとした品種の方をおすすめします。
さつまいもは加熱後に冷凍すると3か月以上は美味しく食べられます。解凍後は早めに食べてください。
さつまいも農家直伝!おすすめレシピ
さつまいも料理と言えば、大学芋やふかしいも、レモン煮や天ぷらが定番でしょうか。
産地で購入したり、お取り寄せでこだわりのさつまいもを手に入れたなら、ぜひ試していただきたい農家直伝のレシピを紹介します。
【おすすめレシピ①】 時間をかけて焼き上げる!極上焼き芋
《材料》
さつまいも お好みの量
《作り方》
1.さつまいもの表面をスポンジやたわしでよく洗う。
2.天板にオーブンシートを敷き、その上にさつまいもを並べる。さつまいもMサイズ以上なら180℃で60分、温度を落として140℃で90分ほど焼く。焼き上がりはオーブンの性能やさつまいもの大きさなどによって異なるため、さつまいもを触って全体的に柔らかくなっていたら完成。Sサイズなら180℃で30分→140℃で90分。
絶妙な温度で長時間加熱することにより、さつまいもの酵素の力ででんぷん質が糖に代わるので甘くてねっとり甘〜い焼き芋に仕上がります。
一度に多めに焼き芋を作り、粗熱を取ってから冷蔵庫へ入れると3~4日美味しく食べられます。焼き芋をオーブンに入りきる量いっぱいに作り、てんぷらやポタージュ、クリームチーズやレーズンと合わせてデリ風のサラダにリメイクしても絶品です。
【おすすめレシピ②】 シンプルに味わう!さつまいものグリル
《材料》
・さつまいも 1/2本(150g)
・オリーブオイル 大さじ2/3
・お好みで塩やハーブソルト 少々
《作り方》
1.さつまいもをよく洗い、食べやすい大きさに切る。乱切り、角切り、スティック状などお好みの形に。細めの芋なら輪切りにしても良い。
2.ボウルやフライパンに切ったさつまいもを入れ、オリーブオイルをまぶして全体に絡むように混ぜる。
3.トースターの天板にくしゃくしゃにしたアルミホイルやコーティングされているアルミホイルを敷き、中火で15~20分こんがり焼き色が付くまで焼く。魚焼きグリルでも調理可能。
4.皿に取りだし、お好みで塩やハーブソルトをまぶし完成。
さつまいもをオイルと塩だけで味付けし、素材本来の美味しさを楽しむ調理法です。
肉料理の付け合わせにしたり、シチューや豚汁の具材として後入れしても美味しく召し上がれます。
少量の粒マスタードと和えると、その酸味とさつまいもの甘みが絶妙にマッチしてクセになる味わいのおつまみに変身!
【おすすめレシピ③】 「焼きいも」で作るデリ風サラダ
《材料》
・焼き芋 約300g 1本
・クリームチーズ 80g
・レーズン 大さじ2
《作り方》
1.焼き芋を皮ごと1.5㎝角に切り、クリームチーズ、レーズンと一緒に混ぜ合わせて完成!
2. レーズンではなくリンゴの甘煮を入れても美味しいです。
ねっとり甘く焼きあがった「焼き芋」を使用したデリ風のサラダです。焼き芋を自分で調理するには時間がかかるため、買ってきた焼き芋を使用しても良いです。(もちろん電子レンジで加熱したさつまいもでも作ることはできます)
まとめ
さつまいもの保存方法を常温・冷蔵・冷凍に分けて解説し、生産者おすすめのレシピもご紹介しました。
温度と湿度を上手に管理すると家庭では2~3か月保存でき、しかも、どんどん甘くしっとりしてきて食感と味わいの変化を楽しむことができますよ。さつまいも好きならば是非、自分で熟成させたさつまいもの美味しさを堪能してみてください。さつまいもが多く出回る旬の時期には箱買い必須です!
筆者の農園で栽培する北海道産のさつまいも「由栗(ゆっくり)いも」について
近年、「さつまいも」の栽培が盛んになってきている北海道。温暖化や農業技術の進歩、日々の研究と試験栽培を重ねた結果、冷涼な北海道でも美味しいと評判のさつまいもを作ることができるようになってきました。詳しくは以下の記事をぜひチェックしてみてください。
→【由栗いも(ゆっくりいも)】を食べよう!北海道の美味しいさつまいも。その特徴や保存方法などをご紹介