【鉄砲汁】を食べよう!北海道名物のカニ入り味噌汁、その特徴やレシピをご紹介

郷土料理
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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カニを使った汁物料理は全国各地にありますが、北海道では「鉄砲汁」が郷土料理としてよく知られた存在です。道東地方の根室で水揚げされる「花咲ガニ」を使った贅沢なみそ汁が特に有名で、豪快な漁師料理として親しまれてきました。今回は鉄砲汁の歴史や名前の由来にその特徴、作り方や食べ方までを詳しくご紹介します。

北海道の郷土料理【てっぽう(鉄砲)汁】とは

北海道の郷土料理「鉄砲汁」,花咲ガニの味噌汁

てっぽう鉄砲)汁」は北海道の道東地方に伝わる郷土料理です。大きな特徴として味噌汁にカニが入っていることがポイントで、主に道東でよく獲れる花咲ガニが使われています。根室市では花咲ガニがとれる夏に毎年「根室かに祭り」が開催され、そこでは必ず鉄砲汁がふるまわれています。
ちなみに、花咲ガニはカニと呼ばれていますが、正確にはヤドカリの仲間!生の花咲ガニは茶褐色ですが、茹でるとキレイな赤色に変わり花が咲いたように見えることから「花咲ガニ」と名付けられたという説もあります。

料理としての特徴

漁師料理の「鉄砲汁」は根室地方で生まれたとされるだけあって、花咲ガニを入れるのが主流です。しかしながら、昨今の漁獲量減少や漁期が限定されていることから、別のカニを使うこともあり、年間通じて食べられるようになっています。カニの身を食べ終わった後の殻だけでもしっかり出汁が出るため、カニを食べた翌日に鉄砲汁を食べる家庭もあります。ひと晩寝かせることで、よりカニから出汁が出ますよ。

作り方はとっても簡単。カニと旬の野菜や豆腐を昆布出汁で煮て味噌で味付けし、最後に長ねぎを入れるだけ。漁師町の家庭料理と言えます。使用する味噌はどんな種類でも良いですが、白味噌ベースに麦味噌や田舎味噌を加えるのがおすすめです。

「てっぽう(鉄砲)汁」の名前の由来

カニの足をつついて食べる姿が「鉄砲を掃除している」、又は「鉄砲に玉を詰めている」ように見えることから、鉄砲汁と呼ばれるようになったそうです。 少し物騒な名前ですが、カニの身も出汁も繊細で濃厚で美味しく、残さず食べたくなるのも納得ですよね。

材料の特徴

活の花咲ガニと茹でて真っ赤になった花咲ガニ

鉄砲汁の定番食材はやはり花咲ガニです。花咲ガニは、北海道の襟裳岬以東の太平洋側や根室半島の北側に分布し、花咲港や根室港などで多く水揚げされています。タラバガニほどではありませんが比較的大きめのカニで、甲羅のトゲトゲや茹でると鮮やかな朱色になるのが印象的です。花咲ガニの漁期は、釧路では3月15日〜7月31日、根室は7〜9月のみとなっています。漁獲制限により獲れるサイズも定められている貴重な食材ですが、身は濃厚な味わいでエビにも似たプリッとした食感があり、カニ好きの中には一番好きな味という人もいるほど人気があります。

「てっぽう(鉄砲)汁」は他のカニでも

毛蟹がたっぷり入った味噌汁,かに汁

鉄砲汁は必ずしも花咲ガニを使わなければならない訳ではありません。毛蟹・ズワイガニ・タラバガニ・ワタリガニ、どれを入れても鉄砲汁と言えます。花咲ガニは濃厚でエビのような風味の出汁が出ることから、他のカニより汁物に使われているのかもしれません。
北海道では一番人気と言って良い毛ガニですが、こちらは出汁を取ったときに“毛”が汁に浮かぶことを嫌がる人もいるようです。色々な種類を食べ比べ、好みの味を見つけてみるのも良いですね。

自宅で美味しい「鉄砲汁」を作ってみよう!

北海道の郷土料理「鉄砲汁」,花咲ガニの味噌汁

ここまでは「鉄砲汁」の美味しさや大雑把な作り方をお伝えしました。漁師町の家庭料理であることから、各家庭で使う野菜や味付けに使う味噌は違うのですが、オーソドックスな鉄砲汁の作り方をお伝えします。

《材料(4人分)》

  • 花咲ガニの足 4本
  • 大根、白菜、人参 お好みで
  • 豆腐 1/2丁
  • 長ねぎ 1/2本
  • 味噌 大さじ1.5~2
  • 水  800cc
  • 昆布 10cm
  • 酒 大さじ2

《作り方》

  1. 鍋に花咲ガニの足と水、昆布、酒を入れ中火で煮る。カニの足は半分に折っても良い。
  2. 沸騰寸前で昆布を取りだし、20分程度弱火で煮てカニの出汁を引き出す。
  3. 薄めに切ったお好みの野菜を加えて火が通ったら豆腐を入れて軽く煮る。
  4. 味噌を加えてよく混ぜ、最後に長ねぎを加えて完成。

食べ方について

カニの足をつついて身を食べる人もいますが、鉄砲汁の醍醐味はしっかりとカニの出汁がでた味噌汁にあります。カニの身は味が抜けきっているかもしれないので、無理して食べなくても良いですよ。
出汁が染みた野菜は絶品です。具材としてはよく味が染みるジャガイモもおすすめ!

美味しくするためのちょっとしたコツやアレンジ

コツとしては、より濃くカニの出汁を出すために身を食べ終わった殻を多めに汁に入れ、出汁が出たところで足以外の殻を取り出すと濃厚な風味を味わえます。
味噌ではなく、醤油味や塩味、カレー粉を入れるなど味には色々なアレンジもできますよ。丼によそってラーメンやうどんを入れても美味しく召し上がれます。

「鉄砲汁」の栄養とカロリー

鉄砲汁は1食分81.2kcal、塩分は1.3ℊです。カニは低カロリーな魚介類ですが、今回は出汁をとることが目的なため、鉄砲汁は野菜の栄養をしっかりとれる汁物と言えます。
野菜は汁物にすると熱に弱い栄養素の損失はありますが、水溶性のビタミン(A、B群、Cなど)を無駄なく摂取することができますよ。

まとめ

今回は、カニを使った郷土料理「てっぽう(鉄砲)汁」をご紹介しました。北海道ではお寿司屋さんや居酒屋でもよく見かけるので、訪れた際にはぜひ味わってみてください。また、近くのスーパーで売っているカニを使ったり、本場の花咲ガニをお取り寄せしてオリジナルの鉄砲汁を作ってみるのも良いですね。蟹の旨さがギュッと詰まった美味しい汁物。おすすめですよ。

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