甘くて食物繊維をはじめとした栄養素も多く含んでいる魅力的な野菜、さつまいも。本場は本州以南ですが、近年では北海道でも美味しいさつまいもが収穫できるようになっています。「北海道でさつまいも?!しっかり育つの?美味しいの?」と不安に思われるかもしれませんが、あなどることなかれ。
今回はさつまいもの栄養価から、栄養素ごとの働き、北海道産のさつまいもの特徴、おすすめの食べ方をご紹介します。
目次
「さつまいも」ってどんな野菜?
秋の味覚の代表格ともいえる野菜、さつまいも。焼いても、蒸しても、煮ても、揚げてもおいしく食べられる万能な野菜ですね。まずはさつまいもの農作物としての特徴をお伝えします。
さつまいもの旬と収穫時期
さつまいもは本州以南での作付けが盛んです。品種やその土地の気候によって生育期間が違うため一概に収穫時期を言えませんが、鹿児島県では6月から、徳島県や高知県では7月から、茨城県や千葉県では9月頃から収穫が始まります。
産地や品種によって差はありますが、さつまいもは収穫後すぐに食べると甘みが薄いため、収穫して2週間~数か月経ってからが美味しいと言われています。茨城県産で言うと旬の時期は10月~12月頃と言えます。
上手に保管することでより甘くなる
さつまいもは寒さに弱い作物です。10度以下の場所に2~3日置いておくと「低温障害」と呼ばれる生理現象を起こし、腐敗が始まります。さつまいもの内部が黒くなっていたり、見るからにしなびて触ると柔らかくなっているさつまいもが低温障害を起こしているものです。低温障害を起こしたさつまいもは美味しくなく、元に戻ることはありません。
ただし、温度と湿度を上手にコントロールしてあげると1年以上保管することも可能です。そのうえ、長く保管するほどでんぷん質が糖に代わり、調理すると甘くトロトロとしたさつまいもを楽しめます。
14度前後の温度変化が少ない場所で、乾燥しないように1本ずつ新聞紙に包んで保管すると長持ちします。間違っても冷蔵庫に入れないようにしましょう!
北海道のさつまいもは美味しいの?
本州や九州での栽培がメインと思われがちなさつまいもですが、北海道でも栽培することができます。ただ、本州産のさつまいもよりは植え付けから収穫までに時間が必要になります。通常、本州以南では6月中旬に植え付けを行い、10月下旬に収穫を行いますが、北海道のさつまいもは5月中旬に植え、10月中下旬に収穫します。
また、同じ品種でも、北海道で作られたさつまいもは、他県産地より乾物率 (でん粉量の目安になります)が低くなります。このため、調理するとほくほく感(粉質)よりしっとりとした食感(粘質)になります。その代わり甘味が強くなる傾向があります。(北海道立総合研究機構調べ)
つまり、しっとりねっとりした甘いさつまいもが好みの方は、北海道産が美味しく感じるということです。
さつまいもの栄養価
さつまいもは可食部100gあたり132kcal。たんぱく質1.2g、脂質0.2g、炭水化物は31.5gです。食物繊維の量が2.3gであるため、「炭水化物―食物繊維」で求められる糖質量は29.2gです。
さつまいもMサイズで大体300gなので、Mサイズの焼き芋を1本食べると約400kcal。茶碗大盛り1杯の白飯と同じくらいのカロリーです。
白飯と違う点は、食物繊維やミネラル、ビタミン類を豊富に含んでいるということ。さつまいもに含まれる優れた栄養素について説明します。
①お腹のスッキリ感に《食物繊維》
さつまいもは100gあたり2.3gの食物繊維を含んでいます。
食物繊維には水溶性と不溶性の二種類があるのですが、さつまいもには不溶性の食物繊維が多いのが特徴です。便のカサを増やして腸の働きを活発にし、便意を感じやすくさせてくれます。
②免疫力を高める《ビタミンC》
さつまいも100gあたり、29㎎のビタミンCを含みます。ビタミンCは免疫力の向上や肌へのコラーゲン沈着に必要な栄養素です。ビタミンCを多く含むイメージがあるみかんでは100gあたり35㎎の含有量であるため、みかんには劣りますがそこそこ多く含んでいる印象ですね。
ビタミンCは体内に貯蔵できないビタミンなので、こまめに補給したい栄養素です。サラダや果物が食べられない時にはさつまいもをおかずやおやつにすることで補給することをおすすめします。
③健康な骨と歯をつくる《カルシウム》
さつまいもにカルシウムが入っていると聞くと意外かもしれませんが、実はさつまいも100gに40㎎ものカルシウムを含みます。牛乳は100g中110㎎のカルシウムを含むことと比べると約1/3の量でしかありませんが、さつまいもを食べることでカルシウムを摂取できると考えると嬉しいですよね。
牛乳が苦手だったり、アレルギーや体質的に乳製品を食べられない人にはさつまいもは貴重なカルシウム源になると言えます。
④むくみ解消に《カリウム》
さつまいも100g中に470㎎のカリウムを含みます。カリウムは食事から摂取した余分な塩分を尿として体外に排出する助けをするミネラルです。茹でたり煮ものにすると減りますが、蒸したり焼いたりするだけでは減らないためカリウムを多く摂取したい場合は焼き芋や蒸し芋で食べましょう。また、汁物に入れて汁ごと召し上がるのであればカリウムを失う心配はありません。
⑤貧血予防に《葉酸》
さつまいも100gあたり、49μgの葉酸を含んでいます。
葉酸は正常な赤血球を作るために必要な栄養素です。鉄を意識して摂取しているのに貧血気味だという人は葉酸が足りていないかもしれないので多めに摂取しましょう。
葉酸は本来熱に弱い栄養素ですが、さつまいもは焼き芋やふかしいもにしても葉酸の量があまり変わりません。
⑥細胞の老化を防ぐ《ポリフェノール》
ポリフェノールは強い抗酸化力を持つ栄養素です。さつまいもを切ると、切り口が黒く変色していきます。これはポリフェノールがある証拠です。アクとして不要に見られがちですが、実は血管を丈夫にしてくれたり、老化を防ぐ働きを持っています。
また、さつまいもは皮にもポリフェノールを多く含んでいます。健康効果を期待する場合、皮まで食べるようにしましょう。
⑦さつまいも特有の成分《ヤラピン》
ヤラピンとはさつまいもを切った時や傷ついた時に出てくる白濁した乳液のような成分です。時間が経つと黒く変色して洗っても取れにくいため、購入したさつまいもに黒い染みが付いていることも少なくありません。ヤラピンは樹脂の仲間で、さつまいもの皮近くに多く含まれています。
ヤラピンを摂取することで、腸の蠕動運動を活発にすることが可能なため、快便に繋がります。
ダイエット中は食べる量を気にしたほうが良い?
さつまいもは糖質が高い野菜です。糖質を摂取しすぎるとエネルギーとして消費できなかった分が脂肪として蓄えられてしまうため、ダイエット中にはもちろん食べ過ぎないように注意しましょう。
ただ、脂質や砂糖たっぷりのスイーツの甘い誘惑に負けるようであれば、ミネラルやビタミン・食物繊維が豊富なさつまいもをおやつとして食べる事はおすすめです。さつまいもは腹持ちも良く、少量で満足できます。
ダイエット時にサツマイモを食べる時には「冷やす」というひと工夫をしましょう。蒸し芋も焼き芋も冷蔵庫でしっかり冷やしてから食べると糖質が血糖値を上げにくい形に変化しますよ。
さつまいもの品種とおすすめの食べ方
さつまいもにも、ジャガイモと同じように様々な品種があります。有名どころで言うと、「鳴門金時」や「紅あずま」、「シルクスイート」でしょうか。紫色のさつまいもやオレンジ色のさつまいも、白いサツマイモもありますが、今回はメジャーな品種をピックアップして紹介します。品種によって味や特性が違いますよ!
◆べにあずま
本州産の「べにあずま」はホクホクしていて優しい甘さのイメージですが、北海道産の「べにあずま」はねっとり甘く育ちます。黒糖のようなコクがほんのり感じられるさつまいもです。
皮はきれいな赤紫色で、中身は濃い黄色が特徴。焼き芋以外にスイーツ作りにピッタリです。
【おすすめの食べ方】焼き芋、いももち、スイートポテト、サラダや天ぷら・煮物などの料理、蒸かし芋
◆高系14号(こうけいじゅうよんごう)
四国あたりで「なると金時」というブランド名で出回っている品種です。
べにあずまよりも甘さが控えめで、ほくほくしています。皮が茶色っぽく、ごつごつした見た目に育つことが多いです。肉色もやや明るい黄色。
さっぱりとした甘さで料理に使いやすいサツマイモです。
【おすすめの食べ方】天ぷら、さつまいもご飯、豚汁、グリル、蒸かし芋
◆シルクスイート
名前の通り甘さが強く、繊維質が少ないしっとり系。焼き芋にすると蜜が出るほど。
皮が薄くて食べやすい品種です。
焼き芋にすると甘みの中にかすかな酸味が感じられ、いくらでも食べられる印象です。
焼き芋のほか、干しいもやポタージュなどに使うと素材が活きます。
【おすすめの食べ方】焼き芋、ポタージュ、素揚げ、干しいも、グリル
◆べにはるか
ねっとり系のさつまいもの代表品種。「甘太くん」「葵はるか」「紅天使」などのブランド芋は品種的にはべにはるかです。各地域でブランド化することにより、他所との差別化を図っています。
主に焼き芋や干し芋にされることが多く、長期間保管することで濃厚な甘さを味わえ、滴る蜜が特徴の品種です。
【おすすめの食べ方】焼き芋、干し芋
◆黄金千貫(こがねせんがん)
主に焼酎の原料用の加工品種です。見た目は普通のさつまいもとは違い、皮がクリーム色で肉色も白っぽく、焼いても白いままのさつまいもです。
でんぷん質が多くホクホクしており、甘さ控えめのホクホク系のさつまいもが好きな方にはお勧めの品種です。最近では黄金千貫を干し芋に加工している業者もあります。
【おすすめの食べ方】かき揚げ、天ぷら、ポテトサラダ
◆パープルスイートロード
皮も肉色も鮮やかな紫色をしたさつまいもですが少々個体差があり、肉色が若干白っぽい紫色のパープルスイートロードもあります。ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富です。ほくほくしていて紫芋特有のふんわりやさしい香りもあり、色味を活かした料理やスイーツにするのがおすすめです。
【おすすめの食べ方】ポタージュ、サラダ、素揚げ
◆ハロウィンスイート
皮の色味が茶色っぽく、肉色が薄いオレンジ色のさつまいもです。苗代が高いため芋として出回る際も価格が高めです。生産農家も少なく、見つけたら即買いのレア品種です。
ハロウィンという名前の通り、調理後は若干かぼちゃのような香りがあります。オレンジ色はニンジンやカボチャの色素でもあるカロテン。栄養価が高いです。
食感はしっとり、焼き方によっては柔らかくなって蜜がたっぷり出てきます。甘みは強いですがさっぱりとした甘さです。
【おすすめの食べ方】焼き芋、グリル
◆安納芋
安納芋はコロンとした小ぶりのさつまいもです。明るい茶色の皮で、肉色は濃い黄色。焼き芋にするとねっとり甘く、クリーミーで蜜がたっぷりの極上焼き芋になります。
収穫してからすぐに食べてもおいしくないため、2~3か月熟成させてから食べましょう。
【おすすめの食べ方】焼き芋
さつまいものおすすめレシピ
さつまいも料理と言えば、大学イモやふかし芋、レモン煮、てんぷらが定番でしょうか。
おいしいさつまいもを手に入れたなら、生産者のおすすめのレシピで食べてみませんか?さつまいも生産農家直伝のさつまいもレシピを紹介します。
①オーブンで甘~い焼き芋
良く洗ったさつまいもをオーブンシートを敷いた天板に裸のまま乗せ、Mサイズ以上のさつまいもであれば180度のオーブンで60分、140度に温度を落として60〜90分焼きます。Sサイズは180度の加熱を30分程にし、140℃でじっくり軟らかくなるまで焼きましょう。
Sサイズよりも小さいさつまいもなら魚焼きグリルのオーブン機能でも調理可能です。アルミホイルを敷いてから焼くと蜜が出ても掃除がしやすいです。
さつまいもを指で押してふにゃっとしていれば完成。絶妙な温度で長時間加熱することにより、さつまいもの酵素の力ででんぷん質が糖に代わるので甘くてねっとりした焼き芋に仕上がります。 一度に多めに焼き芋を作り、粗熱を取ってから冷蔵庫へ入れると3~4日美味しく食べられます。焼き芋をてんぷらやポタージュにリメイクしても絶品です。
②炊飯器で焼き芋
炊飯器にさつまいもを入れ、さつまいもの高さの半分まで水を入れたら炊飯ボタンを押すだけ!玄米モードがある場合は、玄米モードで炊飯したほうがねっとり甘く仕上がります。
炊きあがったらすぐに食べても良いですが、好みによっては蓋を開けずに保温モードで60分ほど放置するとより甘くねっとりとした焼き芋になります。
皮のこんがりした風味を楽しみたい場合は炊飯器で加熱後、オーブントースターでほんのり焼き色を付けましょう。
炊飯器にさつまいもが入らない場合、適度な大きさに切ってから炊飯器に入れても調理が可能です。
③ハニーマヨで食べるおさつスティック
さつまいもを7㎜~1㎝角の棒状に切り、170度の油でこんがり色づくまで揚げるだけ。塩を振るだけでも良いですが、はちみつとマヨネーズを1:1で混ぜ合わせた「ハニーマヨ」をディップして食べると甘じょっぱさで手が止まらなくなります!ハニーマヨに黒コショウをちょっぴり混ぜると味が引き締まります。
④簡単さつまいもご飯
さつまいも(150gほど)を1.5㎝角に切って水にさらします。3合のお米をとぎ、目盛りの通りに水をセットし、塩(小さじ1/2)と水を切ったさつまいもを上に乗せて通常通り炊飯するだけ!食べるときに黒ゴマを飾りましょう。保温機能のまま半日寝かせるとさつまいもがより甘くなります(半日以上放置はごはんが傷むこともあるので注意)。
まとめ
さつまいもの栄養価やおすすめの食べ方をご紹介しました。
北海道産のさつまいもは本州産よりも甘くてねっとり育つということがわかりましたね。購入した際は是非、本州産のものと食べ比べてみてください!