じゃがいもは収穫後1か月以上保管できる貯蔵性が高い野菜ですが、光や温度で品質が変わるデリケートな野菜でもあります。今回はじゃがいもが収穫できる旬の季節から、保存方法、より美味しくする保管の仕方を紹介します。
目次
じゃがいもの旬
じゃがいもは煮込み料理やスープに使うことも多く、秋に穫れるイメージが強いかもしれませんが、じゃがいもの旬は3度あります。
日本は南北に長いので、北と南の地域で気温や気候に差が大きく、その土地にあった品種や栽培方法が確立していることから、同じ野菜でも定植適期(野菜を植えるのに適した時期)と収穫適期が地域によって異なるのです。
北海道や東北地方などの北の地域では、春に植えて秋に収穫することから北のじゃがいもは秋が旬。九州や四国などの南の地域では3月ごろに定植して6月ごろに収穫する春が旬のじゃがいもの他、9月ごろに定植して12月ごろに収穫する冬が旬のじゃがいももあります。
スーパーに1年中じゃがいもが並んでいる理由は貯蔵性が良いだけでなく、旬の多さにもよるのです。
美味しいじゃがいもの選び方
スーパーに並んでいる沢山のじゃがいも。どのようなものが美味しいかを見極める方法は、ずばりじゃがいもの表面を見ましょう。皮がカサカサしているじゃがいもは特有の病気であることが多く、皮が厚くて食べにくいです。また、皮にしわが寄っていたり、触って変に柔らかい場合はしなびている場合があるので買うことは避けましょう。
また、じゃがいもは品種によって味や風味、食感、調理特性が違います。美味しいじゃがいも料理を食べたい場合は、どんな料理に使いたいかをイメージして、その料理に合うじゃがいもを選ぶと良いです。例えば、味が染みてほくほくした肉じゃがを作りたい場合は「男爵」を、じゃがいもがゴロゴロ入ったシチューを食べたい場合は「メイクイーン」を選んでみてはいかがでしょうか。
光に注意。じゃがいもの保存方法
一度に5kgも10㎏も買うと「腐る前に食べきれるか心配だ」という人もいるかもしれません。しかし、じゃがいもは日持ちする野菜なのでそれほど心配しないでも大丈夫。
日陰で涼しく通気性が良い場所であれば、1~2か月は美味しく食べられますよ。ただ、中には芽が出やすい品種もあるので芽が出てきたら冷蔵庫で保存するか、早めに食べ切るようにしましょう。
注意する点は、日光や光に当てないこと。光に当たるとじゃがいもの表面が緑色になります。これはじゃがいもが「ソラニン」という毒を作ったという印。緑色になった部分は厚めに切り捨て、色が変色していない部分だけを食べるようにしてください。じゃがいもの芽も同じように毒を持ちます。芽が出てしまったら、芽を取り除いて食べましょう。
ソラニンを口にすると舌がピリピリ痺れるような感覚があり、吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。
スーパーで透明なビニール袋に入れられているじゃがいも。じつはこの売られ方はじゃがいもにとっては最悪な環境です。じゃがいもを買うときにはなるべく商品棚に並んだばかりの光に当たっていないじゃがいもを選ぶようにしましょう。
じゃがいもの芽を出にくくさせる方法
じゃがいもはそのまま植えると芽を出して子孫を残そうと成長します。そんな生命力たっぷりのじゃがいもは、条件が揃うと土に植えずとも芽を出してしまう特徴があります。
品種によって芽が出やすい・出にくいという差もありますが、温度や湿度が高い場合や、光が当たっている場合は目が出やすいです。保存は風通しが良く、暗い場所を選ぶようにしましょう。厚手の段ボールに入れて家の中の一番涼しい場所に置くのがベターです。それでも温度が気になる場合は紙袋の中に入れて野菜室に保存するとより良いです。
また、リンゴのエチレンガスはじゃがいもの発芽を抑制する作用を持ちます。長期保存を狙う場合はじゃがいもと同じ段ボールの中にリンゴを1個入れてみてください。
調理後のじゃがいもの保存期間はどのくらい?
じゃがいもはカレーや肉じゃが、シチューなど大鍋で作る料理に使用する機会が多い野菜です。大鍋で料理を作ると美味しく出来上がるのですが、どうしても作りすぎて食べ切れなくなってしまいませんか。
その際には調理後、粗熱が取れたら清潔なスプーンや箸で取り分けて密閉し、すぐに冷蔵庫に入れましょう。箸を付けずに冷蔵庫に入れておけば3〜4日は美味しく食べられます。
加熱したじゃがいもは一度冷凍すると解凍後の食感が悪くなってしまうので冷凍保存には向きません。
じゃがいもを冷凍するときは皮ごと丸ごと!
じゃがいもの芽が出てきてすぐに食べ切ることは難しいという場合は生のまま冷凍保存しましょう。皮を良く洗い、1個ずつラップでぴったりと包んで密閉袋に入れてから冷凍します。食べるときは凍ったままレンジで4~5分加熱して火を通すと冷凍とはわからない仕上がりになります。料理に使う場合はレンジで加熱後に切って使うと良いです。
皮を剥いて小さくカットしてから冷凍すると、切り口が黒く変色してしまうので皮ごと丸ごと冷凍をおすすめします。3~4か月は美味しく食べられますよ。
保管方法で味が変化する!じゃがいもの不思議
じゃがいもは保管する条件によって、驚くほど甘くなる野菜です。最近では「越冬じゃがいも」や「熟成じゃがいも」という呼び方がされており、スーパーやネットショップで気軽に手に入れることができます。
ここからは保管で美味しくなるメカニズムや、家庭でジャガイモを美味しく熟成させる方法をお伝えします。
①じゃがいもが甘くなるメカニズム
じゃがいものホクホク、ねっとりとした食感はデンプンによるものです。このデンプン、温度が1~5℃で湿度90%以上の時に一部のデンプンがブドウ糖と果糖に変化します。この現象を「低温糖化」と言います。糖化することでじゃがいもはより凍りにくくなり、温かくなったときに子孫を残せるようになるのです。
糖化したじゃがいもは甘みが増し、しっとりとした口当たりに変化していきます。 ただし、品種によって甘くなる度合いの差が大きく、どのじゃがいももびっくりするほど甘くなるというわけではありません。中でも「インカのめざめ」や「インカのひとみ」という品種は低温貯蔵前と後では10倍以上の甘さを持つようになります。
②生産現場ではこうする!貯蔵庫や雪の下での保管
雪が多い地域では冬の期間野菜を貯蔵するため、土の中に野菜を埋めてその上に雪を積もらせる「雪の下貯蔵」という方法をとります。雪が降る季節は気温がマイナス十度以下になることも多いのですが、雪の下の土の中はゼロ度以下になることはありません。また、乾燥もしないのでじゃがいもにとっては絶好の糖化温度というわけ。
しかし、じゃがいもを埋めると掘り出すのに一苦労な上、雪が少ない年は土の中まで氷点下になりじゃがいもが死んでしまうことも。このような労力とリスクを避けるため、最近では空調整備された専用の倉庫で熟成させる生産者や工場もあります。
③家庭で再現するには「チルドルーム」がおすすめ
上記の低温糖化、実験程度であれば家庭でも再現できる方法があるのでじゃがいも好きはぜひ試してみてください。 じゃがいもを新聞紙やキッチンペーパーで包み、その上から濡れた布巾で包みます。最後にビニール袋へ入れてしっかり口を閉じ、チルドルームへ!途中で開けることはせず、2週間以上保管しましょう。2週間で糖度は約2倍に!それ以上待てる人は3か月ほど、たまに布巾が乾いていないかをチェックしながら寝かせると、究極に甘いじゃがいもへと熟成させることができます。
糖度が増したじゃがいものおすすめの食べ方
糖度が増したじゃがいもはイモ本来の味を味わうためにグリルや素揚げにして食べることをおすすめします。糖化したじゃがいもは焦げやすいため、細いフライドポテトやポテトチップスにするとカリッとする前に焦げて苦くなってしまうのでおすすめしません。
また、糖化したじゃがいもは一度常温に戻すと春が来たと勘違いしてしまうので大変芽が出やすいです。冷蔵保存し、早めに食べ切るようにしましょう。
まとめ
じゃがいもは保存方法さえ気を付けていれば日持ちする野菜なので、イモ好きであれば一度にたくさん買ったほうがお得ですね。甘いじゃがいもが好きな方は「低温糖化」にも挑戦してみてはいかがでしょうか!