【にしんそば】を食べよう!京都が発祥、北海道では郷土料理。その歴史や自宅で作れるレシピ、栄養まで詳しく紹介

郷土料理
Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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京都が発祥であり、名物料理として親しまれている「にしんそば(鰊蕎麦)」。この蕎麦の種物(たねもの)に欠かせない「身欠きニシン」は、北海道から北前船によって運ばれていたことから、ニシン漁が盛んであった北海道でも郷土料理として古くから親しまれてきました。今回の記事では「にしんそば」の歴史のほか、自宅で美味しく作るためのレシピなどをご紹介します。

にしんそば(鰊蕎麦)】について詳しく知ろう

ニシン蕎麦,にしんそば

にしんそば(鰊蕎麦)とは、温かい蕎麦の上に身欠きニシンの甘露煮をのせた料理で、古くから庶民の味として京都と北海道で親しまれてきました。汁そばに天ぷらや様々な具材を乗せて味わう種物(たねもの)の一つで、ニシンの甘露煮のほかにネギなどの薬味を入れたシンプルなものです。

京都が発祥ですが、北海道でも郷土料理としての歴史あり。

「にしんそば」は京都が発祥の地と言われています。1882年に劇場のお食事処として創業した「松葉」2代目の松野与三吉が、当時の京都人にとって重要なタンパク源であった「身欠きニシン」を蕎麦と合わせられないか試行錯誤し、甘辛く煮付けたことで生まれた料理です。

料理としての発祥は京都であるものの、原料である「身欠きニシン」北海道から運ばれていました。江戸時代中期~昭和初期にかけて北海道ではニシン漁が盛んになり、生のままでは日持ちのしないニシンを長期保存できるように干物に加工していたのです。北海道で加工された身欠きニシンは北前船によって日本海を経由し、ニシンロードと呼ばれる周山街道や若狭街道を通り、京都など内陸部に運ばれるようになりました。
※「北前船」とは、北海道と大阪を日本海沿いの港を経由しながら回り、寄港地で商売を行っていた船のことです。

北海道でもニシン漁が盛んな地域で「にしんそば」は食べられてきましたが、そのルーツは道南エリアの江差町にある「横山家」とされています。ニシン漁全盛期に栄えた江差町を代表する商家で、その建物は現在、北海道指定有形民俗文化財となっています。

京都と北海道の【にしんそば】の違いは?

京都で生まれたものの、北海道では郷土料理とされるまで全道各地に広がりました。ニシンの甘露煮を乗せたかけそばという共通点はあるものの、異なる点もあります。例えば、そばつゆは、京都が薄口醤油を使って上品な味付けであるのに対し、北海道は濃口醤油を使って甘めの味付けに仕上げることが挙げられます。また、薬味のネギは、京都では関西で一般的な青ネギ(九条ネギ)であるのに対し、北海道では東日本で一般的な白ネギを使っています。

【にしんそば】を食べる時期は?

発祥である京都や大阪では、年越しそばとして食べるのが一般的です。そもそも年越しに蕎麦を食べる理由は、蕎麦が細く切れやすい食材であり、その年の「不運や災厄を切ることができる」と考えられていたことや、1本1本長いことから長寿や縁の象徴とされる縁起のいい食べ物だったからです。そして、各地域で多様な年越し蕎麦スタイルが浸透しており、ニシン蕎麦もその一つとして食べられています。ニシンは「二親」とも読むことができ、子宝に恵まれるという意味で縁起がいいとされています。

【にしんそば】には手間と時間がかかっている

ニシンの甘露煮は、現在、スーパーやネットショップで簡単に手に入るようになりました。しかし、元となる「身欠きニシン」ができるまでには手間と時間がかかります。水揚げしてから一度貯蔵し、その後に内蔵を抜き取るなどの下処理をしてから数匹を束にし、数週間ほど乾燥させてから熟成させます。ニシンは脂肪分が多く、じっくり乾燥させないと腐ってしまうため高い技術が必要でした。また、伝統的な作り方は全て手作業なので、相当の時間が必要です。そんな丹精込めて作られた身欠きニシンを使った「にしんそば」は、本来、手間ひまをかけたありがたい料理ともいえます。

北海道の定番【にしんそば(鰊蕎麦)】を作ってみよう!

地域によってはニシンを食べる機会が少ない方もいるかもしれませんが、そば好きの人やチャレンジ精神が旺盛な人は一度食べてみたいと思ったのではないでしょうか。 お店で食べることもできますが、家でも楽しめるように料理研究家の筆者が手軽に作れる「にしんそば」のレシピを紹介します。身欠きにしんは下処理が大変なのですが、鱗や頭が取ってあるソフトタイプを使うことで、調理のハードルがぐんと下がります。

《材料(2人分)》

  • 身欠きニシン(ソフトタイプ) 2枚(1尾分)
  • ぬるま湯 ニシンが浸る程度
  • (●)水 100cc
  • (●)酒 大さじ3
  • (●)砂糖、しょうゆ、味醂 各大さじ1
  • (●)生姜 1/2片
  • そば 2人前
  • そばつゆ お好みの量

《作り方》

  1. 身欠きニシンを小鍋に入れる。ニシンが浸る程度の水を入れた後に中火で加熱し、沸騰後弱火にして蓋をし20分ほど煮る。
  2. 生姜を千切りにする。1のお湯を捨て、(●)の材料を加えて落し蓋をし中火で加熱。沸騰したら弱火で20分ほど煮る。
  3. ニシンが軟らかく煮えたら好みの照りが出るまで煮て、水分を飛ばす。
  4. 茹でた蕎麦にあたたかい麺つゆをかけ、3をのせる。お好みでねぎや一味などの薬味を添えて完成!

美味しく作るためのちょっとしたコツ 

甘辛く煮たニシンと蕎麦のあっさりさがマッチする昔ながらのシンプルな料理。ただし、ニシンは小骨が多く、青魚特有のクセが少しあるため、好き嫌いが分かれます。
よく干してある「身欠きニシン」を使う際は、下処理を丁寧に行いましょう。具体的には血合い部分を取り除いたり、鱗やひれを切り落としたり、番茶や緑茶で下茹でするなどです。
上記のレシピで使用している「ソフトタイプの身欠きニシン」は、クセが少なめで下処理も簡単なため、料理初心者にはおすすめの食材です。

既製品を使って手軽に楽しもう

身欠きニシンの甘露煮はレトルトでも流通しています。すでに柔らかく煮てあり、美味しく味付けもされているため、かけそばに少し温めて乗せるだけで本格的な「にしんそば」を楽しむことができますよ。レトルトであれば常温でも長持ちするため非常食にもおすすめです。

にしんそば(鰊蕎麦)】の栄養とカロリー

ニシン蕎麦,にしんそば

「にしんそば」は1人前で538kcal、タンパク質は26.2ℊ、脂質は11.8ℊ、糖質は73.2ℊです。青魚であるニシンには、DHAやEPAといった体に有効な働きを持つ必須脂肪酸が多く、積極的に食べていきたい魚です。 ただし、塩分は約8ℊ。そばつゆまで全部飲み干してしまうと塩分が高いため、汁は飲まないことをおすすめします。

まとめ

京都・北海道の独自の文化や歴史から生まれた「にしんそば」。現在も年越しを中心に食べたり、お蕎麦屋さんで注文することができます。昔は自宅で作るには身欠きニシンの加工や調理に手間ひまのかかる料理でしたが、現在ではレトルトの甘露煮が流通し、気軽に食べることができるようになりました。かけそばの種物としては天ぷらや鴨南蛮を選択することが多いかもしれませんが、たまに味わってみてはいかがでしょうか。

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