【イワシ】を食べよう!栄養&効能ガイド。種類ごとの特徴からおすすめの食べ方、食べる際の注意点もご紹介

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Misato Watanabe

Misato Watanabe

調剤薬局で事務兼管理栄養士として従事していました。その後お菓子メーカーに勤め、現在は苫小牧市で1歳児子育て奮闘しながら、鮮魚店で日々新鮮な魚をお客様にお届けしています!

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刺身、塩焼き、煮付けに缶詰。様々な料理で用いられる「イワシ(鰯)」は安価で栄養豊富な食材として、日本人の食生活には欠かせない魚です。目刺しや丸干し、だし用の煮干しは季節を問わずスーパーの定番商品になっており、稚魚はしらす干しとして大人気。今回は管理栄養士の筆者がそんな「イワシ」に含まれる栄養素とその効能について詳しく解説。種類ごとの特徴や生と干した場合の比較、おすすめの調理法や食べる際の注意点についてもご紹介します。

【イワシ類】について詳しく知ろう

海で泳ぐイワシ,鰯の群れ,魚群

「イワシ」という和名は小魚の海水魚に付けれることが多く、広い意味ではたくさんの魚種が存在しますが、ここでは日本で食用とされる「ニシン目」に分類される小魚(マイワシカタクチイワシウルメイワシ)のことについて解説していきます。
これらは食用としてだけでなく、飼料や肥料にも活用されている重要な魚であり、特に「カタクチイワシ」は世界で最も漁獲量が多く、魚を養殖するための魚粉として水産資源を支えたりもしています。
日本においてもイワシ類は古くから食べられてきており、平安時代には身分の低い人が食べる物として認識されていたようですが、歌人の紫式部が大のイワシ好きだったという逸話もあるなど、当時から人々に馴染みのある存在であり、重要なタンパク源でした。

ここからは現在日本で流通している代表的な3種類について詳しく紹介していきます。

①「マイワシ(真鰯)」の特徴

マイワシ,真鰯

ニシン目ニシン科マイワシ属に分類される「マイワシ」は漁獲量の変動が特に大きな魚種の一つです。好不漁の周期によって市場価格は大きく上下し、資源量が少ない時期の国産もの(鮮魚)は、1尾800円前後にもなって高級魚の仲間入りするほどの存在にもなりました。近年は再び資源量が増加し、価格は安定しています。スーパーでイワシとして並んでいるものは、この「マイワシ」を指すことが多いです。体側に7個前後の黒い斑点が並んでいることから「ナナツボシ」と呼ばれることも。沖縄を除く日本全国が生息域になっており、育つと大きさは20cm前後になります。旬の時期は6月から初冬にかけてで、主な産地は関東の茨城県や千葉県、北海道です。

②「カタクチイワシ(片口鰯)」の特徴

カタクチイワシ,片口鰯

ニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属に分類される「カタクチイワシ」。日本全域の沿岸に生息しており、体長が10cm前後と、マイワシに比べて魚体が小さい魚です。上顎が前に出ており、体の上部は青く下部は白銀になっているのが特徴です。冬が旬の魚で、主な産地は長崎県、三重県、愛知県、千葉県など。カタクチイワシは稚魚と成魚で活用が異なります。稚魚のうちに漁獲された場合はしらすやちりめんとして利用され、成魚になってからはタタミイワシや煮干し、アンチョビ、オイルサーディンなどに加工されることが多いです。

③「ウルメイワシ(潤目鰯)」の特徴

ウルメイワシ,潤目鰯

ニシン目ニシン科ウルメイワシ属に分類される「ウルメイワシ」。日本では本州以南が生息域になっており、体長は大きなもので40cm近くにもなります。目が大きく頭が小さいのが特徴で、鮮度が落ちるのが早いことからスーパーに鮮魚として並ぶことは少なく、目刺しや丸干しなど加工用として利用されます。主な産地は島根県、宮崎県、長崎県など。旬の冬になると脂がのり、刺身として食べるのも絶品です。

④「キビナゴ(吉備奈子)」の特徴

キビナゴ,吉備奈子

ニシン目ニシン科キビナゴ属に分類される「キビナゴ」。関東や山陰地方以南の南日本に生息しており、主に島根県や九州で多く漁獲されています。体長は10cm前後で細長く、旬の時期は冬と産卵期である5〜8月の2回あります。「キビ」は鹿児島で「帯」のことをいい、体に銀色の帯があることから「帯の魚」→「きびの魚」と転訛したことが名前の由来になっています。鹿児島県の郷土食材として有名で、手開きして刺身で食べたり、丸ごと揚げて唐揚げや天ぷら、煮物などに調理されます。

【イワシ】の栄養成分とその効能について

鰯の開き,イワシ

イワシは100gあたり217kcal、タンパク質19.8g、脂質13.9g、炭水化物は0.7g、食物繊維は0gです。「イワシ百匹、頭の薬」と言われるほど良質な脂質があり、栄養成分や機能成分が豊富なイワシ。ここから詳しく解説します。

◆DHAとEPA

イワシの脂には、DHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(イコサペンタエン酸)が豊富に含まれています。DHA・EPAは魚油中に多く含まれる不飽和脂肪酸です。コレステロール値を下げたり、血栓や動脈硬化を予防する効果が期待できます。特に脂がのった旬のものは栄養価も美味しさも増すためおすすめです。

◆ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の形成に役立ちます。ビタミンDは日光を浴びることで作ることができる珍しいビタミン。食品ではイワシをはじめとする魚類、キノコ類に多く含まれます。ビタミンDは脂溶性で油で調理すると吸収率がアップ。効率よく摂るために油を使った調理がおすすめです。ビタミンDは1日の目安量として8.5μgの摂取が薦められており、イワシ100g中に10μgに含まれています。

◆ビタミンB2、ビタミンB12

イワシはビタミンB群が豊富で、特にビタミンB2ビタミンB12が顕著です。
ビタミンB2脂肪の代謝を促し、効率よくエネルギーに変える働きがあり、また皮膚や粘膜の健康維持にも役立っています。 ビタミンB12神経系が正常に働くようコントロールしたり、赤血球を合成する栄養素です。不足すると悪性の貧血にかかったり、肩こりや腰痛、しびれなどの神経障害を引き起こすことも。ただし、ビタミンB12は様々な食品に含まれており、また腸内細菌によっても作り出される栄養素であるため、バランスの良い食事をしていれば不足することはあまりないと言えるでしょう。

◆セレン

イワシ100gあたりのセレンは54μgで、特に赤身部分に多く含まれています。セレンは強い抗酸化力をもつミネラルで、免疫力の向上や老化をまねく過酸化脂質の分解に働きます。セレンはビタミンEと合わせてとると、相乗効果でより強い効能が得られます。

【イワシ】は干すと栄養価が増える?

イワシの丸干し

イワシは丸干しにすると骨ごと食べれるようになるため、カルシウム量がアップします。また干すことで、カルシウムの吸収を高めるビタミンDの含有量もアップするため、カルシウムを積極的に補給したい方にぜひおすすめです。ただし、丸干しは生と比べて塩分が高いため、食べ過ぎには注意が必要です。

【イワシ】の栄養価を効果的に摂取するおすすめの食べ方

「イワシ百珍」と呼ばれるほど多様な料理に用いられているイワシ。ここではその栄養価を効果的に摂取するおすすめの食べ方をご紹介します。

《骨ごと食べる》

鰯の丸干し焼き

イワシを圧力鍋で調理したものや丸干しなどは、骨まで食べられるためカルシウムや鉄分を効率よく摂取したい場合におすすめです。鮮魚で作る刺身や焼きものの場合は骨を捨ててしまいますが、この場合であれば骨ごと食べることができ、イワシの栄養を余す事なく摂取することができます。高齢者や小さい子どもは、食べる際に骨が喉に詰まらないよう注意しましょう。また、丸干しは塩分が生魚に比べて高いため、高血圧や塩分を控えてる方は食べる量に注意してみてくださいね。

《梅煮》

いわしの梅煮,煮付け

梅干しを調理に使うことで、イワシの生臭さが緩和し、さっぱりと食べやすくなります。また、梅干しにはクエン酸ピクリン酸が含まれています。クエン酸は疲労回復、ピクリン酸には強い殺菌・抗菌作用など、たくさんの効果があり大変優れています。

《缶詰》

イワシの缶詰

イワシの缶詰生のイワシに比べてDHAが1.3倍、EPAは1.5倍、カルシウムは4倍です。高温高圧で調理された缶詰は、骨まで柔らかく丸ごと食べることができるため、DHA、EPA、カルシウムが多くなる結果に。また、鉄分も豊富に含まれており、貧血予防にも最適です。缶詰をそのまま食べるのは勿論、炊き込みご飯に一緒に入れて炊いたり、煮込みやサラダに使うなど、調理法が幅広いのも魅力的ですね。

美味しい【イワシ】の選び方

氷の上に並べられた新鮮なイワシ,まいわし

新鮮なイワシを選ぶコツは、次に挙げる4点をチェックすることです。黒目が綺麗でいきいきとしている、顔が充血していない、身に艶があって痩せていない、身がかたく締まっていて鱗が剥がれていない。これらの条件が揃ったものがおすすめです。イワシは指で解体できるほど身がやわらかく、鮮度の落ちるスピードが早い傷みやすい魚です。購入魚はできるだけ早く食べてしまいましょう。すぐに食べられない場合は頭と内臓を取った後、酒や酢で調味してから冷蔵すると4〜5日ほど保存が可能です。

【イワシ】に関するよくある質問

イワシが体に良い栄養素を多く含んでいることがわかったところで、1回にどのくらい食べて良いのか、アレルギーはないのかなど心配なこともあるかと思います。イワシに関するよくある疑問について、管理栄養士の資格を持つ筆者がお答えします。

①イワシはどのくらいの頻度で食べると良いですか?

イワシにはこれといって体に有害な成分が含まれているわけではないため、毎日食べても良い魚です。EPAやDHAは人体で生成することができない必須脂肪酸であるため、積極的に献立に取り入れてみてください。

②イワシのアレルギーについて教えてください。

イワシはサバやアジと同じ青魚の仲間です。サバには重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があるアレルゲンがありますが、サバアレルギーを持っているからイワシもアレルギー、という可能性は100%ではありません。イワシを食べて「なんか変だな」と感じた際はアレルギー検査を行なってみると安心ですね。
アレルギーと似た症状で、ヒスタミンによる食中毒もあります。ヒスタミンは鮮度の悪いサバやイワシ、ブリなどに蓄積される物質です。ヒスタミンに当たらないようにするためには、みるからに鮮度が悪い魚は食べないことが重要です。

③妊婦さんや子どもにイワシはおすすめですか?

妊婦やお子様にとってもイワシはおすすめの食材です。イワシは小さい魚体でたくさんの栄養素を摂取できる魚であるため、少食なお年寄りにも積極的に召し上がっていただきたいお魚です。ただし、お子様やお年寄りには小骨が危険な場合もあるため、圧力鍋で骨まで柔らかくして提供するか、缶詰を利用すると安全です。

④イワシの臭みを抑える方法はありますか?

イワシを調理すると青魚特有の匂いが気になるという人がいます。まずは新鮮なイワシを選ぶことがポイントですが、次に魚の下処理を丁寧に行いましょう。内臓を取り、血合いもしっかり洗い流すことで臭みを抑えられます。煮付けにする場合、梅干や生姜、ネギを使って臭み消しをしながら煮ることをおすすめします。また、調理法も工夫すると良いです。揚げたイワシを酢と醤油で作った調味液に浸す「南蛮漬け」は匂いが気になりにくい料理ですよ。

まとめ

イワシの種類から栄養素とその働き、栄養を効率よく摂取できる食べ方などについてご紹介しました。調理法によっては骨まで丸ごと食べれるイワシは高タンパク低脂質、カルシウム補給にもぴったりの食材で、組み合わせる食材によっては相乗効果で栄養の吸収を高めてくれます。和洋中問わず美味しく味わえる魚ですから、是非毎日の食卓に取り入れてみてくださいね。

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