日本の家庭における野菜の購入数量ランキングで2位を誇る玉ねぎ。和洋中問わず、料理の主役から脇役までこなす玉ねぎは常備しておきたい食材であり、北海道を代表する野菜でもあります。今回は玉ねぎ農家の嫁、兼、管理栄養士の筆者が玉ねぎの栄養価とその効能、種類による味の違い、賢い調理方法や簡単レシピまで詳しく紹介します。
玉ねぎのカロリー、代表的な栄養素とその効能について
生の玉ねぎは可食部100gあたり37kcal。
スーパーでよく見るサイズの玉ねぎはLサイズで、皮を剥くと約200gが可食部なので1玉約75kcalです。もう一回り大きなL大サイズは1玉約250gで約93kcalです。
玉ねぎは野菜の割にカロリーが高いと感じた方もいるのではないでしょうか。他の野菜と比べてみると100gあたりレタスは12kcal、トマトは19kcal、なすは22kcalと確かに玉ねぎの方が高カロリーです。これは、玉ねぎが甘く糖を多く蓄えているからだといえます。
「甘い=糖質が高い=体に良くない」と思われるかもしれませんが、玉ねぎの甘さにはオリゴ糖も含まれており、腸内環境を整える助けになります。また、料理に入れると自然な甘さが付き砂糖を使用する量を減らすこともできます。
玉ねぎは糖の他にもさまざまな栄養素を含む野菜です。玉ねぎに特に多く含まれている栄養素をご紹介します。
栄養素①:強い抗菌力を持つ《アリシン(硫化アリル)》
アリシンは玉ねぎを切った時に目に染みる成分です。硫化アリルの一種で、ただ目に刺激をもたらすだけではなく、抗菌作用や疲労回復の速度を早める働き、血栓の予防やコレステロールを代謝する働きもあります。アリシンは気化して空気中に漂う性質があるので、玉ねぎ農家は「玉ねぎの選別作業中は風邪をひかない」というほど(真偽はいかに)。
しかし硫化アリルであるアリシンは熱に弱い性質を持つので、アリシンの健康効果を期待する場合はサラダやマリネなど加熱をしない調理法で食べることや、加熱時間が短時間で済む炒め物にすることをおすすめします。
栄養素②:血管を丈夫にする《ケルセチン》
玉ねぎはケルセチンという成分を最も多く含む野菜です。
ケルセチンは野菜に含まれるポリフェノールの一種です。強い抗酸化力を持ち、体の中の酸化した物質を還元する働きを持ちます。
また、血管を丈夫にしなやかにするために有用な栄養素で、高血圧症や動脈硬化の予防にも役立ちます。
ケルセチンは水に溶けやすい性質を持つので、ケルセチンを無駄なく摂取したい場合、オニオンスライスを水にさらすことはNGです。
本州産の温かい時期に収穫できる辛みが少ない玉ねぎよりも、北海道産の長期保存可能な玉ねぎの方がケルセチンを多く含みます。
栄養素③:《フラクトオリゴ糖》
フラクトオリゴ糖は糖として吸収されない甘味成分です。砂糖と同じような甘みを感じますが、血糖値を上げないオリゴ糖です。
消化吸収されない上、腸内でビフィズス菌などのエサになることで、おなかの調子を整える事にもつながります。
玉ねぎの旬
玉ねぎは1年中スーパーで購入することができる野菜のうちの1つです。玉ねぎの旬は大きく分けて5~6月と8~11月の2つあります。本州以南の暖かい地域で栽培される5~6月に収穫可能な玉ねぎを特に「新玉ねぎ」と言い、辛味が少なく玉ねぎの層が肉厚なのが特徴です。
北海道の玉ねぎの収穫時期は、7月~9月まで。この時期に一気に収穫された玉ねぎを春先まで貯蔵しながら出荷することになります。
ほとんどの農産物が「収穫期=旬」と言えるのですが、玉ねぎはちょっと旬の時期が後ろにずれます。理由としては、北海道産の玉ねぎにも早出し用の品種や、貯蔵してから11月ごろに出荷が始まる品種など様々な品種があるからです。遅出し用の品種の玉ねぎは9月に食べてもあまりおいしくなく、寒くなってくると味が落ち着いてきます。
玉ねぎの種類について
一般的に玉ねぎと言えば、皮が茶色い「黄玉ねぎ」か彩に使う「紫玉ねぎ」ですが、皮まで真っ白な「白玉ねぎ」や葉まで食べられる「葉玉ねぎ」もあるのです。ただ、白玉ねぎも葉玉ねぎも大変希少なため、見つけたら即買いをおすすめします。白玉ねぎと葉玉ねぎが一体どんなものなのかご紹介します。
◆白玉ねぎ
白玉ねぎはその名の通り、皮も、中の鱗片も白い玉ねぎです。水分量が多くジューシーで、辛み成分が少ないため水さらしせずに生で食べられるサラダ用の玉ねぎです。
北海道産の白玉ねぎのほとんどは「雪景色(ゆきげしき)」という品種です。機械でどんどん収穫できる黄色い玉ねぎとは違い、デリケートで柔らかいため収穫は手作業で行わなければいけないため生産量が少なく、保存が効かないため販売される期間も期間限定です。7月上旬から8月中旬ごろまでしか出回らず、スーパーでもあまり取り扱われないため、こだわりのある八百屋やネットショッピングで探してみてください。
栄養価や有用成分は黄玉ねぎよりも少なめです。
◆葉玉ねぎ
よく見る黄色い玉ねぎは皮と葉がすっかり枯れた頃に収穫しています。一方、葉玉ねぎは黄色い玉ねぎがまだ若く、葉が青々しているときに収穫する玉ねぎです。
葉が青いため、葉まで食べられることが利点です。葉は長ネギの青い部分のような味が楽しめ、長ネギよりも繊維が柔らかいため食べやすいです。鱗片自体も柔らかくジューシーなため、丸ごと使ったホイル焼きや卵とじ、酢味噌和えなども楽しめます。
ただし、通常の栽培方法で育てる玉ねぎは特に葉に農薬をかけており、皮を剥いて食べることで外側の農薬も落とすことができていますが、葉玉ねぎは葉まで食べるため、農薬が気になる場合は栽培方法が安心できる農家の葉玉ねぎを選びましょう。
葉玉ねぎは6月上旬~7月上旬頃までしか収穫できません。
栄養成分は黄玉ねぎよりもβカロテンや葉酸、鉄分などが多く含まれています。
玉ねぎの品種について
玉ねぎはどんな料理にもピッタリの万能選手ですが、スライスしてサラダで食べたいときに玉ねぎが辛すぎて困ったことはありませんか。水でさらしてもなかなか辛味が抜けなかった、という経験をお持ちの方も少なくないはず。
実は、玉ねぎの辛さは品種によって辛味が強いもの、弱いものがあるのです。つまり、オニオンスライスとして食べたいときには辛味の少ない品種を選べば間違いないということ。
見た目はほぼ同じ玉ねぎなのですが、たくさんの種類があるのです。
ここでは北海道で栽培されている玉ねぎの品種の中から代表的な4品種を紹介します。
◆オホーツク222
「おほーつくにーにーに」と読む、北海道の玉ねぎの品種の中でも定番の品種です。辛味が少ないのが特徴で、玉ねぎのさわやかな辛味が好きな方は水さらししないでも食べられるほど。
みずみずしくて辛味が少ない品種なので、サラダやマリネにピッタリ。もちろんカレーや肉じゃがにも使えますが、煮崩れしやすいので長時間煮込むと溶けてしまいます。
◆北もみじ2000
「きたもみじにせん」は遅出し(10月下旬から出荷)用の玉ねぎです。
収穫してから2か月ほど貯蔵してから出荷されるため、貯蔵中に余計な水分が抜けるので味が凝縮されています。味が濃く、辛味も強い玉ねぎです。 サラダには向きませんが、スパイスカレーやオニオングラタンスープなどの玉ねぎの甘さを活かす料理におすすめです。
◆札幌黄
「さっぽろき」と読みます。北海道に古くからある伝統野菜の玉ねぎの品種です。味が濃く、辛味が非常に強い玉ねぎなので、加熱調理向きです。
食味は大変優れているのですが、植物の病気になりやすく大きくなりにくいので、生産量が少ない高級な玉ねぎです。 グリルやてんぷらなどの素材の味を楽しむ料理がおすすめです。
レッドアイⅡ
紫玉ねぎの品種です。「Ⅱ(ツー)」という通り、「レッドアイ」という品種の改良版です。他の紫玉ねぎよりも貯蔵性が良く、味は紫玉ねぎ特有の苦みが若干ありますが甘みが強くておいしい玉ねぎです。
発色もよく、濃い紫色がとってもきれい。 サラダの色どりにはもちろん、マリネやピクルスなどの酢を使った料理に使うと色素が酸に反応して鮮やかな赤になります。
玉ねぎ調理のポイント
玉ねぎは煮る、蒸す、炒める、焼く、揚げる、生、どんな調理法にも合う野菜です。しかし、調理法によってはせっかくの玉ねぎの栄養素を台無しにする場合も。 賢い調理法を学び、玉ねぎの栄養素を無駄なくいただきましょう。
①水で煮るときは煮汁まで食べられる料理に!
玉ねぎに含まれる栄養素の中には水に溶けやすい性質を持つものが多くあります。水に溶け出てしまうと、玉ねぎの本体を食べても水に出てしまった栄養価は摂取できないことになります。煮物や汁物に使う際は汁まで飲めるような料理にしましょう。
②サラダやマリネは水にさらさない
玉ねぎの水溶性の栄養素はオニオンサラダを作る際の「水さらし」の工程でも流れ出てしまいます。水さらしは玉ねぎの辛み成分「アリシン」を洗い流すために行う作業ですが、余計な栄養素まで流れ出てしまうため、アリシンを気化させる方法をとるほうが賢いです。
アリシンの気化のさせ方は、スライスした玉ねぎを重なる部分が少なくなるようにさらに広げ、15分~1時間ラップをせずに放置するだけ。冷蔵庫の中で冷やしながら放置しても良いです。
マリネにする際も、塩で揉んで水分を出す工程で、水溶性の栄養素は流れ出てしまいます。その搾り汁をスープやみそ汁に活用したり、マリネのように漬け込む調理法ではなく、スライスした玉ねぎにドレッシングをかけて食べる方が栄養価的には好ましいです。 かといって、マリネやサラダで食べられる玉ねぎの量は知れています。汁物や煮物、揚げ物などでしっかり玉ねぎを食べていれば、マリネやサラダで失われる玉ねぎの栄養価は気にしなくても良いでしょう。
③玉ねぎの皮にも栄養成分がギッシリ!
玉ねぎの皮の茶色い色素はポリフェノール(ケルセチン)によるものです。ポリフェノールには強い抗酸化作用があり、体のあらゆる部分の老化を防ぐ働きを持ちます。実は、可食部よりも皮の方がポリフェノールを多く含むため、皮を捨ててしまうことは栄養価的にはもったいないことなのです。
玉ねぎの皮は良く洗い、スープの出汁として煮出したり、煮出したものをお茶代わりに飲むことで、皮の抗酸化物質も摂取することができます。 農薬使用量が気になる場合は農薬不使用の玉ねぎや、有機栽培の玉ねぎを選びましょう。
玉ねぎの美味しい食べ方
カレーや肉じゃが、みそ汁にサラダと毎日の食卓に欠かせない玉ねぎ。どんな料理にも使える万能選手ですが、玉ねぎ農家イチオシの玉ねぎレシピをご紹介します。
①玉ねぎのお吸い物
玉ねぎの皮を剥き、縦半分に切った後、繊維に沿って包丁で薄くスライス。お椀にスライスした玉ねぎを5㎜と、とろろ昆布とかつお節を一つまみ入れ、熱湯を150㏄注ぐ。
塩2~3つまみで味を調え完成。
玉ねぎの香りと甘さをじんわりと味わえる即席のお吸い物です。
②玉ねぎのレンチンポン酢がけ
玉ねぎの皮を剥き、横半分に切る。半分に切った玉ねぎを切り口を上にして重ならないように耐熱皿に乗せ、ぴったりとラップをかけて500w~600wで5分ほど加熱。鰹節とポン酢をお好みでかけて召し上がれ!
ゴマだれやお好きなドレッシングでもぜひお試しを。食べ飽きないですよ。
まとめ
見た目が同じ玉ねぎでも、様々な品種があり、品種によって味に特徴があることがわかりましたね。正しい保存方法をすれば玉ねぎは長持ちします!体にもお財布にも優しい玉ねぎ。毎日使うからこそ、箱で買ってモリモリ食べてくださいね。