【ブリ】を食べよう!栄養&効能ガイド。おすすめの食べ方や選び方、食べる際の注意点もご紹介

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Ayaka Izawa

Ayaka Izawa

フリーランスで管理栄養士の仕事をしながら、北海道栗山町の井澤農園で販売・営業を行い、地域の産品作りや食育などの地域おこし事業にも関わっています。 自称「農家フェチ」!

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寒い冬が旬とされる「ブリ」は、刺身・しゃぶしゃぶ・焼き魚・煮魚(ぶり大根)など様々な調理法で楽しまれる人気の魚です。天然ものは高価ですが、養殖が盛んになったことで1年を通して食べることができ、スーパーの惣菜コーナーでも気軽に購入できるようになりました。今回はそんなブリの栄養素とその効能について、管理栄養士の筆者が詳しく解説。EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸やビタミン類のこと、栄養を効果的に摂取する調理法や食べる際の注意点についてもご紹介します。

【ブリ(鰤)】について詳しく知ろう

氷の上のブリ2尾

スーパーのお刺身コーナーや回転寿司でも気軽に手に取ることができる「ブリ」。脂が乗っていて食べ応えのある美味しいお魚ですよね。魚体が大きいため、切り身になっている場合が多いので知らない人も多いかもしれませんが、アジやサバ同様に「光り物」の仲間です。ここではブリの概要について詳しく解説します。

【ブリ】とは

ブリはスズキ目アジ科ブリ属の魚です。大きなものでは1.5mもの魚体になるそうですが、養殖物だと大抵80cm〜1m程度で出荷されます。
見た目の特徴としては、カツオのような黒光をする魚体に、尾のまで黄色い線が通っていることが特徴です。他にも尾ビレや腹ビレ、しりビレも黄色いですよ。英語では「yellowtail(イエローテイル)」=「黄色い尻尾」と呼ばれている所以です。

一般的にブリ・カンパチ・ヒラマサのことをブリ属3種といい、区別されずに売られていることもあります。ブリは比較的安価なお魚で、1年中購入できる魚です。理由としては、養殖が盛んであることが挙げられます。ただし、天然ものは高級な場合が多く、養殖ものでも産地ブランドのあるものは値段が高い傾向にあります。 ブリの名前の由来は諸説ありますが、「脂ノリが良い」→「あぶら」→「ぶり」となまったことが由来と言われています。

縁起のいい出世魚

ブリは「出世魚」としても有名ですね。出世魚は成長段階で様々な呼び名があり、しかも各地域で異なることも。関東では魚体が幼い順にワカシ・ワカナ・ワカナゴ→イナダ→ワラサ→ブリ関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリなどと呼ばれます。出世魚は縁起物としてお祝いの席やおせち料理にも使われています。

旬の時期と地域性

「寒ブリ」という言葉がある通り、旬は寒い冬です。ブリの産卵期は2月から初夏にかけてであるため、産卵前が一番脂が乗っていて美味しいとされています。ブリの若魚であるハマチやイナダは初夏以降に漁獲されます。

ブリの養殖は四国や九州が盛んに行われています。一方で天然ものの水揚げは「寒ブリ」のブランドづくりなどが盛んな富山県を中心とした北陸地方が本場です。しかしながら、最近では北海道でも多く水揚げされるようになりました。北海道でブリが漁れるようになった理由として、海水温の上昇によりブリの好むプランクトンが北海道の沿岸で多く生息するようになったことがあげられます。2020年以降は漁獲量が国内一位になることもあり、2021年には14,077トンも漁獲されました。2007年は2,244トンでしたので7倍近く増えていることになります。北海道で漁獲されるブリは天然物で味も良いことから、高値で取引されています

【ブリ】の栄養成分とその効能

新鮮なブリの切り身

ブリ100gあたり257kcal、タンパク質21.4g、脂質17.6g、炭水化物0.3ℊの栄養価を含みます。ブリは魚体の大きなお魚なので、部位ごとに切り分けて食べることがほとんど。マグロのトロ部分に当たる腹部など、脂がよく乗っている部分は脂質が多く、先に述べた数値よりもカロリーが高くなります。ブリに含まれる栄養成分とその効果効能についてお伝えします。

◆DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(イコサペンタエン酸)

ブリ100gあたりDHA・EPAを合計2640mg含みます。これは、DHAやEPAを多く含んでいることで有名なサンマの2450mg、サバの1660mgよりも多い数値です。DHAもEPAも「オメガ3脂肪酸」という、動脈硬化などの生活習慣病を予防すると期待されている「健康に良い油」で、共に魚の油脂に多く含まれている不飽和脂肪酸です。DHAは脳や神経の発達に有用な働きを持ち、EPAは血管や血液の健康のために働きます。DHAやEPAは脂質に含まれるため、脂乗りの良い部位や個体に多く含まれています。また、調理によって脂が落とされることで減ってしまうため、刺身で食べることが一番効率よく摂取することができます。

◆タンパク質

ブリ100gあたりにタンパク質は21.4g含まれています。タンパク質は体の様々な組織や器官を形作る成分です。脂質、炭水化物と並んで「三大栄養素」の一つで、不足すると筋肉量や免疫力の低下が起こります。
また、食品中にはタンパク質の構成に関与していない多数のアミノ酸も存在しており、これを「遊離アミノ酸」と呼びます。ブリに含まれている「タウリン」という遊離アミノ酸は大変興味深い働きをするため注目されています。

◆タウリン

タウリンは先ほど述べた通り遊離アミノ酸の一つで、魚類などの血合い(茶褐色の部位)やイカ、タコ、貝類などに多く含まれています。血液中のコレステロール値の低下効果や肝機能の改善効果などの報告がある栄養素です。
ブリに含まれるタウリンは部位や漁獲時期によって幅がありますが、100g中に180〜670mg含まれています。タウリンは動物の肉類には数mgしか含まれていないため、タウリンを摂取したい場合は魚介類を食べるようにしましょう。

◆ビタミンE

ブリ100g中に2mgのビタミンEが含まれています。成人のビタミンEを摂取する1日の目安量は5〜7mgであるため、ブリの刺身を100g食べるだけで1日の1/3量をカバーすることができます。ビタミンEは抗酸化作用が非常に強いビタミンです。体内や血管内で様々な物質が酸化することを防ぎ、疾病の予防に役立ちます。

◆セレン

ブリ100g中に57μgのセレンが含まれています。あまり耳にする機会が多くない栄養素ですが、体内で酸化反応を抑制する「グルタチオンパーオキシターゼ」の構成要素として知られています。人体にとっては微量摂取するだけで十分なため、不足することはまずありません。

【ブリ】の栄養を効果的に摂取する調理法

ここまででブリに含まれる栄養素について解説してきました。それぞれの栄養素で、吸収のために良い食べ物の組み合わせがあったり、栄養素の性質によって好ましい調理法が変わってきます。次からは、ブリに含まれている栄養素を効率的に摂取する調理法を解説します。

《刺身》

ブリの刺身,ぶり刺し

ブリは寄生虫が身に住まず、刺身で食べられる魚です。刺身で食べることで、加熱に弱いビタミン類や脂溶性の栄養素、DHA・EPAという脂肪酸の流出もなく食べることができます。
ただし、脂乗りが良いブリは刺身で食べるとそれほど量が食べられないのが現実ですね。また、生魚は日持ちがしにくいです。醤油とみりんに漬けた「ヅケ」にすると2〜3日は美味しく食べられ、お勧めです。

《焼き魚》

ブリの塩焼き

ブリは塩焼きにしても美味しいお魚です。塩焼きにすると若干青魚特有の匂いがするため苦手な人もいるかもしれませんが、骨が取りやすくボリュームもあります。適度に脂が落ちるため刺身よりもたくさん食べられますよ。塩を振って焼くだけでも良いですが、塩麹や醤油麹に1日漬けてから焼いても美味です。照り焼きも捨て難いですね!

《煮付け(ブリ大根)》

ブリ大根,ぶりの煮付け

ブリだけを甘じょっぱい醤油味で煮付ける他、ブリ料理としては「ぶり大根」が有名ですね。大根と一緒に煮付けにすると、ブリの出汁が大根に染みます。じゃがいもやにんじんなどを下茹でしてからブリと煮ても美味しいです。煮付けは冷める時に味が染みるため、火が通った後は一度冷まし、再度温めてから食べることがポイントです。生姜を少し入れることでブリの青臭さが消えるので、生姜は忘れずに!

《鍋物(ブリしゃぶ)》

ブリしゃぶ

脂たっぷりの養殖ものは昆布だしの中でしゃぶしゃぶにするのがおすすめです。刺身よりもたくさん食べることができ、野菜も一緒に摂取できるので栄養面でのメリットも。美味しいのはもちろん、ヘルシーで健康的な食べ方の一つです。

《蒸し魚》

ブリは蒸し魚するとふんわり柔らかく、食べやすくなります。北海道の郷土料理ちゃんちゃん焼きのように野菜と一緒に蒸し、味噌だれをかけて食べても美味しいです!ポン酢やネギとごま油で作る甘酸っぱいタレをかけて食べるとよりさっぱり食べられます。

養殖ものと天然もので栄養価に違いはある?同じブリ属のカンパチ・ヒラマサとの違いは?

ブリは養殖物と天然物で栄養価に違いがあります。しかも、ブリは餌によって味が違います。養殖されたブリの中でも、どんな餌で育ったかが味を決めるポイントになります。また、養殖ぶりは天然物よりも運動量が少ないため、柔らかくて脂乗りが良いことが特徴です。

養殖ものと天然もの栄養的な違い

養殖場

先に述べたように、養殖物の方が脂質が多いためカロリーが高くなります。逆に、天然物はタンパク質が多め。養殖ブリのマグロでいう大トロに当たる「腹部」なんて、脂が乗りすぎて生で食べるにはちょっと遠慮してしまうくらいに脂質たっぷりです。養殖物のブリの脂は生育環境や餌の影響で、独特の臭みを感じることも少なくありません。ブリの脂を楽しみたい場合は天然物か、餌にこだわっている養殖ブリを選びましょう。

カンパチ・ヒラマサとの栄養的な違い

カンパチとヒラマサ

カンパチ・ヒラマサとの栄養的な違いも「脂質」にあります。こちらも脂質が少ない分、タンパク質が多くなります。脂質が少ないためDHA・EPAの含有量も少なくなります。 青魚独特の匂いも少なく、味もプリっとした弾力があり食べやすいですよ。

【ブリ】を食べる際の注意点について

ブリは脂質が多い魚です。脂質が多いということは、使わないエネルギーの分は体に蓄積されて肥満につながります。また脂質が多いため、食べすぎると胸焼けや吐き気を起こすことも。自分の適量を考えて食べるようにしましょう。
冒頭に述べたように、ブリはアジやサバと同じく青魚の仲間です。サバよりは確率は大分低いのですが、まれにアレルギー反応を引き起こすこともあるため、離乳食に使う際は離乳食後期から少量ずつ与えるようにしましょう。
鮮度が落ちると「ヒスタミン」という成分が増え、ヒスタミンもアレルギーに似た症状(蕁麻疹や呼吸困難など)を引き起こすことがあります。明らかに鮮度が落ちたブリや、匂いがきついものは食べない選択が無難です。

新鮮な【ブリ】の選び方

美味しいブリ料理を楽しみたいのであれば新鮮なブリを選ぶことから始めましょう!ブリを「丸ごと」1本購入することは少な今もしれませんが、1本買いする場合は目が透明感があってハリがあるものを選びましょう。また、魚体が丸く大きいものの方が脂が乗っています。「脂は控えめな方がいいな…」と言う場合は、少しスリムなものを選ぶと良いですね。

「切り身」の場合は身の色が透明感があってプリンとハリがあるものが新鮮です。血合も鮮やかな赤色をしているものを選びましょう。全体的にくすんだ色の身は鮮度が落ちているため、食べるとしても焼き物や煮付けなどのしっかり火を通す料理にしましょう。

まとめ

冬が旬ではあるものの一年を通して楽しめる「ブリ」の生態や栄養素とその働き、おすすめの食べ方や注意点について解説しました。美味しいブリにありつく一番のポイントは鮮度の良さなので目利きをしっかり行いましょう!養殖物と天然物でも栄養価や味わいが違うこともわかりましたね。ぜひ、自分好みのブリを選ぶ目安にしてみてください。

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