海藻類の中でも収穫量が多く、古くから食べられてきた「わかめ」は日本の食卓には欠かせない食材です。食物繊維などの栄養素が豊富で、海の緑黄色野菜ともいえるほどβ-カロテンを含みます。今回は管理栄養士の筆者が、わかめに含まれる栄養素とその効能について詳しく解説。生、塩蔵、乾燥などの加工方法による違いやおすすめの食べ方、よく似た昆布との違いについてご紹介します。
目次
【わかめ】について詳しく知ろう
普段からよく食べている身近な食材の「わかめ」。スープや味噌汁のほか、酢のものやラーメンなどの定番の具材になっていますね。まずはわかめの生態や旬、産地などを学びましょう。知らないこともたくさんあるはず!
【わかめ】とはどんな海藻か
「わかめ」はご存じの通り、海で育つ海藻の一種です。植物学的には「コンブ目」に分類され、その中でもチガイソ科ワカメ属に分けられます。ちなみに「昆布」はコンブ目コンブ科コンブ属です(その中にガゴメコンブやホソメコンブ、マコンブなどの種類が存在)。
同じチガイソ科に属する海藻はアイヌワカメ属の「チガイソ(主な産地は北海道)」、ワカメ属の「ヒロメ(主な産地は千葉県)」です。両方ともわかめの代用として様々な料理で味わうことができます。
わかめは海の中で長さ1m~2m、幅は50㎝にも成長する大型の海藻です。わかめは大きな1枚の葉っぱのような形をしており、葉の中心に通る筋を「中芯」と呼びます。中芯はコリコリとした食感があり「茎わかめ」として珍味に加工されたり料理に使用されています。私たちがよく食べているわかめの部位は中芯からヒラヒラと出ている「葉体(ようたい)」と呼ばれる部位です。中芯の付け根は「胞子葉」や「めかぶ」と呼ばれています。ヒダが多く、ヌルヌルぬめぬめした食感が楽しめます。
主な産地と旬の時期
わかめの産地は北海道の南から九州にかけての各地です。旬は3月から6月にかけての春が美味しい季節です。筆者は春に東北地方に行ったとき食べた「わかめのしゃぶしゃぶ」が忘れられません。 俳句では春の季語となっており、「和布」や「若布」とも表されます。昔の海藻の総称として「メ(海布)」という呼び方があり、「メ」が変化して「モ(藻)」と呼ばれるようになりました。
【わかめ】に含まれる栄養素とその働き
わかめ(生)は100gあたり16kcal、タンパク質1.9g、脂質0.2g、炭水化物は5.6g、食物繊維は3.6g。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、100ℊ中に糖質を2ℊ含みます。ナトリウムは610㎎、カリウムは730mg、マグネシウムは110㎎、カルシウム100mg、鉄0.7mg、ヨウ素1,600μgです。 わかめに含まれる栄養素を下記でご紹介します。
◆食物繊維(アルギン酸、フコイダン)
わかめにはアルギン酸、フコイダンという水溶性食物繊維が含まれています。ネバネバ、ぬめぬめとした粘りが水溶性食物繊維の正体で、葉体よりもめかぶに多く含まれています。水溶性食物繊維は消化器官内の有害物質を絡め取るはたらきや、糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロールの上昇を抑えたり、腸内の善玉菌を増やす効果があります。
◆ミネラル
わかめにはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ヨウ素などのミネラルが含まれています。マグネシウムはエネルギーを作り出す際に使われ、カルシウムは筋肉の収縮に使われたり骨や歯の健康を維持し、ナトリウムとカリウムは体の水分調節を行い、ヨウ素は新陳代謝を促進する働きを持ちます。
◆β-カロテン
β-カロテンは「野菜の中でも栄養価の高い野菜」が分類される「緑黄色野菜」に多く含まれる栄養素です。体内でビタミンAと同じく、免疫力を高めたり、粘膜を強くする働きをします。生わかめ100ℊ中にβ-カロテンは930μℊ含まれます。これは緑黄色野菜の基準である「600μℊ」をゆうに超える量です。
◆ビタミンK
わかめにはビタミンKが含まれます。生の場合は100ℊ中に140μℊ、乾燥わかめ(乾燥のまま)だと660μℊものビタミンKが含まれます。
ビタミンKは血液凝固にかかわるビタミンです。擦り傷や切り傷をしたときの止血に欠かせません。また、カルシウムを骨に沈着させる働きもあるため、丈夫な骨づくりに役立つビタミンです。
ビタミンKは1日150μℊの摂取が目安とされているため、わかめ100gで1日の大部分をカバーすることも可能です。
生と塩蔵と乾燥。栄養素の量に違いは?
生わかめの栄養素については先述しましたが、塩蔵と乾燥わかめを水戻しした際の栄養素も気になりますよね。
わかめ(生)は100gあたり16kcal、タンパク質1.9g、脂質0.2g、炭水化物は5.6g、食物繊維は3.6g。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、100ℊ中に糖質を2ℊ含みます。ナトリウムは610㎎、カリウムは730mg、マグネシウムは110㎎、カルシウム100mg、鉄0.7mg、ヨウ素1,600μgです。
それに対し、乾燥わかめの水戻しは100gあたり17kcal、タンパク質2g、脂質0.3g、炭水化物は5.9g、食物繊維は5.8g。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、100ℊ中に糖質を0.1ℊ含みます。なんと生わかめよりも乾燥わかめの方が糖質量が低いということに。ナトリウムは290㎎、カリウムは260mg、マグネシウムは130㎎、カルシウム130mg、鉄0.5mg、ヨウ素1,900μgです。
塩蔵わかめの塩抜きは100gあたり11kcal、タンパク質1.5g、脂質0.3g、炭水化物は3.4g、食物繊維は3.2g。糖質量は「炭水化物―食物繊維」で求められるため、100ℊ中に糖質を0.2ℊ含みます。ナトリウムは530㎎、カリウムは10mg、マグネシウムは16㎎、カルシウム50mg、鉄0.5mg、ヨウ素810μgです。塩蔵ワカメの塩抜き後はミネラルが大幅に少なくなっているということが分かりますね。
栄養素を効果的に摂取するおすすめの食べ方
上記からわかめの栄養素を効果的に摂取するためには生か、カットワカメ(乾燥わかめ)を食べることがおすすめです。食べ方としては、生の場合は油と合わせることでβ-カロテンの吸収率がアップ!乾燥わかめの場合、調理に使った水は捨てずに汁物に活用することをおすすめします。
《おすすめの食べ方①》生わかめの場合
わかめを使ったペペロンチーノやアヒージョはいかがでしょうか。オリーブオイルを使った料理にすることで、わかめに含まれるβ-カロテンの吸収率を高めることができます。わかめを洋風の料理に使うことは少ないかもしれませんが、ペペロンチーノもアヒージョも魚介類との相性が良いため、とても美味しく仕上がります。
《おすすめの食べ方②》乾燥わかめの場合
乾燥わかめの場合、スープや味噌汁には乾燥状態のまま入れましょう。水戻しする手間を省略できるうえ、戻し汁に出る栄養素も丸ごと摂取することができます。 水戻しせずに作る料理としては、わかめご飯もおすすめです。
《おすすめの食べ方③》塩蔵わかめの場合
塩蔵は基本的に生わかめと同じような食べ方で召し上がることができます。 塩抜きが甘いとしょっぱいため、しっかり塩が抜けたかどうかは少し味見してチェックしましょう。塩蔵わかめに使われている塩は再利用も可能です。卵焼きの隠し味や鍋物の味付け、お吸い物などにつかうとわかめの出汁も楽しめ一石二鳥です。
【わかめ】を食べる際の注意点について
わかめを食べる時にはヨウ素の摂取量に気を付けましょう。日本では成人のヨウ素の1日摂取上限値は3mg/日。生わかめは100ℊ中1.6㎎。わかめは低カロリーなため、ダイエットなどでわかめを多く食べる場合は注意が必要です。
また、乾燥わかめを乾燥のままの食べることが好きという方は注意!乾燥わかめは水で戻すと10倍に膨れるため、たくさん食べた後に水を飲むとお腹の中で急激に膨らみ、腸閉塞を招くこともあります。腸閉塞は消化器官の中を何かがふさいでしまうことで便が出にくくなり、腹痛に襲われる症状です。消化しづらい食品を大量に食べると腸閉塞になりやすいため、生わかめも乾燥わかめも食べ過ぎには注意しましょう。
昆布との違い
真昆布(乾燥)100gあたり146kcal、タンパク質5.8g、脂質1.3g、炭水化物は64.3g、食物繊維27.1g、カリウム6,100mg、カルシウム780mg、鉄3.2mg、ヨウ素20,000μgです。
乾燥わかめ(乾燥のまま)は100gあたり117kcal、タンパク質13.6g、脂質1.6g、炭水化物は41.3g、食物繊維は32.7g。ナトリウムは6,600㎎、カリウムは5,200mg、マグネシウムは1,100㎎、カルシウム780mg、鉄2.6mg、ヨウ素8,500μgです。
わかめの方がタンパク質が多く、食物繊維も多いということが分かりますね。逆に、ヨウ素は昆布の方がはるかに多い!
加工方法が豊富な【わかめ】。いろいろ試そう!
これまでに「塩蔵わかめ」と「乾燥わかめ」が出てきましたが、わかめは加工方法が豊富なため、いろいろな加工品が存在します。それぞれの特徴が分かると使い分けも可能ですよ。ここではそれぞれの特徴を紹介します。
◆乾燥わかめ
乾燥わかめは、わかめを水で洗っただけのものを乾燥したものと、湯通ししたものを乾燥させたものがあります。「カットわかめ」として売られているものは、乾燥させる前に食べやすい大きさに切ってから乾燥させたものです。
わかめは湯通しすると旨味が若干逃げるため、汁物に使いたい場合は生わかめを乾燥させた商品を選ぶと良いです。また、水で戻した後に調理せずそのまま食べたい人や、サラダや酢の物に加熱しないでわかめを使いたい場合、湯通し後に乾燥させたカットわかめを選ぶと良いですよ。
◆塩蔵わかめ
湯通ししたワカメを塩漬けしたものを「塩蔵わかめ」と呼びます。塩蔵は基本的に生わかめと同じような食べ方で召し上がることができます。
前項の「食べ方」の紹介でふれたように、塩抜きが甘くなるとしょっぱいため、しっかり塩抜きすることがポイントです。塩抜きした塩蔵わかめは、生わかめのようにどんな料理にでも使うことができます。また、塩蔵用の塩は再利用も可能です。卵焼きの隠し味や鍋物の味付け、お吸い物などに使うとわかめの出汁も楽しめ一石二鳥ですよ。
◆灰干しわかめ
徳島県に伝わる伝統的な製法で作られた「灰干しわかめ」。乾燥わかめの一種であり、灰を塗ってから乾燥させたもの、もしくは灰を塗った後に洗い流してから乾燥させたものです。
ただ乾燥させただけのわかめより、色がきれいな緑色をしているのが特徴です。また、歯ごたえやわかめの香りも素干しよりも上級です。昔ながらの「灰干し」だけでなく、近年では「炭干し」も広まっています。
◆板わかめ
「板わかめ」は鳥取県及び島根県で主に加工されています。生のわかめをすだれのような板にきれいに並べた後、じっくり乾燥させて海苔のような大きさにカットしたものです。
食べ方はまさに海苔。細かく砕いてご飯に乗せたり、おにぎりにまとわせることもできます。
◆刻みわかめ
山口県萩市の名産品である「刻みわかめ」。生のわかめを干して細かく刻んだもので、それを使った「わかめむすび」は郷土料理にもなっています。ふりかけやご飯に混ぜ込む天然調味料のように使うことができます。
◆めかぶ
わかめの根元に近い胞子葉が「めかぶ」です。ヒダが多く、ヌルヌルぬめぬめした食感が楽しめるのですが生のめかぶは大きく、料理しづらいです。食べるのであれば乾燥めかぶや細かく切られてパックに入った「味付けめかぶ」をおすすめします。
乾燥めかぶは水で戻すと約10倍の重さに増えます。食べ方は水で戻した後、お好みでだし醤油をかけるだけ!ご飯にかけても、和え物にしても美味です。
まとめ
お味噌汁にサラダ、酢の物などいろんな料理にパパっと使えるわかめ。乾燥わかめは常温で日持ちもし、使い勝手も良いため常備しているという家庭も多いはず。
そんな便利なわかめですが、栄養素も多く含んでいることが分かったかと思います。旬の春に生わかめを見つけたら、ぜひしゃぶしゃぶをお試しあれ。普段使いには塩蔵わかめや乾燥わかめを使い、美味しい「わかめライフ」を楽しんでみてください!